ピッキングのアタックがふっと消えて、音があとから立ち上がる――カート・ローゼンウィンケルをはじめ、現代ジャズギターの“あの浮遊感”の正体がスウェル(オートスウェル)系エフェクターです。火付け役は Electro-Harmonix POG2。そして今は、その美味しい機能だけを小さく抜き出した Pico Swello(ピコ・スウェロ)で、手頃に同じ音が手に入ります。
30秒の結論
- スウェル=バイオリン奏法(ボリューム奏法)の自動化。和音の一音一音に個別にかかるのが画期的。
- みんなが使っていたのはPOG2の「スウェル機能だけ」。それを抜き出したのが Pico Swello=音はほぼPOG2と同じで、小さくて手頃(市場価格 約2.4万円)。
- 大倉のセッティングはATTACK=ゼロ・VOL=2時・MOD/FREQ=12時。
- 使いどころはバンド編成で、1ライブに1回あるかないか。かけっぱなしは“カートの真似”になりがち=控えめが粋。
- このニュアンスはマルチエフェクターには入っていない=コンパクトで持つ価値のある数少ない1台。
スウェル(オートスウェル)とは何か
ギターのボリュームを弾いた直後に上げて、アタック音を消して「ふわっ」と音を立ち上げる――いわゆるバイオリン奏法(ボリューム奏法)。スウェル系エフェクターは、これを自動で、しかも高速にやってくれます。
画期的なのは、和音の一音一音に独立してエンベロープがかかること。手のボリューム操作ではコード全体が一緒に膨らみますが、スウェル系は各弦が個別に立ち上がるので、パッドやストリングスのような有機的な広がりになります。これは手では再現できません(速すぎて物理的に不可能)。ギターが“ギターじゃない楽器”に化ける感覚です。
POG2 から Pico Swello へ(流行の系譜)
この音を流行らせたのが Electro-Harmonix POG2。カート・ローゼンウィンケル、ラーゲ・ルンド、ジョナサン・クライスバーグと、一時期は現代ジャズギタリストがこぞって足元に置いていました。ただ面白いことに、POG2 は本来オクターバー(オクターブ上下を重ねてオルガン的な音も作れる多機能機)なのに、みんなが使っていたのは実質「スウェル機能だけ」だったんです。
そこで登場したのが、そのスウェル機能(POG2のアタック・エンベロープ)だけを抜き出した Pico Swello(2025年発表)。手のひらサイズのPicoシリーズで、つまみはATTACK(立ち上がりの速さ)/VOL(音量補正)+ローパスフィルターのFREQ/MODというシンプル構成。弾き比べても POG2 とほぼ区別がつかない音が、約2.4万円で手に入ります。POG2 が POG3 への世代交代で値が張るようになった今、スウェル目当てなら迷わず Pico Swelloです。
大倉のセッティング(実機の実値)
ATTACK=ゼロ/VOL=2時/MOD・FREQ=12時。フィルターの効き具合が結構重要で、基本はランプが緑に光るポジションを使うことが多いです。ATTACKゼロでも十分“ふわっ”と来るので、まずはここから微調整してみてください。
使いどころの作法(バンドで、1ライブ1回)
- 出番はバンド編成(ドラム・ベースがいる時):リズムの土台があるほど浮遊感が映えます。逆に歌とのデュオなど裸の編成では、大倉は使いません。
- 頻度は「1ライブに1回あるかないか」:強烈な個性ゆえ、常用すると飽きます。ここぞの1曲・1場面で踏むのが効果的。
- 弾き方はレガートに徹する:ハンマリング/プリングを多めに、滑らかに。その方が圧倒的にいい結果になります。
- ゆっくりより速いフレーズで真価:スケールをガッと駆け上がるような速弾き系のラインで効果が抜群に出ます。
“カートの音”問題(かけっぱなしにしない理由)
カート・ローゼンウィンケルはほぼかけっぱなしと思うほど多用していて、もはや「カートと言えばこのサウンド」。一方でクライスバーグやラーゲ・ルンドは、ほとんど素の音でたまにしか使いません。理由はおそらく――かけっぱなしにすると“カートの真似”になってしまうから。大倉も同じ考えで、ずっとかけようとは思いません。強い個性のエフェクトほど、控えめに使うのが自分の音を守るコツです。
POG2 と Pico Swello、どっちを買う?
- スウェルが目当て → Pico Swello一択。音はほぼ同じ(立ち上がりの速さがわずかに違う程度で、優劣はありません)、小さくて、価格も手頃。
- オクターブ重ね(オルガン的な音作り)もやりたい → POG2/POG3。本来の多機能が活きます。
- マルチでの代用は不可:スウェル系のエフェクト自体はマルチにもありますが、このエレハモ特有のニュアンスは今のところエレハモにしかありません。「コンパクトじゃないとダメな数少ないペダル」のひとつです。
なお「手でやるボリューム奏法と何が違うの?」という疑問には――別の技法だと考えてください。手の奏法はゆったりした表現に、スウェル系は速いパッセージや和音の浮遊感に。手元のボリュームはむしろ歪み量のコントロールに使う方が現代的です(足元の音量管理は → ボリュームペダル ガイド)。
こんな人におすすめ
- 現代ジャズの浮遊感(カート、ラーゲ・ルンドあたりの音)に憧れている人。
- バンド編成で「ここぞ」の飛び道具を1個足したい人。
- ボードのスペースが限られている人(Picoサイズは正義です)。
- レガート・速いラインの練習成果を違う響きで楽しみたい人。
よくある質問(FAQ)
Q. スウェル(オートスウェル)ってどんなエフェクト?
A. ピッキングのアタックを消して、音をあとからふわっと立ち上げるエフェクトです。バイオリン奏法(ボリューム奏法)の自動化で、和音の一音一音に個別にかかるのが特徴。現代ジャズギターのトレンドサウンドです。
Q. POG2 と Pico Swello、どっちを買うべき?
A. スウェルが目当てなら Pico Swello 一択です。音はほぼPOG2と同じで、小さく手頃(約2.4万円)。オクターブ重ねなど多機能も欲しい場合だけ POG2/POG3 を選んでください。
Q. 設定のコツは?
A. 大倉の実値は ATTACK=ゼロ・VOL=2時・MOD/FREQ=12時、フィルターはランプが緑に光るポジションが基本です。弾き方はレガートに徹し、速いフレーズで使うと効果が最大化します。
Q. どんな場面で使えばいい?
A. ドラム・ベースのいるバンド編成で、1ライブに1回あるかないか――くらいが粋です。常にかけると飽きますし、“カートの真似”にもなりがち。ここぞのバラードや浮遊感が欲しい場面で踏んでください。
Q. マルチエフェクターのスウェルで代用できる?
A. スウェル系エフェクト自体はマルチにも入っていますが、このエレハモ特有のニュアンスは今のところエレハモにしかありません。OC-5・真空管バッファーと並んで「コンパクトじゃないとダメなペダル」の代表です。
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