ギターの音を、まるごとベースの音に変えてしまう――Electro-Harmonix の BASS9(Bass Machine)に、ベーシスト不在の現場が多い大倉は発売日に飛びつきました。エレハモの「9シリーズ」(B9 Organ Machine などギターを別の楽器に変換するシリーズ)のベース版で、オクターバー(OC-5)とはまた違う「ベース化」のアプローチです。結論から正直に言うと――音色はOC-5より本物のベースに近い。でも本命の“ひとり二役”が実用にならず、今はOC-5に戻し、BASS9は手放そうとしています。それでも「試してよかった」と言える、その理由を実機レビューでお伝えします。
30秒の結論
- BASS9=ギターを“本物のベースの音”に変換(サンプリング的)。音色そのものはOC-5(オクターバー)より上。9モード搭載。
- ただしアンサンブルに混ざると音が軽く、これ単体でベースを張るのは厳しいのが現場の実感。
- 本命の SPLIT BASS(低音=ベース/高音=ギター)は、このモードだけモノフォニック=ドロップ2など複数音で濁る・破綻。境目も調整不可で結局使えませんでした。
- 安定感・ポリフォニー・レンジ調整で OC-5 が一択に。大倉は BASS9 を売却予定(評価=5段階で3)。
- それでも「完全にベースの音をシミュレートしたい」用途ならアリ。市場価格 約36,800円(サウンドハウス)。
BASS9 とは(エレハモ「9シリーズ」のベース版)
エレハモの「9シリーズ」は、ギターの音をオルガン(B9/C9)やキーボード(KEY9)など別の楽器の音に変換する人気シリーズ。BASS9 はそのベース・シミュレーター版で、ピックアップ交換も特別なギターも不要、普通のギターを繋ぐだけでベースサウンドが出せます。
モードは9種類:PRECISION/LONGHORN/FRETLESS/SYNTH/VIRTUAL/BOWED(弓弾き=アルコ)/SPLIT BASS/3:03(TB-303系)/FLIP-FLOP。このうち大倉が実際に使ったのは3つでした。
- PRECISION=一番使う:エレキベース(プレベ)に一番近く、音抜けも良くて使いやすい。まず選ぶならこれ。
- FRETLESS:良くも悪くもジャコ・パストリアスの音。フレットレス特有のうねりがそのまま出ます。
- BOWED(弓弾き=アルコ):意外な好印象。ブリッジミュートをかけると一番ジャズっぽい雰囲気になります。
逆に SYNTH(シンセベース)系は、大倉のスタイルでは使わない音としてほぼ触っていません。「全モードを使い倒す」より、自分の現場で要る音だけを見極めて使う――そういう付き合い方になる1台です。大倉も手元に導入し、ボードに組み込んで現場で検証してきました(上の写真)。
音の実力(“本物のベース音”だが、混ざると軽い)
ここが OC-5 との根本的な違いです。OC-5 はオクターバー=原音にオクターブ下を“重ねる”方式で、出てくるのは「ベースの音域が出るシンセベース寄り」の音。対して BASS9 は音色そのものを“本物のベースの音”に変換します(サンプリングのよう)。純粋な音色なら BASS9 の勝ちです。
ところが――ベースアンプで鳴らし、ドライ音をミックスしたり EQ を追い込んだりして何度も現場で試した結論は、「アンサンブルに混ざると、どうしても音が軽い」。BASS9 だけでベースを張り切るのは、正直ちょっと厳しい。これが実機で分かった一番のポイントです。
追従性・音作りのコツ(実機メモ)
- 追従性は基本問題なし(SPLIT BASS 以外はポリフォニーで出る)。速いフレーズもしっかり追従。
- レイテンシー(発音の遅れ)は多少出るので、原音を少し混ぜて立ち上がりを補うのがコツ。
- ベースアンプに繋ぐのが一番。ギターアンプに混ぜると団子になりがち=ベースアンプへ別出しが正解(OC-5と同じ)。
- ブリッジミュート+リアピックアップで弾くと、このペダルでは良い結果に。前段にコンプ/ブースターを入れて出力を持ち上げると反応が速くなります。
本命 SPLIT BASS の限界(買った理由が、使えなかった理由に)
大倉が BASS9 を買った一番の理由がこの SPLIT BASS モードでした。低音側の弦はベース、高音側はギターのまま=低音弦でベースライン、高音弦でコードやメロディという「ひとり二役」を1台で狙う、夢のような設計。実機では4弦4フレットの F# あたりから上がギターの音になります。
なぜ使えなかったのか(モノフォニックの壁)
致命的だったのは、SPLIT BASS だけがモノフォニック(単音)だったこと。他のモードはポリフォニーなのに、このモードは複数音を同時に処理できません。そのためドロップ2のようなコードを弾くと音が濁る・破綻します。6弦ルートなら「ドロップ3以上の広い音域のボイシング」でないと崩れてしまい、コードの自由が大きく制限されます。
さらに低音/高音の境目(4弦4fのF#あたり)は固定で、調整できません。ここが動かせれば一気に化けたのに……というのが正直なところ。結果、「ひとり二役」は実用にならず、今は使っていません。
結論:ベース代わりは結局 OC-5(音色はBASS9が上だが…)
音色だけなら BASS9 が上。でもOC-5 は安定感が段違い=ポリフォニーで和音が濁らず、レンジ(効かせる音域)も調整できる。「ひとり二役」を実戦で成立させられるのは OC-5 の方でした。だから大倉は OC-5 に戻り、今もそれを使い続けています(→ BOSS OC-5 レビュー)。BASS9 が勝つのは「ギターのコード役を完全に捨てて、まるごとベースの音だけが欲しい」場面に絞られます。
価格と入手性
市場価格は約36,800円(2026年6月・サウンドハウス)。エレハモの常で為替や流通により変動します。“ひとり二役”を期待して買うと SPLIT BASS の壁にがっかりするので、用途を「ベース音のシミュレート」に絞って判断するのがおすすめ。中古もよく出るので(大倉自身いま手放そうとしています)、相場を見ながら探すのも手です。
こんな人におすすめ/向かない人(総合評価:5段階で3)
大倉の総合評価は5段階で3。「買って大正解」ではないけれど、「試せてよかった」――現場で使って限界まで分かった、という意味での3です。向き/不向きがはっきりしています。
向いている人
- コード役を完全に捨てて、まるごとベースの音だけが欲しい人(音色は本物寄りで優秀)。
- フレットレス(ジャコ系)やアルコ(弓弾き)の質感をギターから出したい人。
- ルーパーにベースラインを録音して、その上で練習・作曲したい人(→ ルーパーの選び方)。
向かない人
- “ひとり二役”(低音ベース+高音コード)がやりたい人 → SPLIT BASS がモノフォニックで破綻。OC-5 を選ぶべき。
- バンドのアンサンブルでベースを張り切りたい人 → 単体だと音が軽い。
よくある質問(FAQ)
Q. BASS9 は普通のギターで使える?
A. 使えます。特別なピックアップや改造は不要で、普通のエレキギターを繋ぐだけでベースサウンドに変換されます。そこが9シリーズの売りです。
Q. どんなベースの音が出せる?
A. 9モード搭載で、プレシジョンベース系・フレットレス・シンセベース・弓弾きのコントラバス系(BOWED)・TB-303系(3:03)などが選べます。低音側だけベース化する SPLIT BASS モードも備えます。
Q. BASS9 と BOSS OC-5、ベース代わりにはどっちがいい?
A. 音色は BASS9(本物のベース音に近い)、実用性は OC-5です。OC-5 はポリフォニーで和音が濁らず、効かせる音域も調整できるので「ひとり二役」が実戦で成立します。BASS9 は本命の SPLIT BASS がモノフォニックで破綻するため、大倉は OC-5 に戻りました。OC-5 レビューも参照を。
Q. SPLIT BASS モードで「ひとり二役」はできる?
A. 仕組み上は、低音弦=ベース/高音弦=ギターに分かれます(境目は4弦4フレットのF#あたり・固定で調整不可)。ただしこのモードだけモノフォニックで、ドロップ2などのコードは濁って破綻します。実戦での「ひとり二役」は厳しく、その用途なら OC-5 が向きます。
Q. いくらで買える?買い?
A. 市場価格 約36,800円(2026年6月・サウンドハウス)です。総合評価は5段階で3。「まるごとベースの音」が欲しい用途なら良いですが、「ひとり二役」目的だと SPLIT BASS の制約でがっかりするので、用途を見極めてから。中古もよく出ます。
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