「ジャズで歪ませるなら何を使う?」――答えは昔から決まっていて、ProCo RATです。派手に歪むのにどこかサックスのような質感があり、タッチにもよく追従する。カート・ローゼンウィンケルからジョン・スコフィールドまで、ジャズ系の使用者は数え切れません。この記事は、年代違いのRATを4台並べて比較した実体験をもとに、レビュー・使い方・音作り・MOD(改造)・現行ラインナップまでまとめた“RATのジャズ目線決定版”です。
30秒の結論
- いま新品で買うなら定番の RAT2(市場価格 約1.5万円)。狙えるならラージボックス系の中古が本命。
- FILTERつまみ=実質ハイカット。回し切るとマイルドな歪みになり、ジャズに馴染みます。
- 歪ませるだけでなく、ゲインを絞ってブースター/EQ的に使うのもジャズ流(Szymon Mika方式)。
- RAT系をさらに突き詰めるなら、今まで弾いた中で一番だった JAM pedals Rattler へ。
- 部品点数が少なく自作・MODの入門にも最適(クリーンラット化はラーゲ・ルンドも採用)。
RATレビュー(年代違い4台を並べて比較)
何台かのRATがまとめて手元にあったタイミングで、じっくり比較しました。同じ「RAT」でも年代・筐体でキャラクターがはっきり違います。
RAT2(90年代・USA製)
現行品に近い音で、つまみの追従性が良く、音が綺麗にまとまっているのが美点。ゲイン低めの設定でも歪み始めが早く、扱いやすい1台です。「まずRATの音を知る」基準機として優秀。
RAT2(87年・初年度製)
ゲインを上げると暴れて使いづらい反面、クリーンブーストとして使うと至高の音色。ミッドが持ち上がる特性で、フルアコとの相性がとても良い。「歪ませないRAT」の魅力を教えてくれる個体です。
RAT Large Box Reissue(90年代前半)
4台の中で一番気に入ったのがこれ。最もゲインが低く、高域を抑えた“ちょうどいい”質感。比較当時(2022年)は中古2万円強で手に入りました。いまRATを探すなら、このラージボックス系を中古で狙うのが本命です。
Deucetone RAT(現行・RAT2台内蔵)
RATを2回路内蔵した大型機。正直に言うと個人的には好みではありませんでした。どのモードも基本ゲインが高めで、ジャズ的な「軽くだけ」の使い方には合わせづらい印象です。
RATを使うジャズギタリストたち
RATの使い方は大きく2パターン――①しっかり歪ませるか、②クリーンブースター/EQとして使うか。プロの実例で見るのが早いです。
Kurt Rosenwinkel(カート・ローゼンウィンケル)
歪みものとして、ゲイン量多めで使用。セッション的な演奏で頻繁に踏んでいます。現代ジャズの「歪むRAT」の代表例。
Lage Lund(ラーゲ・ルンド)
歪まないように改造(クリーンラット化)した個体をEQとして使っていました。後述のMODの章で触れる、クリッピング変更の実例です(最近は使っていない様子)。
John Scofield(ジョン・スコフィールド)
335+RAT+Voxアンプの組み合わせで、基本しっかり歪ませて、ギター側のボリュームとタッチでクリーンまでコントロール。「手元で歪みを操る」教科書のようなスタイルです。
Szymon Mika(シモン・ミカ)
大倉お気に入りのポーランドのギタリスト。RAT2をクリーンブースターとして常時ON=歪ませないRAT運用の現代の好例です(使用機は80年代初期の個体と推定)。
ほかにもロベン・フォード、一時期のギラッド・ヘクセルマンなど、RATの使用者は枚挙にいとまがありません。
RATの音作り(FILTERの理解がすべて)
FILTERつまみ=実質ハイカット
RAT独特の FILTER は通常のトーンに相当しますが、効き方が逆向き=左に回すと明るく、右に回し切るとどんどんハイカットされます。回し切る方向にすると、派手なRATがぐっとマイルドなジャズ向きの歪みに化けます。まずこのつまみの理解がRAT攻略の核心です。
ブースター/EQとしての音作り
GAINをギリギリまで絞り、FILTERは3時以降が基本形。歪まないままRATのミッドの押し出しと質感だけが乗ります(モデルごとに微調整を)。87年製やSzymon Mikaの使い方がまさにこれ。クリーンブースターの選択肢としては EP Booster や ケンタ系 と並ぶ、隠れた定番です。
歪みものとしての音作り
GAINは12時あたりが目安。それ以上上げると音が潰れて扱いが難しくなります。サックス的に歌わせたいソロは、この12時設定+FILTER回し切りから調整を。
現行ラインナップとどれを買うか【2026年版】
- RAT2(市場価格 約1.5万円)=現行の基準機。新品で買うならこれ。
- Lil RAT(約1.8万円)=ミニサイズ版。ボードの省スペースに。
- Turbo RAT(約3万円)=よく歪むタイプ。ジャズ用途では持て余しがち。
- FAT RAT(約3.5万円)=低音がしっかり出るタイプ。
- Dirty RAT=ファズ的に暴れるタイプ。コンテンポラリー/アバンギャルド向き。
結論:基本はRAT2、狙えるならラージボックス中古
迷ったら新品のRAT2で間違いありません。ただ、4台比較で一番良かったのはラージボックス(白い大箱)。今買うなら中古で探します。また Formula B Elettronica「RAT RACE」(約4.6万円)という昔のラージボックスを再現したペダルもあり、まだ弾けていませんが入手できるなら気になる存在です。
RAT系の発展形(今まで弾いた中のNo.1)
- JAM pedals Rattler(ラトラー)=今まで弾いたRAT系で一番良かった1台。ギリシャのハンドメイドブランドで、筐体の柄は1台ずつ手描き。RATのコピーながら本家よりピッキングのニュアンスが出る・アタックに忠実で、何度試奏しても良かった。RAT系で1台選べと言われたら、これをすすめます。
- JHS PackRat=歴代RATの回路をアナログで切り替えられる“RATシミュレーター”。1台で年代違いの音を試せる面白い選択肢。
RATの電源の問題(旧型はミニピン)
現行モデルは標準的な2.1mm DCケーブルに対応しますが、旧型(ヴィンテージ)はミニピン電源のため変換が必要です。中古でラージボックスや80年代個体を狙う人は、電源まわりの確認をお忘れなく(電源全般の話は → エフェクターボード・電源の組み方)。
中古相場の目安(2022年比較時点の記録)
- 現行RAT2の中古:5,000〜8,000円
- USA製RAT2:2万〜3万円
- 80年代RAT2:3.5万〜4万円
- Large Box(RAT1)初期:12万〜15万円
- Large Box Reissue:2万〜2.5万円
※上記は4台比較を行った2022年時点の記録です。ヴィンテージ系は上昇傾向にあるので、購入時に最新相場をご確認ください。
RATの自作(入門に最適、そして沼)
RATは部品点数が少なく、エフェクター自作の入門に最適です。きちんと作ると「本物以上に気に入る」ことも多い。ただしオペアンプの選定を始めると深い沼が待っています(そこが楽しいのですが)。はんだごてを握る人は、Freezeの外部スイッチ化改造 や 自作EPブースターの話 もどうぞ。
RAT2のMOD(改造)について
LED交換
古い個体はLEDが暗いことが多く、交換するだけで視認性が大きく改善します。いちばん手軽なMODです。
クリーンラット化・クリッピングの変更
クリッピングダイオードを除去するとクリーントーン化します=いわゆる「クリーンラット」。ラーゲ・ルンドが採用していた改造です。ダイオードの種類を変えるだけでも歪みの質感が変わり、ミニスイッチで切り替え式にする定番MODもあります。
トゥルーバイパス化
RATは基本バッファードバイパスで、通すだけで音が少し変わります。気になる人はトゥルーバイパスへの改造も選択肢です。
電源部分のMOD(旧型向け)
旧型のミニピン電源を2.1mmジャックに交換するMOD。電源ノイズの低減にも効きます。※改造はメーカー保証が無効になります。必ず自己責任で。
RAT・TS系・ケンタ系の使い分け(ジャズの歪みマップ)
- RAT=強い歪み。派手&サックス的。フュージョン/フリースタイル向け。
- TS系=ミッドの出るブースター枠(ドライブ0付近でレベル上げ)。
- ケンタ系=ローミッド+ハリ。→ ジャズで使うケンタウルス系ガイド
- 全体の地図は → ジャズギターで使うエフェクター完全ガイド
よくある質問(FAQ)
Q. ジャズでRATを使うのはあり?
A. ありです。むしろジャズ系の歪みの定番で、カート・ローゼンウィンケルやジョン・スコフィールドなど使用者多数。FILTERを回し切ればマイルドに、ゲインを絞ればクリーンブースターにもなる懐の深さが理由です。
Q. どのRATを買えばいい?
A. 新品なら定番のRAT2(約1.5万円)。こだわるならラージボックス系の中古が本命です。RAT系の発展形では、ピッキングニュアンスに忠実な JAM pedals Rattler が今まで弾いた中のベストでした。
Q. RATはブースターとして使える?
A. 使えます。GAINをギリギリまで絞り、FILTERを3時以降にすると、歪まないままミッドの押し出しと質感だけが乗ります。87年製RAT2のクリーンブーストは至高ですし、Szymon Mika はRAT2を常時ONのクリーンブースターとして使っています。
Q. FILTERつまみの使い方が分からない
A. 通常のトーンと逆向きの実質ハイカットです。左に回すと明るく、右に回し切るとマイルドになります。ジャズ用途ではまず回し切り側から試して、好みの明るさまで戻すのがおすすめです。
Q. RATの改造(MOD)では何ができる?
A. 定番はLED交換・クリッピング変更(クリーンラット化=ラーゲ・ルンド採用)・トゥルーバイパス化・旧型の電源ジャック交換の4つ。部品点数が少なく入門向きですが、改造はメーカー保証が無効になるため自己責任で。
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