現代ジャズギタリストがこぞって使用する Moffa Guitar(モファ・ギター)について、公開できる限りの情報をまとめました。私自身これまでにオーダーを経験し(5年待って2026年についに製作開始)、試作機のヘッドレスも所有――Nico Moffa 本人と頻繁にやり取りしてきた経験ベースで、モデルの選び方から購入・オーダーの実際まで解説します。
30秒の結論
- 一言でいうと「めちゃめちゃ繊細なギター」。バイオリン製作にルーツを持つ作りと塗装で、美しい楽器が欲しい人にはど真ん中です。
- 使用者は Gilad Hekselman・Kurt Rosenwinkel・Wolfgang Muthspiel など現代ジャズのトップ層がずらり(特にヨーロッパ系)。
- 値段は最安50万円〜・箱物で100万円前後。オーダーは直接メールでOK(英語・翻訳ソフト可)。
- ただし納期は現在5年以上待ち。デポジットを払って列に並ぶ方式です。気長さが必須。
- 売れ筋は Lorraine、小ぶりなら Mithra(14.5インチ)、ヘッドレスなら Armonia/Hera。
Moffa Guitar とは
イタリアの弦楽器製作者 Nico Moffa(ニコ・モファ)が設立したギターブランドです。主にジャズミュージシャンのためにギターを製作していて、メインはフルアコ・セミアコ、最近ではよりソリッドに近いエレキギターのオーダーも受け付けています。
特徴は、伝統的な形の踏襲ではなく「いまのジャズギターシーンにマッチしたギター」を目指した設計であること。一方でバイオリン製作にルーツがある方なので、伝統的なバイオリンの塗装方法をギターに応用しており、非常に美しいギターを数多く手掛けています。繊細で美しい――この一言に尽きるブランドです。
代表的なモデル
Moffa は同じモデルでもサイズ違い・カッタウェイ違い・様々な構造で製作できるため、組み合わせは膨大です。見た目だけで判別するのは難しいので、オーダー時は Nico に直接相談するのが一番。丁寧にいろいろなアイデアを提案してくれます。
Maestro(マエストロ)
Moffa で最もトラディショナルなタイプ。16・17・18インチモデルがあります。
Mithra(ミスラ)
14.5インチのシングルカッタウェイの小ぶりなモデル。使用している人が多い人気機です(小さめフルアコ好きには特におすすめ)。
Maryan(マリアン)
16・15インチの非対称モデル。シングルカッタウェイ/ダブルカッタウェイが選択できます。
Lorraine(ロレイン)――体感での売れ筋No.1
体感では一番の売れ筋。ES-335を非対称にしたようなデザインで、15インチと13.5インチの2種類があります(13.5インチはセミソリッドのみ)。
Armonia(アルモニア)――ヘッドレス選択可
ヘッドレスが選択できるモデル。フラットトップ/アーチトップ、ソリッド/セミソリッドが選べます。オプション次第で同じモデルに見えなくなるほど多彩です。
Hera(ヘラ)――貴重なヘッドレス・セミアコ
こちらもヘッドレスが選択できるモデルで、数少ないセミアコのヘッドレスという貴重な存在。通常のヘッドレスとは違う構造を採用していて、Nico いわく「ヘッドレスの弱点である“ソリッドっぽくなる感じ”を解消できている」とのことです。
楽器構造(4+1種類)
Moffa ではモデルによって、以下のボディ構造から選んで製作できます。鳴り方・音量・ハウリング耐性がここで決まるので、用途(自宅か現場か・バンドの音量)に合わせて Nico と相談しましょう。
SUPER ACUSTIC
最も大きな音の出るタイプ。アコースティックギターに近い構造です。
HOLLOW
いわゆるフルアコです。
SEMI HOLLOW
くり抜いたボディにトップ材で蓋をするような構造です。
SEMISOLID
こちらもくり抜きボディに蓋をする構造で、テレキャスターのシンラインに近いイメージ。教室にある私のMoffa(試作機)もこのセミソリッド×ヘッドレスです。
SOLID
くり抜いていない、普通のエレキギターの構造です。
購入・オーダーの仕方
日本国内の楽器店でも年に数本は販売されますが、基本は直接オーダーがおすすめです。
オーダーの流れ
まずは一度メールを送ってみましょう。英語で大丈夫です。私は英語が得意ではないので翻訳ソフトを使っています(最初に「翻訳ソフトを使っています」と断っておくとスムーズです)。メールを送るとプライスリスト(カタログ)を案内してくれるので、そこから相談スタートです。
覚悟しておきたいのが返信の遅さ。イタリアの工房なので基本遅いです。早ければ当日、内容によっては忘れた頃――1週間、2週間、ときには1ヶ月経ってから返ってくることもあります。催促せず、気長に待つのがコツです。
支払い方法(3回分割)
- 1回目:順番待ちリストに加えてもらう時(デポジット)
- 2回目:楽器の製作に入る時(デポジット)
- 3回目:完成後・発送前(差額の残金)
1・2回目のデポジットは各1,500ユーロ。支払いは銀行からの海外送金が基本です。PayPalも使えるようですが手数料が高すぎるとのことで、銀行送金ができなかった時の最終手段と考えておきましょう。銀行での海外送金手続きは、Moffa からの請求書(インボイス)があると比較的スムーズに進みます。
待ち時間:現在5年以上(伸びています)
この記事を最初に書いた頃は「約3年」と言われていましたが、現在の待ち時間は5年以上になっています。これ以上オーダーが入るとオーダーストップする可能性も。欲しい人は「列に並ぶだけ並んでおく」のが正解です(私の実体験は次の章で)。
私のオーダー実録――5年待ちのリアル(2026年追記)
参考までに、私自身のオーダーがどう進んだかを時系列で。5年以上前にオーダーして、当時は「製作開始まで2年待ちくらい」と言われていました。ところが順番は一向に来ず――5年目にしてようやく「今から作るよ」と連絡が来ました。
細かい仕様を決めてメールを送り、2025年6月頃に完成予定と言われたものの、これもしばらく音沙汰なし。その後あらためて「今から作るよ」と連絡が来ました(支払いの記録はちゃんと残っていました。この辺は安心していいです)。このとき面白かったのが、待っている間に欲しいギターが変わっていた私に対して「まだ作ってないから、どんな変更でもいいよ」と言ってくれたこと。お言葉に甘えて、当初のオーダーから内容をガラッと変更しました。
そして2026年1月、オーダー変更込みで製作開始の連絡。作り始めてからの納期は10ヶ月ほどとのことなので、うまくいけば年内に手元に来る見込みです。――というわけで、Moffa のオーダーは「忘れた頃にやってくる」を5年スケールで楽しめる人向けです。それだけ待つ価値のある楽器だと、私は思っています。
こぼれ話:試作機を譲ってもらった
実は教室にはもう1本 Moffa があります。あるとき Nico から「試作品でこんなものを作ったんだけど、興味ある?」とメールが来ました。オーダーのやり取りでヘッドレスの相談をしていたのを覚えていてくれたようです。ヘッドレスのセミソリッド、オプションてんこ盛りの仕様を、オプション代なしでかなり安く譲ってもらいました。直接やり取りできて、分からないことをメールで聞ける――これが直接オーダーの一番のメリットです。
値段
モデル・構造・オプション・塗装の種類によってかなりの幅があります。目安は最安で50万円くらいから、通常の箱物で100万円前後。なお値上がりのご時世ですが、Moffa を含むルシアー物は量産品より値上げ幅が穏やかな傾向があり、私は「いまでも買い」だと考えています。
使用ギタリスト(現代ジャズのトップ層)
Gilad Hekselman、Kurt Rosenwinkel、Wolfgang Muthspiel、Tom Ollendorff、Lorenzo Cominoli をはじめ、現代ジャズギタリストがこぞって使用しています。特にヨーロッパ系のギタリストが多いのも特徴です。実際の音はぜひ動画で。
よくある質問(FAQ)
Q. Moffa Guitar はどんなブランド?
A. イタリアの弦楽器製作者 Nico Moffa によるギターブランドです。バイオリン製作のルーツを活かした繊細で美しい作りと塗装が特徴で、現代ジャズシーンに合わせた設計のフルアコ・セミアコ・セミソリッドを製作しています。
Q. 値段はいくらくらい?
A. モデル・構造・オプションで幅がありますが、最安50万円くらいから、通常の箱物で100万円前後が目安です。支払いはデポジット2回(各1,500ユーロ)+完成時残金の3回分割、銀行の海外送金が基本です。
Q. 納期はどれくらい?
A. 現在5年以上待ちです(私は実際に5年待ちました)。デポジットを払って順番待ちリストに入る方式で、製作開始から完成までは10ヶ月ほど。これ以上オーダーが増えるとオーダーストップの可能性もあるので、欲しい人は早めに列に並ぶのが正解です。
Q. 英語ができなくてもオーダーできる?
A. できます。私も翻訳ソフトを使ってやり取りしています(最初に翻訳ソフト使用と伝えるのがおすすめ)。メールの返信は早くて当日、遅いと1ヶ月待ちもある「イタリア時間」なので、気長に構えましょう。
Q. どのモデルを選べばいい?
A. 売れ筋はLorraine(ES-335を非対称にしたデザイン)、小ぶりが好みならMithra(14.5インチ)、トラディショナル志向ならMaestro、ヘッドレスならArmonia/Hera。組み合わせが膨大なので、Nico本人に用途を伝えて相談するのが一番です。可能なら国内で売っている個体を試奏して傾向を掴んでからのオーダーをおすすめします。
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Moffa の実機、教室で弾けます
大阪・西区(南堀江・桜川)の教室には、Nico から譲ってもらったヘッドレス・セミソリッドの Moffa 実機があります。「繊細ってどういう音?」が気になる方は、レッスンでぜひ弾いてみてください。オーダーの相談(メールの文面まで)も経験ベースでお手伝いできます。