ジャズバラードが間延びする人へ|歌わないソロの原因は「埋め方」

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ミディアムやアップの曲は、だいぶ形になってきた。なのに、テンポの遅いバラードになると急にどうしていいか分からなくなる——音と音のあいだが持たず、間延びして聞こえる。埋めようと音を詰め込むと、今度は忙しないだけで少しも歌わない。これはセンスの問題ではありません。バラードには速い曲とは別の「間の作り方」と「歌わせ方」があって、多くの人はそれを知らないまま、速い曲と同じ弾き方で挑んでいるだけです。

30秒でわかる結論

バラードが間延びするのは、間を「埋め方」で解決しようとしているからです。

遅いテンポの怖さから、つい倍テンや速いフレーズで隙間を埋めてしまう。でも倍テンばかりでは、いわゆるバラードの良さは消えてしまいます。埋めるのではなく、頭の中に「歌」を持つこと。好きな演奏者のバラードをいっぱい聴いてイメージを育て、アーティキュレーション(音のニュアンス)で一音一音を歌わせる——これが順番です。まず捨てるのは「間が怖いから細かい音で埋める」というクセ。空白は敵ではありません。

取りかかる前に、2つだけ決めておくと迷いにくくなります。ひとつは。その人の習熟度で変わるので好きな曲でかまいませんが、セッションでよく演奏されるのは『My One and Only Love』。レッスンでバラードを扱うときは『Body and Soul』を取り上げることもあります。テンポはだいたい♩=60〜100のあたりです。

もうひとつはリズムの系統。バラードは大きくイーブン系スイング系(スロースイングと呼ばれるもの)の2つに分かれ、もう1つ挙げるなら3連系(ジョージア系)があります。系統によってリズムの感じ方が違うので、それによって練習が全然変わってきます。いま弾こうとしている曲がどれなのかを、先に決めておいてください。

バラードで間が持たない人の「あるある」は、だいたいこの4つ

たいてい複数当てはまります。そして「あなたのバラードが間延びして聞こえているのか、歌って聞こえているのか」は自分では聞き分けにくい——これがこの記事の最後の話です。

あるある1|間が怖くて、倍テンで埋めてしまう

こんな状態:遅いテンポで音が途切れると、間が持たない気がして、つい倍テン(倍の速さの細かいリズム)に切り替える。気づけばサビも全部倍テンで、遅い曲を弾いている感じがしない。

なぜ起きる:倍テンはバラードで実際によく使う手法です。ただ、倍テンばかりだといわゆるバラードの良さがなくなり、ミディアム・テンポのスイングに変換して演奏しているのと同じになってしまう。結局、遅い曲を弾いているつもりで中身はミディアム曲、という状態です。

回避策

倍テンは「ここぞ」で差す飛び道具として扱う。地の遅いテンポの歌を土台に置いて、盛り上げたい所だけ倍テンを混ぜる。全編ではなく、出たり入ったりでコントラストを作ると、遅い曲のまま起伏が生まれます。リズムそのものを鍛え直す入口は スウィング感とレイドバック にまとめています。

ここだけは自己判定できない:倍テンが「効いている」のか「やりすぎ」なのかのバランス。これはリズムとスウィング感の問題で、リズムが合っているかどうかの判断は自分ではできません

「バラードは倍テンで弾くことがよくあるんですけど、倍テンばっかりやっていると、いわゆるバラードの良さはなくなってしまうんです。ミディアム・テンポのスイングに変換して弾いているようなもので、あまり面白い演奏じゃないかなと思います。」

── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)

あるある2|速いフレーズ(連符)を、なんとなく速く弾いてごまかす

こんな状態:隙間を埋めようと速いフレーズを入れる。でもリズムが曖昧で、ただ速いだけ。かえってバタついて、間延びした印象になる。

なぜ起きる:連符(5連符・7連符・9連符)は、適当に速く弾くものではなく、しっかり理解して弾くものだからです。サックスの速いフレーズも適当にやっているわけではなく、ちゃんとリズムに乗っている。当たり前の話ですが、それを適当にやるとそのまま適当に聞こえてしまいます

回避策

これはちょっと上級編です。5連符・7連符・9連符を「しっかり取れる」ように、今自分が何連符を弾いているのかを感じながら練習する。メトロノームで1拍を5つ・7つに正確に割るところから。取れるようになると自由度がすごく上がって、喋るようなソロが取りやすくなります。細かいリズムの土台は 4ビートのスウィング感 と合わせて。

ここだけは自己判定できない:その連符が「リズムに乗っているか、適当になっていないか」。自分では“それっぽく”聞こえてしまい、ズレに気づきにくい部分です。

あるある3|音は合っているのに、のっぺり平坦で歌わない

こんな状態:譜面の音は外していない。なのに、のっぺり一本調子で、少しも歌って聞こえない。いわば“棒読み”のソロ。

なぜ起きる:バラードに限らず全部そうなのですが、やっぱりアーティキュレーションがすごく重要だと私は思っています。バラードは音数が少なく一音が丸見えなので、アーティキュレーション(音の入り方・切り方・強弱・伸ばし方のニュアンス)の差が、そのまま「歌っているか」の差になります。

回避策

一音ずつのニュアンスを意識する。好きな演奏のフレーズを、音符だけでなく「どう入って、どう切っているか」までコピーする。同じ音符でも、アーティキュレーション次第で歌になります。耳の使い方は 耳コピのやり方 も参考に。

ここだけは自己判定できない:自分のアーティキュレーションが本当に「歌って」聞こえているか。録音しても、自分では甘く聞いてしまいがちな部分です。

「バラードはイメージ力がすごく重要なので、好きな演奏者のバラード演奏を、いっぱい聴いておくといいですよ。」

── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)

あるある4|どう歌いたいかのイメージがなく、指だけ動いている

こんな状態:そもそも「どう歌いたいか」が自分でも分からない。覚えたフレーズをつなぐだけで、間はただの埋め草になる。

なぜ起きる:バラードはイメージ力がすごく重要だからです。頭の中に鳴っている歌がないまま弾くと、音を置く場所も間の取り方も決まらない。設計図がないから、間延びするのです。

回避策

好きな演奏者のバラードをいっぱい聴いて、イメージの材料を貯める。私が参考にしているのは、ピアノならオスカー・ピーターソンやブラッド・メルドー。間の取り方や、連符の使い方がすごくいいんです。ギターならLage Lund(ラゲ・ルンド)のバラードをコピーしたりします。実際のバラード曲で試すなら、3連系の Georgia on My MindOld Folks のような曲で。

ここだけは自己判定できない:頭のイメージが、実際の出音になっているか。イメージと出音のズレは、自分では気づきにくい——ここが一番厄介なところです。

独学でどこまでいける?——正直に線を引きます

教室のサイトだからといって、独学を否定するつもりはありません。正直に書きます。バラードのインプットと基礎練は、独学でしっかり進められます。ただ、最後に残るのが下の表の「対面でしか直せないこと」——リズムとスウィング感の判定です。

○ 独学・テキストでここまでできる

  • 好きな演奏者のバラードを“いっぱい聴く”インプット(イメージの材料集め)
  • 倍テン・連符という手法があると知る(知識のインプット)
  • 連符を“きっちり数える”基礎練(メトロノームで5・7・9連符を割る)
  • フレーズとアーティキュレーションのコピー(耳コピ・真似)

● 対面でしか直せないこと

  • 倍テンが“効いているか・やりすぎか”のバランス(リズム=自分では判断できない——ここが核です)
  • 連符が“リズムに乗っているか・適当になっていないか”
  • アーティキュレーションが“歌って”聞こえているか
  • 頭のイメージと、実際の出音とのズレ

「対面でしか直せないこと」は「頑張れば独学でもできる」項目ではなく、構造的に一人では判定できない項目です。とくにリズムとスウィング感——遅いバラードはごまかしが効かないぶん、ズレも自分では見えにくいのです。

間延びか、歌っているか。分かれ目は「対面でしか直せないこと」の4つで、倍テンのバランスも連符のリズムも、録音を聴き返すだけでは自分で判定できません。その判定はレッスンで私が聴いて行い、やった内容は振り返りとしてカルテに残しています。

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よくある質問

Q. バラードになると間延びして聞こえます。どうすればいいですか?

A. 間を「細かい音で埋める」方向で解決しようとしているのが原因のことが多いです。まず好きな演奏者のバラードをいっぱい聴いて頭に「歌」のイメージを作り、アーティキュレーション(音のニュアンス)で一音一音を歌わせる。埋めるより、空白を活かす方向で考えてください。

Q. バラードで倍テンは使わない方がいいですか?

A. 倍テン自体はバラードでよく使う有効な手法です。ただ倍テンばかりだと、いわゆるバラードの良さがなくなり、ミディアム・テンポのスイングに変換した演奏になってしまう。全編ではなく「ここぞ」で差して、コントラストを作るのがコツです。

Q. バラードで速いフレーズ(連符)を入れたいのですが、うまくいきません。

A. 連符は適当に速く弾くものではなく、しっかり理解して弾くものです。5連符・7連符・9連符を、今何連符を弾いているか感じながらしっかり取れるように練習する。ちょっと上級編ですが、取れるようになると自由度が上がって、喋るようなソロが取りやすくなります。

Q. バラードの「イメージ力」はどうやって鍛えますか?

A. とにかく好きな演奏者のバラードをいっぱい聴くことです。私が参考にしているのは、ピアノならオスカー・ピーターソンやブラッド・メルドー(間の取り方と連符の使い方)、ギターならLage Lund(ラゲ・ルンド)。聴いて貯めたイメージが、そのままソロの設計図になります。

Q. セッションでバラードはやりますか?

A. セッションではあまりやりません。時間が長くなってしまうので、人数の少ないセッション以外は少ないです。歌モノだとやることはあります。なので普段の練習は、好きな音源や実際のバラード曲でじっくり取り組むのがおすすめです。

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