「リバーブって、結局どれを買えばいい?」――ギターのエフェクターのなかでも、リバーブとディレイ(空間系)はほぼ必須。とくにジャズでは「常にかかっているもの」と言っていいほど使います。結論から書きます。迷ったら Strymon Flint(フリント)。良くも悪くも「一番普通」で、普通のことが普通に良いレベルでかかってくれる――ジャズに限らず、最初の1台にいちばんすすめやすい定番です。
この記事では、リバーブ単体(Strymon Flint/blueSky/BigSky MX/NightSky・EarthQuaker Devices Avalanche Run など)を目的別・悩み別・機種別に整理します。「種類が多すぎて分からない」「Flint と BigSky どっち?」「マルチのリバーブで十分では?」といった疑問に、空間系にこだわってきた現場知ベースでお答えします。音の余韻に厳しいジャズギターのプロ目線は、リバーブ選びの良いものさしになります(ジャンルを問わず使える話です)。
30秒の結論
- 定番の最初の1台は Strymon Flint。シンプルで、ダークで密度が濃く、ジャズの雰囲気にマッチ(Fenderアンプのリバーブ/トレモロを取り出した機種)。市場価格 約5.3万円〜。
- もっと多彩・高解像度に1台でやるなら Strymon BigSky MX(大倉の現メイン。IRリバーブや Cloud/Shimmer を多用、リバーブの2系統同時も)。
- ディレイも一緒に欲しいなら EQD Avalanche Run(2-in-1・リバーブが濃く、ダークなディレイがジャズに合う)。今の海外ジャズギタリストに定番。
- 多機能リバーブ(NightSky 等)は“沼”になりがち。結局「普通のリバーブを上手くやる機種」が手元に残ります。
- 安く済ませたいなら、入口はマルチ内蔵でもOK(単体機は5万円〜が主流)。→ マルチエフェクターの選び方
| あなたの目的・希望 | まず見る機種 | タイプ | 送り先 |
|---|---|---|---|
| シンプルに定番の1台(ジャズ最多) | Strymon Flint | 標準リバーブ(Hall/Plate/Spring) | #flint |
| 高解像度・多彩を1台で | Strymon BigSky MX | 多機能リバーブ(IR・2系統) | → /bigskymx/ |
| ディレイも一緒に(2-in-1) | EQD Avalanche Run | リバーブ+ディレイ | #delay |
| Strymon各機の違い・比較を詳しく | Flint / blueSky / BigSky 比較 | 機種比較 | → /storaymon-reverb/ |
| マルチで空間系もまとめたい | Quad Cortex 等 | マルチ/モデラー内蔵 | → /multi-effects/ |
※価格は2026年6月時点の市場価格の目安です。変動しますので購入時にご確認ください。
リバーブはギターに必須? アンプ内蔵との違い
ジャズギターでは、リバーブ・ディレイといった空間系は、必ずと言っていいほど使います。とくにリバーブは「常にかかっているもの」。音の厚みや空間を作るための土台で、無いとどこか寂しい。大倉も「常に掛かっているものだからこそ、ここにこだわってお金を掛けてもいい」と考えています。弾いていて気持ちいいことが、良い演奏への第一歩だからです。
逆に、歪ませたプレイのときは、あえてリバーブを極端に減らす・ゼロにすることもあります。そのほうが音が前に出て印象的になる。「常時うっすら」と「ここぞでゼロ」を使い分けるのがコツです。
アンプ内蔵リバーブと、単体リバーブの違い
Fender系アンプのスプリングリバーブや、JC-120 のリバーブも良いものです。ただしアンプ側はつまみ1個(レベルだけ)で種類は固定のことが多い。単体リバーブを足すと、Hall/Plate/Spring の切り替えや、かかり具合の追い込み、薄くモジュレーションを足すといった細かい設定が自由になり、会場のアンプに左右されずどこでも同じ余韻を作れます。
アンプとエフェクターの“二重掛け”も有効です。たとえば JC-120 のリバーブをつまみ3〜4でうっすら掛けておき、メインは足元のエフェクターでしっかり掛ける。曲によってエフェクター側を切ると、メリハリが付いて良い感じになります。アンプ側の音作りは JC-120のセッティング や ジャズギターアンプの選び方 も参考に。
リバーブの種類と使い分け(Spring/Hall/Room/Plate/Shimmer/Cloud)
「種類が多すぎて分からない」という人は、まずこの違いを押さえると一気に選びやすくなります。
- スプリング(Spring):バネの振動を使った、いちばんオーソドックスなリバーブ。Fenderアンプでおなじみの揺れた質感で、ギターアンプっぽい音を狙うならこれ。大倉はカッティング系で好んで使います。
- ホール(Hall):大きなホールで弾いているような、奥行きがあって残響(ディケイ)が長い響き。バラードやソロに合わせやすい万能タイプ。
- ルーム(Room):ホールを小さくしたような短めの残響。部屋鳴り程度に軽く湿らせたいときに自然(ホールとはパラメータ違いで地続き)。
- プレート(Plate):鉄板の反響を録音したのが起源の、滑らかで密度のある響き。スプリング/プレート/ホールの中でいちばんジャズっぽく、大倉がいちばんよく使うのがプレート。普段の演奏はプレートかホールでほぼ十分です。
コツ:ごく薄くモジュレーションを足すと、本物のプレートのような“生々しい揺らぎ”が出ます。 - シマー(Shimmer):オクターブ上などを重ねて、雲のように広がる幻想的な響き。常用ではなくピンポイントで。
- クラウド(Cloud)=アンビエンス系:人工的で独特の広がり。大倉はシマーよりクラウド派で、ソロギターやバラードで雰囲気を出したいときにかなり使います。
なぜジャズで Strymon Flint が定番なのか
最初の1台にいちばんすすめやすいのが Strymon の Flint(フリント)。Fenderアンプのリバーブとトレモロを取り出した機種で、モードはホール/プレート/スプリングの3つ+トレモロ(別系統)。「変わったことはできないが、普通のことが普通にできる」――この当たり前の良さが、現場では一番効きます。
人気の理由は音質。Flint のリバーブは密度が濃くダークで、ジャズの雰囲気にすごくマッチします。Color というつまみで明るさを調整でき、アンプより明るくもできる。そしてどこに設定しても破綻しないのが強み。付いているトレモロも使い勝手がよく、うっすら常時掛けも気持ちいい。最新世代(V2)も基本の音は変わらず、違いは MIDI が使える程度なので、新旧でそれほど神経質になる必要はありません。市場価格は約5.3万円〜。
「シンプルさ」が逆に強い
多機能機ほどあれこれ悩めますが、ライブで本当に使うのは結局オーソドックスなリバーブ。3モードに絞られた Flint は、現場での使い勝手が抜群です。ちなみに Julian Lage は Flint のスプリングを使っていた印象。「まず1台」を選ぶなら、迷わず Flint をおすすめします。
Flint・blueSky・BigSky、どれを選ぶ?(多機能の“罠”)
Strymon にはリバーブが何種類かあり、迷いやすいところ。大倉が実際に使い比べてきた結論を整理します。
- Flint=オーソドックスの王道。ダーク・密度高め、ライブでの使い勝手がいちばん良い。
- blueSky=明るめ・綺麗系(ハイファイ)。モジュレーション系・シマーリバーブが得意で、全体に音が明るい。Mike Moreno が今でも使っている印象。新しい V2 ではシマーの設定が自由にできるようになり使い勝手が向上。市場価格 約5.8万円。
※大倉は Flint と blueSky を両方所有→blueSky は「綺麗すぎる」と感じることが多く、オーソドックスを求めると結局 Flint に戻った。この考えは今も変わらず。 - BigSky MX=高解像度・全部入りの現メイン。解像度がとても高く、Strymon の歴代リバーブがほぼ全部入っている感覚。これが大倉の現在のメインです(詳細は次章)。
👉 blueSky と BigSky、Flint の“音の違い・比較”をもっと詳しく知りたい方は、機種比較に絞ったこちらが参考になります → Strymonリバーブ徹底比較(blueSky / BigSky / Flint の違い)
多機能リバーブの“罠”(NightSky を手放した話)
Strymon の NightSky(市場価格 約7.0万円)を所有していたこともあります。オクターブ下を足したり、シマーを自由に作り込んだり、「スペースリバーブ」(長く弾くとリバーブ・短く切るとディレイのように聞こえる)など、Allan Holdsworth を思わせる映画サントラ的なゴージャスな音まで作れる多機能機。面白いのですが、“普通のリバーブ”が意外と不得意で、結局「普通のリバーブ+NightSky」になって荷物が増える。それで手放し、今は BigSky MX 単体で十分になりました。多機能=正解ではない、というのが現場の実感です(遊びの1台としては面白い)。
現メイン Strymon BigSky MX は何がすごい?
大倉が「新しいほうの BigSky」と呼ぶ現行機が Strymon BigSky MX(市場価格 約10.8万円)。旧 BigSky とは音質が歴然で、発売日に楽器屋で1音出した瞬間に買ってしまったほど。密度が濃く高音質で、Strymon の歴代リバーブ(Hall/Plate/Spring に加え、その新世代バージョン)がほぼ全部入りです。
- IRリバーブ:実際の音源データ(実空間の響き)を参照して響きを決めるモード。大倉はとある大学が公開している研究用の環境音データ(無料)を読み込み、なかでも鍾乳洞のデータが「すごく良い音」でずっと愛用。データはネットで入手して入れ替えます。
- 2系統同時(リバーブの二重掛け/リバーブ+ディレイ):2つのエフェクトを同時に使え、空間のサウンドメイキングに強い。大倉の運用はプリセット①=IRリバーブ+ディレイ/プリセット②=クラウドリバーブ+ディレイを曲で切り替え。
- Cloud/Shimmer:ソロギターで雰囲気を出すときに多用。
👉 BigSky MX の中身(IRの入れ方・モード・旧BigSkyとの違い)をさらに詳しく → Strymon BigSky MX 徹底レビュー
ディレイも一緒に欲しい/マルチで空間系をまとめたい
リバーブとディレイを1台で済ませたいなら、EarthQuaker Devices の Avalanche Run(市場価格 約53,800円)。今の海外ジャズギタリストの足元に高確率である定番の2-in-1で、繋ぐだけでジャズっぽいリバーブとディレイが出ます。リバーブは密度の濃いプレート系、ディレイはテープエコー的でダーク。1個持っていけば十分、という手軽さも魅力です(弱点も含めた詳細レビュー)。
Avalanche Run の“クセ”(買う前に知っておきたい)
良い機種ですが弱点もあります。① リバーブの設定項目が少なく、プリディレイ(残響が立ち上がるまでの間)が固定で長め。そのためカッティングや細かいストロークだと残響が遅れて聞こえ、もたつきがち(逆に単音弾き・バラードでは“いい余韻”として効く=ケースバイケース)。② ディレイのオン/オフが切りにくい(基本はレベルつまみで絞るしかなく、パッと切り替えづらい)。この2点が許容できるかが選ぶ基準です。
リバーブの“二重掛け”という上級テク
海外勢ではリバーブを2つ重ねる使い方も。Gilad Hekselman は Avalanche Run にもう1台(モジュレーション系リバーブ)を重ね、Kurt Rosenwinkel もバラードで二重掛けをよく使っていました。前述の BigSky MX なら1台で2系統=二重掛けが完結します。
専用機 vs マルチ内蔵リバーブ(リアルな天秤)
正直に言うと、リバーブの音だけ取り出せば、専用機(BigSky MX)にやや軍配が上がります。ただし圧倒的な差ではなく“微妙な差”。大倉は最近 Quad Cortex をメインにする場面も多く(QCもクラウドリバーブ等が追加され品質向上)、高価格帯では差がほぼ無くなりつつあるのが実感です。一方低価格帯では、単体の BigSky に明確に軍配。「1台にまとまる利便性」を取るか、「その機種にしか出せない個性」を取るか。まとめる選択は マルチエフェクターの選び方/アンプシミュレーターの選び方 も参考に。
かけ方(接続順)は、リバーブ・ディレイの空間系を一番最後に繋ぐのが基本(歪み・ブースター → オクターバー → アンプシミュ →(IR)→ 空間系)。実機(アンプ)使用時はアンプの入力前に、Quad Cortex 等のプロセッサーでは一番後ろ(IRのさらに後)に置きます。現場ごとに部屋の鳴りが違うので、レベルはシビアに調整しましょう。
機種別にざっくり比較(どれを選ぶ?)
- Strymon Flint=ジャズ最多の定番(約5.3万円〜):シンプル・ダーク・密度高め。Hall/Plate/Spring+トレモロ。まず1台ならこれ。→ レビュー
- Strymon blueSky=明るめ・シマー得意(約5.8万円):ハイファイで綺麗な響き。明るいリバーブが欲しい人に。→ レビュー
- Strymon BigSky MX=高解像度・全部入り(現メイン)(約10.8万円):IRリバーブ・2系統同時・Cloud/Shimmer。1台で多彩にやりたい人の本命。→ レビュー
- Strymon NightSky=多機能の代表(約7.0万円):作り込み系。“普通のリバーブ”には大きく、大倉は手放し。実験的な音作りをしたい人向け。→ レビュー
- Strymon Cloudburst=小型アンビエント(約4.4万円・2023年):コンパクト筐体で豪華なアンビエント。Ensemble機能でストリングス的な厚みを足せる。ソロギターや空間演出に手軽で、大倉も試奏済み。
- EQD Avalanche Run=ディレイ+リバーブの2-in-1(約53,800円):濃いリバーブとダークなディレイ。海外ジャズの定番(プリディレイのクセに注意)。→ レビュー
- Empress Reverb:BigSky 級の大型・高音質で“自然な”響き。ユーザーは少なめだが実力派。
- Universal Audio(UAFX)Golden Reverberator/Del-Verb:非常に高音質だが綺麗すぎて“ギターっぽくない”(ボーカルには最高)。クリーンでキラキラした方向。
- Eventide H90(H9):ハイファイで高音質、空間系マルチとして優秀。ただし設定が複雑で慣れが要る。
- Walrus Audio Slö:モジュレーションが効いたダーク/幻想的なリバーブ。飛び道具として面白い。
- Meris:どんなリバーブも作れる超多機能。音作り・研究が好きな人向け。
- BOSS RV-6:クセがなく“すごく普通”。手堅い定番。
参考:リバーブは「プログラムの良さ」で決まる(ジャズなら Strymon が向く)
デジタルのリバーブは、CPU性能より「プログラム(アルゴリズム)の出来=作り手がギターを分かっているか」が肝。Strymon の Flint が十数年売れ続けているのは、そのセンスの良さゆえです。逆に Universal Audio は綺麗すぎてジャズのクリーンには寄りすぎる印象。「ダークで密度のある余韻」がジャズらしさの肝で、ここは Strymon が向いています。なおリバーブは“脇役”ゆえ試奏では良し悪しが分かりにくい――数ヶ月〜数年使って初めて真価が分かる、というのも覚えておくと失敗が減ります。
かけすぎない音作りのコツ(Decay/Mix)
- Decay(残響の長さ)は少し長めに、Mix は控えめ:大倉はDecay 約2.5〜2.7秒(長くて5秒)を基準に、その代わり Mix(レベル)を下げ気味にすることが多い。
- Decay と Mix はセットで考える:掛かりすぎなら Mix を下げる前に Decay を短くするのも手。物足りないなら Mix を上げる前に Decay を伸ばす。
- 客観的に、空間全体で聴く:リバーブの効きは音量や部屋で大きく変わります。自分の手元だけでなく“空間全体”で鳴りを想像できると、設定が決まりやすい。
- 掛けすぎ注意:濃く掛けすぎると「何をやっているか分からない」音に。狙ってやる場合を除き、薄めからが安全です。
よくある質問(FAQ)
Q. リバーブって結局どれを買えばいい?最初の1台は?
A. 迷ったら Strymon Flint(約5.3万円〜)。シンプルでダーク、ジャズの雰囲気に合い、ライブでの使い勝手も抜群です。多彩さや高解像度を1台で求めるなら BigSky MX、ディレイも一緒に欲しいなら Avalanche Run が候補。安く始めたいなら入口はマルチ内蔵でもOKです。
Q. ジャズでおすすめのリバーブは?
A. 定番は Strymon Flint。ダークで密度のある響きがジャズに合います。今の海外ジャズギタリストには、濃いリバーブ+ディレイの EQD Avalanche Run も定番です。プレート系がいちばんジャズっぽい、と覚えておくと選びやすいです。
Q. Flint と blueSky は何が違う?
A. Flint はオーソドックスでダーク、ライブでの使い勝手が良い。blueSky は明るめ(ハイファイ)で、モジュレーション系・シマーが得意です。両方使った経験では、普通のリバーブを求めると結局 Flint に戻りました。さらに詳しい比較は Strymonリバーブ徹底比較 へ。
Q. BigSky MX は何がすごい?
A. 解像度が高く、音質が旧モデルより明らかに向上。実空間データを参照する IRリバーブ、リバーブの2系統同時、ソロギターで映える Cloud/Shimmer まで、Strymon の歴代リバーブがほぼ全部入っている感覚です。大倉の現メイン。詳細は BigSky MX レビュー。
Q. ディレイも一緒に欲しいときは?
A. EarthQuaker Devices Avalanche Run がおすすめです。2-in-1で、リバーブが濃く、ダークなディレイがジャズに合います。ただしプリディレイが長めでカッティングだと残響が遅れるクセがあるので、単音中心の人に特に向きます。
Q. 多機能リバーブ(NightSky など)は必要?
A. 必須ではありません。NightSky は作り込める多機能機ですが、“普通のリバーブ”は意外と不得意で荷物も増えがち。大倉は手放し、今は BigSky MX 単体で十分になりました。実験的な音作りをしたい人向けです。
Q. マルチエフェクターのリバーブで十分?
A. 音だけなら専用機(BigSky MX)にやや軍配ですが、その差は高価格帯ではごくわずか。Quad Cortex もクラウドリバーブ等が追加され十分良好です。低価格帯では単体リバーブが明確に有利。まとめたい人は マルチエフェクターの選び方 を参考に。
Q. リバーブはどれくらい掛ける?設定のコツは?
A. Decay は少し長め(約2.5〜2.7秒)、Mix は控えめが基準。掛かりすぎなら Mix より先に Decay を見直すのがコツです。リバーブは音量や部屋で効きが変わるので、空間全体で客観的に聴き、掛けすぎないこと。歪ませるときは逆にゼロまで減らすとメリハリが出ます。
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