アプローチノートのゴールは「難しいスケールを覚える」ことではありません。コードトーンに”どう向かうか”――狙った音へ、迷わず着地することです。着地音(ターゲット)はコードトーン、なかでも3度。アプローチノートは、そこへ向かっていく短い経過音です。やることはこの順で。
- ターゲット=各コードの3度を決める(前提=コードトーンで3度の位置が見えていること)
- アプローチの型を1つずつ足す:①半音上下から ②挟み込み ③ダブルクロマチック(④スケールアプローチ・⑤アプローチトライアドは応用=この時点では必須ではありません)
- 1拍目に着地する(4拍目・4拍目裏から1拍目へ向かう)――これが全型共通で最重要
- まず枯葉のコード進行で、3度ターゲットに①(半音下から)を入れる練習に落とす
やらないこと(引き算):
✕ 5つの型を最初から均等にやらない――まずは①の半音下から1つだけ。ワンパターンでもできたら勝ちです。
✕ スケールに縛られない――着地さえすれば、経過音は理屈上どの音でもいい。だから「何のスケールか」で悩まなくていい。
✕ 1拍目からアプローチを始めない――変になります。あくまで1拍目は着地の音。
このページの位置づけ:コードトーンが骨格、アプローチノートはそこへ「向かう」動きを足すもの。まだコードの形と3度が見えていないなら、先にコードトーンのマスターへ。
2回目からは「🎸 今日の練習」へ直行でOK。
なぜコードトーンの「次」がアプローチノートか(30秒だけ理屈)
ジャズらしさは、どこから来るのか。私の答えはシンプルです。落ち着くところ(コードトーン)に向かっていく音を使うから。もともとG7→Cのドミナントモーション、つまり「不安定から安定へ」という動きが魅力的で、それを他のコードにも持ち込んだのがジャズの手法です。だから着地する場所=コードトーンが先に決まっていないと、そもそも”向かう”ことができません。順番がコードトーン→アプローチなのはそのためです。
そしてターゲットは、コードトーンの中でも3度を中心に置きます。理由は次のブロックで枯葉と一緒に。なお最初の練習曲に枯葉を使うのは、コード進行がメジャーII-V-IとマイナーII-V-Iだけでできていて、しかもテーマのメロディ(特にAメロ)が3度へのアプローチでできているから。3度を狙うと自然に枯葉っぽくなります。
手順:5つのアプローチ(まず①だけでいい)
① 半音上下からアプローチ(まずこれ・いちばんシンプル)
いちばんシンプルなのが、ターゲットの半音下(または半音上)から着地する型です。ヒヤッと一瞬だけキーの外の音を鳴らし、すぐコードトーンに落とす。この「一瞬の外し→着地」がジャズの気持ちよさの正体です。まずは半音下からの1本に絞ります。
例で見ます。コードをCm7、ターゲットをその3度=E♭(♭3)に取ります(Cm7のコードトーンは C・E♭・G・B♭)。E♭の半音下はD。このD → E♭を、4拍目・4拍目裏あたりからDに入り、1拍目でE♭に着地させます。同じ弦の1フレット隣なので動きも最小です。
この図の使い方:Cm7で、3度のE♭(金・2弦4フレット)を着地音に。その半音下D(2弦3フレット)から入り、1拍目でE♭に着地させます。まずはこの2音の動きだけを、4拍目→1拍目のタイミングで繰り返す(テンポ自由・「ポーン…わー、ポーン…わー」と着地を感じて)。R・♭7・5は位置確認用の参考コードトーンです。
※ピッキングは基本、表拍はダウン・八分の裏はアップ(大倉のおすすめ)。ジャズの場合はスタイルによって全部ダウンで弾いてもかまいません。スライドで入るのは今はなし――慣れてからで十分です。
② 挟み込みアプローチ(上下から挟んで着地)
ターゲットを上と下の両方から挟んで着地させる型です。私は「ダブルアプローチ」ではなく日本語で”挟み込み”と呼んでいます(刺繍音とも別物、という整理)。典型は「上からスケールで下がってきて、下からクロマチックで上がって、ターゲットに着地する」動き。すごく使いやすい型です。上下を入れ替えた逆挟み込み(下クロマチック+上スケール)もあります。
譜例②(挟み込み・Cm7の3度ミ♭へ):上=スケールの音ファ(2弦6フレット)から下がり、下=半音下のレ(2弦3フレット)から上がって、1拍目でミ♭(2弦4フレット)に着地。2つ目は逆挟み込み=レ→ファ→ミ♭。4拍目から8分音符で2つ進み、1拍目に着地します。
進め方はシンプルです。体験レッスンでもよくやる内容で、私は①下の半音下から(クロマチック)→②全音上(スケールの音)から下がる→③応用でその2つを組み合わせて挟む——と、一気に順番に見せてしまうことが多いです。まずはワンコードで、たとえばCm7の3度(E♭)だけを相手に、半音下から→全音上から→挟んで、と着地させてみてください。そこまでできたら、あとは『枯葉』など実際の曲の3度で同じことをやっていきます。
③ ダブルクロマチックアプローチ(半音を2つ重ねる)
クロマチック(半音)を2つ続けてターゲットに向かう型です。下から2半音で上がって着地する(例:ターゲットの2つ下の音→半音上→ターゲット)/上から2半音で下がって着地する、の2方向があります。①の半音アプローチを「1歩伸ばした」バージョンと考えると入りやすい型です。
拍の合わせ方は、4拍目から8分音符で2つ進んで、1拍目に着地が基本です。向きは上から(全音上から下がってくる)を使うことが多め——スケールの音から始めた方がサウンドが良くなるからです。たとえばCm7の3度(E♭)を下からのダブルクロマチックで狙うと、開始音(D♭)がスケール外になって少し変に聞こえます。逆にCmaj7の3度(E)なら、レ(D)→レ♯→ミと半音2つで上がれるので、下からがきれいにはまります。ターゲットに応じて上下を選ぶ、と覚えてください。
譜例③(ダブルクロマチック):Cm7では上から=全音上のファ→ミ→ミ♭と半音を2つ重ねて下がる。Cmaj7のように3度がメジャーなら下から=レ→レ♯→ミ。どちらも4拍目から8分音符で2つ進み、1拍目に着地。
④ スケールアプローチ(応用)
スケール上の音を伝ってターゲットへ向かう型です。①〜③がクロマチック(半音)中心なのに対し、こちらはキーのスケールに沿って着地に向かう位置づけになります。
定義はシンプルで、ターゲットに向かってスケールを登る・下る・折り返す——それだけです。たとえばCメジャーで3度のミに着地したいなら、ドレミ(登って着地)、ソファミ(下って着地)、ラソファミ(長めに下って着地)——どれも立派なスケールアプローチです。開始音はどこでもOK。「コードトーン(ターゲット)に着地する」ことだけが条件です。
譜例④(スケールアプローチ・Cmaj7の3度ミへ):Cメジャースケールで、ドレミ(登る)/ソファミ(下る)/ラソファミ(4拍目の3連で下る)。開始音はどこでもよく、1拍目でミに着地することだけが条件です。
これを知らないことが「スケールを適当に弾いてもサウンドしにくい」原因の1つ。スケールを上下運動としてではなく、着地点への道として使う——その意識づけがこの型の役割です。
⑤ アプローチトライアド(応用)
トライアド(3和音)のまとまりを使ってターゲットへ向かう、いちばん応用寄りの型です。①〜④が単音の経過音だったのに対し、和音の形を”塊”で滑らせて着地に持っていく位置づけになります。
中身は「アプローチノートで着地したあと、トライアド(1・3・5度)の残りの音を続けて弾く」型です。たとえばCmaj7(ド・ミ・ソ)で5度のソを狙うなら——ソ♭(半音下)→ソ→ミ→ドと下がる、あるいはソ♭→ソ→ド→ミと上がる。3度から入るならミ♭→ミ→ソ→ド(ルート)。アプローチの緊張→解決に続けて和音の形をなぞるので、単音なのにコードの輪郭がくっきり聞こえます。
譜例⑤(アプローチトライアド・Cmaj7):5度のソを半音下のソ♭から狙い、着地のあとにトライアドの残り(ミ・ド)を続けます。上がる形(ソ♭→ソ→ド→ミ)と、3度から入る形(ミ♭→ミ→ソ→ド)も同じ考え方です。
大倉の断言:1拍目着地は”マスト”。そして1パターンでも勝ち
「全パターン共通で、1拍目に着地というのはもうマストです。例外はほぼありません。『4拍目→1・2・3・4・1』と、4から1に向かう感覚をまず徹底してください。そして型は欲張らなくていい。別に1パターンでいいんです。ワンパターンでもできたら勝ち。そこを足がかりにパターンを増やしていけばいい。3度で絶対迷わず弾ける、というのがまず強いんです」。
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
🎸 今日の練習(これ1つだけ)
Cm7だけで、①半音下からのアプローチを入れる:D(2弦3フレット)→ E♭(2弦4フレット・3度)。テーマは「1拍目でE♭に着地」。4拍目からDに入り、1拍目にE♭を置きます。
できたら次は、枯葉の各コードの3度に同じ①を入れていきます(まずは「3度だけ」でOK)。このページをブックマークして、明日もここから始めましょう。
✅ これができたら次(dim変換)へ
全部そろえる必要はありません。まず上の2つ(★)だけで先に進めます。型は1つでも勝ち――残りは進みながらで大丈夫。
★ ☐ 同じことをテンポあり(速さは自由)で——4拍目から1拍目への着地ができる
★ ☐ 枯葉のコード進行で、まず各コードの3度だけを(タブを見ずに)追える
☐ 枯葉の3度すべてに①(半音下から)を入れられる
☐ ②挟み込み・③ダブルクロマチックのうち、どれか1つを3度ターゲットで使える
☐ その一連が“フレーズとして”滑らかに聞こえている
チェックの最後、「フレーズとして滑らかに聞こえているか」——型は覚えられても、実践的な使い方に落とし込むのはなかなか難しいところです。レッスンでは、覚えた型を実際の曲で使えるようにするところまで一緒にやり、その日にやったことをカルテに残します。
よくある質問(FAQ)
Q. アプローチノートって、結局どんな音を使えばいいの?
A. 着地する音(ターゲット=コードトーン、特に3度)にちゃんと着地しさえすれば、途中の音は理屈上どれでも構いません。だからスケールを気にする必要はありません。長さは四分音符以下の短い経過音が目安。まずは半音下からの1音だけで十分ですが、「自然に向かって聞こえるか」は自分では判断しづらい部分です。
Q. 5つの型は全部覚えないとダメですか?
A. いいえ。まずは①半音下からの1パターンでいいです。ワンパターンでもできたら勝ちで、そこを足がかりに増やしていきます。ただし全型共通で「1拍目に着地」だけは外さないでください。全部を均等に詰め込むと、かえって手が止まりやすくなります。
Q. なぜ「1拍目に着地」がそんなに大事なんですか?
A. アプローチは「不安定から安定へ向かう」動きで、その安定=着地が1拍目に来ることで気持ちよさが出るからです。1拍目からアプローチ音で始めると変になります。「4拍目→1へ向かう」感覚が肝心ですが、これができているかはリズムの問題で、録音でも自己判定が難しいところです。
Q. なぜ最初の練習曲が枯葉なんですか?
A. コード進行がメジャーII-V-IとマイナーII-V-Iだけでできていて、しかもテーマのメロディ(特にAメロ)が3度へのアプローチでできているからです。3度を狙うと自然に枯葉っぽくなります。ただし枯葉は「覚えてしまえば終わり」になりがちなので、最終的にはコード進行を見て対応できるようにしていきます。
Q. アプローチがぎこちなく聞こえます。原因は?
A. いちばん多い原因はリズムです。4から1への着地ができていない、跳ねすぎている、音が滑らかにつながっていない・しっかり伸ばせていない、など。型そのものより、着地とリズムの問題であることがほとんどです。ただしどこが崩れているかは自分では聴き取りにくいので、一度聴かせてもらうのが確実です。
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