バンドがいなくても、ギター1本でジャズらしく——メロディもコードも自分で鳴らして、あの分厚い響きを出したい。ジョー・パスの『ヴァーチュオーゾ』のような演奏に憧れて、いざ真似してみると指が届かない・全然それっぽく聞こえない。そこで止まってしまう人は、とても多いです。ただ、始め方を間違えているだけのことがほとんどで、入り口さえ変えれば、1本でもちゃんとジャズになってきます。
コードソロ・ソロギターの土台は「ドロップ2コード」。ただし、いきなり全部は覚えません。
1本でジャズを弾く近道は、メロディを一番上・ルートを一番下に置いた2音から始めること。これだけでも結構ソロギターになってきます。そして——いきなり『ヴァーチュオーゾ』のような名盤を目指すのも、ドロップ2を全部覚えるのも、最初は捨ててOKです。1〜4弦の「よく使う定番形」を何パターンか覚え、慣れたら内声(コードトーン・テンション)を足していく。この順番なら、1本でも無理なくジャズらしくなっていきます。
「1本でジャズ」でつまずくポイントは、だいたいこの4つ
- 1|いきなり『ヴァーチュオーゾ』みたいに弾こうとして折れる
- 2|ドロップ2を全部覚えようとして、途中で嫌になる
- 3|コードにすると指が届かず、押さえられない
- 4|一人で弾くとリズムがヨレて、間延びする
たいてい複数当てはまります。そして「自分の一人弾きが本当にジャズの雰囲気になっているか」は自分では気づきにくい——これがこの記事の最後の話です。
あるある1|いきなり『ヴァーチュオーゾ』みたいに弾こうとして折れる
こんな状態:ソロギターに憧れて、ジョー・パスの『ヴァーチュオーゾ』のような有名録音をお手本にする。ところが音は分厚くて何を弾いているか分からず、コピーしようにも手が追いつかない。「自分にはまだ早い」と、そのまま棚上げになる。
なぜ起きる:あれは到達点であって、入り口ではないからです。「ソロギターという括りで練習する」のではなく、曲のテーマ(メロディ)を練習するときに同時にやるものです。名盤の完成形をゴールに置くと、最初の一歩がとてつもなく高くなってしまう。
回避策
名盤の再現はいったん忘れて、曲のメロディを一番上の音に、ルート(ベース音)を一番下に置いて、同時に弾く。まずはこの上下2音だけ。これだけでも結構ソロギターになってきますし、曲のハーモニーを理解しながらメロディを覚えていけるので、大倉もおすすめの練習にしています。ただし、すべての場面でベースノートを入れるのは実際むずかしいので、無理して全部には入れなくて大丈夫です。憧れの人物の背景を知りたくなったら ジョー・パス(人物ページ) もどうぞ。
「どこがええねんこれ」
——大倉自身が、最初にジョー・パスの『ヴァーチュオーゾ』を聴いたときの正直な感想です。当時は、全く訳が分かりませんでした。
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
1本で弾くときの「音の重ね方」(概念図)
まずは①メロディと②ベースの上下2音だけ。慣れてきたら③の内声(真ん中の音)を少しずつ足していきます。※これは弦やフレットの位置を示す図ではなく、音の役割の重ね方を表した概念図です。
あるある2|ドロップ2を全部覚えようとして、途中で嫌になる
こんな状態:「コードソロにはドロップ2が要る」と知って、教則本を開く。ところが展開形×弦セットで数が多く、覚えるだけで手いっぱい。曲で使うところまで行き着かず、途中で止まってしまう。
なぜ起きる:ドロップ2は本来、全部で12ポジションあり、実践で使えるところまでマスターするには2〜3年かかる体系だからです。それを最初に丸ごと覚えようとすれば、当然しんどい。初心者がいきなり全部を抱えるのは、そもそも無理があります。
回避策
全部は覚えない。まずは1〜4弦のパターンだけ、それも「よく使うパターン」に絞って覚えます。それだけでも、ギターソロの中でコードソロが一気に使いやすくなります。ドロップ2そのものの押さえ方の基礎は 4和音の基本フォーム で整理できます。
「いきなり自分でオリジナルのものを作るというよりは、定番の形を何パターンか覚えていくやり方がいい」。
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
あるある3|コードにすると指が届かず、押さえられない
こんな状態:9th・11th・13thを全部詰め込むというより、現代のギタリストのようなクラスターボイシング(隣り合う音を密集させた響き)を含んだコードが、なかなか押さえられない。真似しては、途中で断念する。
なぜ起きる:難しく押さえようとしすぎているからです。じつはウェス・ジョー・パス・ジム・ホールのコードの押さえ方は、現代のギタリストに比べて比較的ありきたりで、どちらかと言えば指の都合・押さえやすさを重視した形が多い。憧れの巨匠ほど、無理のない形で弾いているのです。
回避策
押さえやすい形から入っていい。軸は「トップノートにメロディを置く」こと。コードトーンで足りるところはドロップ2で押さえ、テンションが出てくるところは①ディミニッシュに置き換えるか②テンションで対応するかの2択で処理します。この進め方は「バリー・ハリス・メソッド」として確立されている考え方です。まずは押さえられる形で音を鳴らし、そこから少しずつ広げていきます。
あるある4|一人で弾くとリズムがヨレて、間延びする
こんな状態:音は合っているのに、一人で弾くとどうも間延びする。メロディを追うのに精一杯で、テンポがだんだん遅くなったり、走ったりしてしまう。バンドで弾いていたときの気持ちよさが出ない。
なぜ起きる:伴奏がいないぶん、リズムを自分でキープしなければならないからです。ソロギターで重要なのはリズム——一人で弾いていても、テンポがキープできることです。特にインテンポ(ミディアムのスウィング)では、テンポ感がとても重要になります。
回避策
「セルフコンピング」を覚えること。メロディとメロディの合間に、ちょっとしたコードのコンピング(伴奏)を挟み込みます。これでリズミカルになり、コード感も出てきて、一人でも間延びしにくくなります。ソロギターでよく使われる手法なので、マスターできると1本の演奏がぐっと締まります。
「ソロギターで重要なのがリズム、1人で弾いていてもリズムがキープできること」。
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
独学でどこまでいける?——正直に線を引きます
教室のサイトだからといって、独学を否定するつもりはありません。正直に書きます。コードソロ・ソロギターは、独学でかなりのところまでいけます。形を覚えて、2音から音を重ねていく作業は、一人でも十分に進められます。ただし、最後に残るのが下の表の「対面でしか直せないこと」です。
○ 独学・テキストでここまでできる
- ドロップ2の1〜4弦の形を覚えるところまで
- メロディ+ベースの上下2音を同時に鳴らす練習
- 定番形・名盤フレーズのコピー(インプット)
- トップノートにメロディを置く、という考え方の理解
● 対面でしか直せないこと
- 一人弾きのリズムが合っているか(基準がなく自分では気づけない——ここが核です)
- 「よく使う定番形」の取捨選択(何を優先して覚えるか)
- どの音をコードにして、どの音を単音で流すかの判断(ディミニッシュ変換かテンション対応かは好み)
- セルフコンピングを挟むタイミングと間(ま)の感覚
「対面でしか直せないこと」は「頑張れば独学でもできる」項目ではなく、構造的に一人では判定しづらい項目です。とくにリズム——一人で弾いていると、揺れていても比べる相手がいません。
「最後の話」として残しておいたのが、一人弾きがジャズの雰囲気になっているかどうかです。テンポが揺れているのかセルフコンピングの間なのかは、記事では切り分けられません。レッスンではまず一曲通して弾いてもらい、その日にやった内容をカルテに残しています。
よくある質問
Q. コードソロとソロギターは何が違いますか?
A. 大まかには同じアプローチで、どちらもドロップ2コードが土台です。教室では似た練習として教えています。強いて言えば、コードソロはシングルラインのソロにコードを混ぜていく感じ、ソロギターは曲のメロディ全体をコードで弾いていく感じです。
Q. まず何から始めればいいですか?
A. いきなりジョー・パスの『ヴァーチュオーゾ』のような名盤を目指さないことです。曲のテーマ(メロディ)を練習するときに、メロディを一番上の音、ルートを一番下に置いて同時に弾く——これだけでも結構ソロギターになってきます。
Q. ドロップ2コードは全部覚えないとダメですか?
A. 初心者が全部覚えるのは難しいので、まずは1〜4弦のパターンだけ、それも「よく使うパターン」から覚えていくのがおすすめです。それだけでも、ギターソロの中でコードソロがぐっと使いやすくなります。
Q. コードだと指が届かず、押さえられません。
A. ウェスやジョー・パス、ジム・ホールのコードの押さえ方は、現代のギタリストに比べてありきたりで、指の都合・押さえやすさを重視した形が多いです。難しいテンションを全部詰め込まず、押さえやすい定番形から入って大丈夫です。
Q. 一人で弾くとリズムがヨレます。どうすれば?
A. ソロギターで一番重要なのがリズムで、一人で弾いていてもテンポをキープできることです。メロディの合間に短いコードのコンピング(セルフコンピング)を入れると、リズミカルになりコード感も出ます。ただしリズムが合っているかは、自分では判断しづらい部分です。
NEXT LESSON
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独学で進めるのが不安になったら、教室の料金と仕組みだけでも見ておいてください。
大倉ギター教室|大阪市西区南堀江(桜川駅・西大橋駅 徒歩5分/四ツ橋・JR難波も10分圏)