先に正直に書いておきます。レイドバックは、ジャズのリズムの中でもかなり上級の、理解しにくいテーマです。「こうすればできる」という手順には落とせず、身につけるにはかなりの研究がいります。
だからこのページは、できるようになる方法を並べません。やることを入口の2つだけに絞ります。①レイドバックの正体を「円の理論」で理解する。②実際にレイドバックしている演奏をよく聴いて、モノマネする。この2つです。
レイドバックとは、スウィングの基本として起きている「音が拍のジャストより少し後ろに来る」こと。わざと作るテクニックではありません。
このページでやること・やらないこと:
○ まず円の理論で「何が起きているか」を理解する
○ レイドバックしている演奏をよく聴いて、モノマネする
✕ わざと後ろにずらして弾かない——変に意識すると、変なリズム演奏になります
✕ 前ノリ(オントップ)で突っ込まない。絶対に走らない
✕ 土台(完全ジャスト)を飛ばさない——迷ったら2・4クリックの基礎へ戻る
【1】レイドバックの正体——まず「円の理論」を理解する
スウィング(ソロの8分音符)は、よく「3連符ベース」と説明されます。でも3連符きっちりに「タッカ、タッカ」と弾くとシャッフルになってしまい、「すごいダサく」なる——実際の演奏は3連符どおりにはなっていません。では何が起きているのか。それを説明するのが、レイドバックの「円の理論」です。
1拍を、時計回りにぐるっと1周する円だと考えてください。円を3等分すると3連符です。ここで、3連符の3つ目の音(8分の裏に当たる音)を円周上に固定し、8分音符の頭を、円の中心をはさんだちょうど反対側に置きます。すると頭は、拍のてっぺん(ジャスト)より少し後ろに落ちます——これがレイドバックです。
この図の見方:裏の音(3連の3つ目)は固定のまま、頭だけが少し後ろに来る。頭と裏の間隔は8分音符のまま保たれるので、「タッカ」と跳ねるのではなく、全体が少し後ろに回った8分音符に聞こえます。どれくらい後ろが気持ちいいかは決まった数字ではなく、ミュージシャンごとに違います。
理屈を覚えた直後ほど、弾きながら「後ろに、後ろに」と操作したくなりますが、それをやると不自然なリズムになってしまいます。円の理論は理解したら、演奏中はいったん忘れる。作るのではなく、聴いて染み込ませるのが正しい道順です。
【2】土台は「完全ジャスト」——3つの乗り方と順番
ソロ演奏時のリズムは、基本的に「レイドバック」「オントップ(前ノリ)」「ジャスト」の3種類。ジャズのソロでは基本レイドバックかジャストで弾き、前ノリは基本やりません。そして絶対に走らない——これが大前提です。
順番も決まっています。悩んだら、まず完全ジャストで弾けることを目指す。ジャストという原点が安定していないうちに”後ろ”を狙っても、レイドバックではなく、ただの変なリズムに聞こえてしまいます。ジャストの土台づくり(メトロノームを2・4拍に置く練習)はクリック2・4のページにまとめてあるので、このページに来るのはその後で大丈夫です。慣れてきたら、クリックを「3連符の3つ目」で鳴らす方法が3連裏の感覚——レイドバックの住所——を掴む助けになります(同ページ【5】参照)。
【3】身につけ方は一つ——実際の演奏をよく聴いて、モノマネする
では、どうやって身につけるか。答えは理屈の反復ではなく、実際にレイドバックしている演奏をよく聴いて、モノマネすることです。スウィングの習得法は突き詰めると「音源を聴くこと、一緒に演奏すること、良いドラマーと演奏すること」——これが全てで、リズムの感じはミュージシャンごとに違うからこそ、自分が気持ちいいと思う演奏を教科書にします。
大倉の断言:真似るのはフレーズより、リズム
「リズム悪いと、フレーズ、どんな良いの弾いても意味がない。逆に言うと、リズムさえ良かったら、どんなフレーズ弾いてもかっこいいよっていう話になる」。だから「リズムを真似するってことが最も重要です」。
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
実際にコピーしてみると分かります。「めっちゃかっこいい」と思ったソロの音を拾ったら、音そのものはめちゃめちゃ普通、むしろダサい——という時もあります。かっこよく聞こえていたのは、リズムがかっこよかったからです。モノマネの狙いどころは音の並びではなく、どこに音を置いているか。短いフレーズを選んで、置き方ごと真似てください。
聴くときはドラムとベースを意識すると、リズムのことが分かってきます。ベーシストは基本ずっと四分音符を弾いていますが、置き所は人によって違いすぎるほど違う——最も前(早い)のはレイ・ブラウン系で、クリスチャン・マクブライドもオントップで乗っていきます。ポール・チェンバースはわりかしジャスト寄り、ダグ・ワトキンスはちょっと後ろ。聴き比べると、”置き所”という概念そのものが体感できます。
🕘 どれだけ深い世界か(研究が必要、の意味)
ドラムの「チーチッキ」というレガートも、3連符にするとかっこ悪い。最後の音は3連の3つ目ではなく、16分音符の4つ目だったり、5連符の5個目だったり、様々に割れます。「やっぱだいぶヨレるんですよね。それがジャズ独特の訛り方、ジャズのリズムだと思います」——ルーツはいろんな連符が混在するアフリカの音楽にあって、それを無意識に持ってきているのかな、と考えています。数字で割り切れない世界だからこそ、耳で研究する価値があります。
🎧 今日やること(弾く前に、これ1つだけ)
好きなジャズの音源を1曲選び、ドラムとベースを意識して通しで聴く。ベースの四分音符に体を預けて、その上でソロの8分音符がどれくらい後ろに乗っているかを感じてみる。
「ここのリズム、かっこいい」と思った短いフレーズを1つ選んだら、音の高さは気にせず、リズムの置き方だけをモノマネしてみてください(口ずさむだけでも効果があります)。
⚠ 弾くときに「後ろに置こう」と操作しないこと。染み込むまでは、演奏はいつもどおりジャスト狙いで大丈夫です。
私がレッスンでレイドバックを扱うのは、リズムがジャストで安定してからです。いま円のどこで音が鳴っているかは、弾いている本人にはまず分かりません。一緒に演奏して耳で確かめ、その日の気づきはカルテに残しています。
よくある質問(FAQ)
Q. レイドバックとは何ですか?
A. スウィングの基本として起きている、音が拍のジャストより少し後ろに来ることです。よく円で説明され、1拍の円の上で3連符の3つ目を固定し、そのちょうど反対側に8分音符の頭を置くとレイドバックが生まれる、と分析されます。ただしこれは後付けの分析で、実際は「そこが気持ちいいから」の感覚が先だったのだと思います。
Q. わざと後ろにずらして弾く練習をすればいいですか?
A. おすすめしません。変に意識すると、変なリズム演奏になってしまいます。円の理論で仕組みを理解したら、演奏中は操作しようとせず、実際にレイドバックしている演奏をよく聴いてモノマネするのが一番の近道です。
Q. 初心者でも取り組むべきですか?
A. かなり上級のテーマなので、急がなくて大丈夫です。先にやるのは、完全ジャストで弾けること・メトロノームを2拍4拍に置く練習です。ソロのリズムは基本レイドバックかジャストで、前ノリはジャズでは基本やりません。まず「絶対走らない」ことが先です。
Q. どうやって身につけるのですか?
A. 実際にレイドバックしている演奏をよく聴いて、モノマネすることです。リズムの感じはミュージシャンごとに違うので、ドラムとベースを意識して聴き、いいと思ったフレーズはリズムの置き方ごと真似ます。フレーズよりリズムを真似することが最も重要です。
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