オープントライアドのゴールは「フォームを全部暗記する」ことではありません。三和音(トライアド)を“開いた”形で指板に置けて、1コードを上下できて、ソロやコードワークのアイデアとして使えることです。前提が2つ、やることは6つ。
前提=4和音の基本フォームと、テンションコード(テンションの方が一般的なので、そちらが先)。そのうえで:
- 作り方=クローズド(ドミソ)の真ん中の音を1オクターブ上げる
- メジャーの12フォーム(どの音を一番下に置くか=3つの転回×弦セット)を、一覧の順に
- マイナー=3度を1フレット下げるだけ(マイナーは11フォーム)
- 練習の型=1コードを上下(フォームの3音→スケールで下降=譜例A)
- 2-5-1で使う(Dm7→G7→CM7=譜例B)
- スタンダードで使う(All The Things You Are=譜例C・D。アプローチノートと組み合わせる)
やらないこと(引き算):
✕ dim・sus・augのトライアドは今は覚えない——レッスンで触れる程度。メジャーとマイナーだけ。
✕ トライアドペアを先にやらない——オープントライアドの後でも遅くない。
✕ 必須だと思い込まない——バップスタイル(ビバップ流のソロ)だけなら知らなくても弾ける。ギターとして面白い引き出しとして。
なぜ「テンションの後・ドロップ2の前」なのか(30秒だけ理屈)
順番でいえば、テンションの方が一般的です。バップスタイルで弾くだけなら、オープントライアドは知らなくても弾けます。だから必須の並びとしてはテンションが先。それでもここに置くのは、ギターとして面白く、レッスンでも好評だからです。
手順:6ステップ(この順番で)
【1】作り方=クローズドの「真ん中の音」を1オクターブ上げる
言葉の整理から。クローズドボイシング=1オクターブ以内に音が配置されたもの、オープンボイシング=1オクターブ以上にハーモニーが広がったもの。クローズドのトライアドは、ドミソ・ミソド・ソドミの3つ(3つの転回)。これをオープンにするには、真ん中の音を1オクターブ上げると考えます。ドミソなら真ん中のミを上げて、下からド・ソ・ミ。逆に「下げる」と考える人もいますが、結果は同じなので分かりやすい方で。
この図の要点:3音のうち真ん中(3度)だけが1オクターブ上へ。音の名前は変わらず、並びが「開く」だけ。これを3つの転回形(ドミソ/ミソド/ソドミ)それぞれに当てると、下から「R→5→3」「3→1→5」「5→3→1」の3種類のオープントライアドになります。
【2】メジャーの12フォーム——3つの転回×弦セット
レッスンで配っているフォーム表をもとにした12形です。図は横型(上が1弦・下が6弦)で、ルート=赤、3度=金、5度=紺。記号は R=ルート、△3=長3度、♭3=短3度、p5=完全5度。フレット番号はCで押さえた場合、形はそのまま平行移動できます。同じ転回形で弦セット違いの形が複数ありますが、複数あるフォームはどちらもよく使います。番号(フォーム①〜⑫)はこのページの便宜上の順番で、教室で決めている番号ではありません。
フォーム① 5-4-2弦・基本形(R→5→3)
Cで:5弦3fr=R/4弦5fr=p5/2弦5fr=△3
フォーム② 5-3-2弦・第1転回(3→1→5)
Cで:5弦7fr=△3/3弦5fr=R/2弦8fr=p5
フォーム③ 5-3-1弦・第2転回(5→3→1)
Cで:5弦10fr=p5/3弦9fr=△3/1弦8fr=R
フォーム④ 5-4-2弦・第1転回(3→1→5)
Cで:5弦7fr=△3/4弦10fr=R/2弦8fr=p5
フォーム⑤ 6-4-3弦・第2転回(5→3→1)
Cで:6弦3fr=p5/4弦2fr=△3/3弦5fr=R
フォーム⑥ 6-4-3弦・第1転回(3→1→5)
Cで:6弦12fr=△3/4弦10fr=R/3弦12fr=p5
フォーム⑦ 6-5-3弦・基本形(R→5→3)
Cで:6弦8fr=R/5弦10fr=p5/3弦9fr=△3
フォーム⑧ 4-3-1弦・基本形(R→5→3)
Cで:4弦10fr=R/3弦12fr=p5/1弦12fr=△3
フォーム⑨ 4-2-1弦・第1転回(3→1→5)
Cで:4弦2fr=△3/2弦1fr=R/1弦3fr=p5
フォーム⑩ 6-4-2弦・第2転回(5→3→1)
Cで:6弦3fr=p5/4弦2fr=△3/2弦1fr=R
フォーム⑪ 4-2-1弦・第2転回(5→3→1)
Cで:4弦5fr=p5/2弦5fr=△3/1弦8fr=R
フォーム⑫ 4-3-1弦・第1転回(3→1→5)
Cで:4弦2fr=△3/3弦5fr=R/1弦3fr=p5
【3】マイナー=3度を1フレット下げるだけ(11フォーム)
マイナートライアドは、メジャーの各フォームで3度(金)を1フレット下げるだけ。基本は同じ操作なので、別のフォームとして覚え直す必要はありません。ただし5-4-2弦の第1転回(フォーム④)はマイナーでは使いません。6-4-3弦の第2転回(フォーム⑤)はマイナーではトップ(ルート)を2弦に置きます(6-4-2弦の第2転回・フォーム⑩mと同じ押さえ)。下は、マイナー11フォーム(Cm)です。
フォーム①m 5-4-2弦・基本形(R→5→♭3)
Cで:5弦3fr=R/4弦5fr=p5/2弦4fr=♭3
フォーム②m 5-3-2弦・第1転回(♭3→1→5)
Cで:5弦6fr=♭3/3弦5fr=R/2弦8fr=p5
フォーム③m 5-3-1弦・第2転回(5→♭3→1)
Cで:5弦10fr=p5/3弦8fr=♭3/1弦8fr=R
フォーム⑤m 6-4-2弦・第2転回(5→♭3→1)
Cで:6弦3fr=p5/4弦1fr=♭3/2弦1fr=R
※マイナーはトップ(ルート)を2弦に置く=6-4-2弦・第2転回(フォーム⑩m)と同じ押さえ
フォーム⑥m 6-4-3弦・第1転回(♭3→1→5)
Cで:6弦11fr=♭3/4弦10fr=R/3弦12fr=p5
フォーム⑦m 6-5-3弦・基本形(R→5→♭3)
Cで:6弦8fr=R/5弦10fr=p5/3弦8fr=♭3
フォーム⑧m 4-3-1弦・基本形(R→5→♭3)
Cで:4弦10fr=R/3弦12fr=p5/1弦11fr=♭3
フォーム⑨m 4-2-1弦・第1転回(♭3→1→5)
Cで:4弦1fr=♭3/2弦1fr=R/1弦3fr=p5
フォーム⑩m 6-4-2弦・第2転回(5→♭3→1)
Cで:6弦3fr=p5/4弦1fr=♭3/2弦1fr=R
フォーム⑪m 4-2-1弦・第2転回(5→♭3→1)
Cで:4弦5fr=p5/2弦4fr=♭3/1弦8fr=R
フォーム⑫m 4-3-1弦・第1転回(♭3→1→5)
Cで:4弦1fr=♭3/3弦5fr=R/1弦3fr=p5
【4】練習の型=1コードを上下(譜例A:Aの4フォーム+スケール)
練習は1コードを上下します。譜例Aは、Aのオープントライアドを4つの形で弾き、そのままAメジャースケールで降りる型(テンポの指定はありません)。1小節目=6-5-3弦の基本形(フォーム⑦)、2小節目=5-4-2弦の第1転回(フォーム④)、3小節目=5-3-1弦の第2転回(フォーム③)、4小節目=4-3-1弦の基本形(フォーム⑧)。フォームの3音で終わらせず、必ずスケールへ繋ぐのがポイントです。
譜例A(Aで4フォーム):紺=コード、金=使うフォーム番号。各小節、3音のあと同じポジションでスケールを下降します。Cで同じことをするのが「今日の練習」です。
【5】2-5-1で使う(譜例B:Cの2-5-1)
コード進行の中では、各コードのトライアドを開いた形で置いてから、スケールへ。Dm7ではDmの5-4-2弦・基本形(フォーム①m)、G7ではGの4-3-1弦・基本形(フォーム⑧)、CM7ではCの5-4-2弦・基本形(フォーム①)と4-3-1弦・第1転回(フォーム⑫)。譜例では、7thコードでもトライアドの3音だけで作っています。
譜例B(Cの2-5-1):Dm7=フォーム①m→スケール、G7=フォーム⑧→スケール、CM7=フォーム①→スケール、4小節目はフォーム⑫→スケール。フォーム番号は上の一覧と対応しています。
【6】スタンダードで使う(譜例C・D:All The Things You Are)
アプローチノートを足すのもありです。譜例Cは、各コードのトライアドの3度を半音下から飾ってから開いた形を弾く型(Fm7・B♭m7・E♭7・A♭M7)。譜例Dは、フォームの3音を先に弾いてからアプローチを混ぜてスケールで降りる型。ルバート(テンポを固定せず自由に弾くこと)でメロディに合わせるときや、ソロ・ソロギターのアイデアとして、この響きが効きます。
譜例C(All The Things You Are その1):Fm7=フォーム①m、B♭m7=フォーム⑧m(5度は2弦で押さえる形)、E♭7=フォーム①、A♭M7=フォーム⑧を、3度(短3度)の半音下からのアプローチで飾る。D♭M7は3度からスケールで下降、G7=フォーム⑧→スケール、CM7のEで着地して休符。
譜例D(All The Things You Are その2):Fm7=フォーム①m、B♭m7=フォーム⑧m、E♭7=フォーム①、A♭M7=フォーム⑦、D♭M7=フォーム①、G7=フォーム⑦、CM7=フォーム①。E♭7以降はフォームの3音のあとにアプローチノートを混ぜてスケールで降り、最後はA→Gで終わります。
大倉の断言:順番は、オープントライアドが先。トライアドペアは後でも遅くない
「トライアドペアに関しては、オープントライアドとかその辺を勉強してからでも遅くない」。2つのトライアドを組み合わせる前に、1つのトライアドを指板の上で自由に開けるようにしておく——その土台がこのページです。
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
🎸 今日の練習(これ1つだけ)
1コードを上下する。Cで一覧の最初のフォームから順に、フォームの3音を弾いたら、そのままCメジャースケールで下降する(譜例Aの型。譜例AはAで4フォーム)。12フォームまで行ったら、同じことをCmで(3度を1フレット下げる。5-4-2弦の第1転回は飛ばし、6-4-3弦の第2転回はトップを2弦へ)。
✅ これができたら次(ドロップ2)へ
合格の目安=各フォームを覚えたら+サンプルのフレーズをソロに入れられたら。テンポの指定はありません。
- ☐ 作り方(クローズドの真ん中の音を1オクターブ上げる)を言える
- ☐ メジャー12フォームを、Cで一覧の順に押さえられる
- ☐ マイナー11フォームを、3度を1フレット下げて押さえられる
- ☐ 1コードを上下(フォームの3音→スケール)が、止まらず弾ける
- ☐ 譜例B(Cの2-5-1)を通せて、譜例C・Dのフレーズを1つ自分のソロに入れられた
- ☐ 入れたフレーズが、曲の中で音楽的に鳴っている(3音を並べただけになっていない)
└ ※最後の項目だけは、録音しても自己判定が難しい部分です。開いた響きは「バッハみたい」に聞こえることもあれば、ただ音が飛んだだけに聞こえることもあり、その境目は自分では聴き分けづらいもの。
私自身、ルバートでメロディに合わせるときは、このオープントライアドをよく使います。上のチェックの最後の一つ、サンプルのフレーズがソロの中で音楽的に鳴っているかは、聴かせてもらってからその日のカルテに書いています。
よくある質問(FAQ)
Q. オープントライアドとは何ですか?
A. トライアド(3和音)の真ん中の音を1オクターブ上げて、1オクターブ以上に広げた形です。クローズド(ドミソ)と音は同じでも響きが開きます。ギターでは現代の奏者がよく使い、レッスンで取り上げると「バッハみたい」「クラシック音楽みたい」という感想が多い形です。ただし押さえられることと、曲の中で音楽的に鳴ることは別で、そこは自分では判断しづらい部分です。
Q. テンションコードより後にやる理由は?
A. テンションの方が一般的だからです。バップスタイルで弾くだけなら、オープントライアドは知らなくても弾けます。それでも取り上げるのは、ギターとして面白く、レッスンでも好評だから。順番としては4和音の基本フォーム→テンション→オープントライアド→ドロップ2です。
Q. マイナーのフォームはどう作りますか?
A. メジャーの各フォームの3度を1フレット下げるだけです。基本は同じ操作なので、別に覚え直す必要はありません。ただし、5-4-2弦の第1転回はマイナーでは使わず、6-4-3弦の第2転回はトップを2弦に移します。このページのマイナー11フォームも同じ作り方です。押さえられても、曲の中でどの形を選ぶかは慣れが要ります。
Q. sus4やdim、augのトライアドもやりますか?
A. レッスンでは触れていますが、このページではメジャーとマイナーだけに絞っています。sus4は4度を積んだ浮遊感のある響きで、ペンタトニック系のコードワークで出会います。「こんな形もある」と知っておけば十分で、深く知りたい人はレッスンで扱います。
Q. トライアドペアとの関係は?
A. トライアドペアは、オープントライアドなどを勉強してからでも遅くありません。順番としてはこのページが先です。
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