エフェクターボード・電源の組み方|ジャズギタリストの実例で解説

エフェクターが2個以上になったら、ボードに組んで「現場で挿すだけ」の状態を作る――これがジャズギタリストの鉄則です。ジャズの現場はセッティング時間がほとんどなく、店に着いていきなり本番ということも珍しくありません。この記事では、教室と現場で実際に使っている2枚のボードの中身から、マルチエフェクター時代の電源問題(普通のパワーサプライでは動きません)、モバイルバッテリー運用の実測まで、現場仕様のボードの組み方を解説します。

30秒の結論

  • ボードはすのこ型(Pedaltrain)が使いやすい=配線を裏に隠せて電源も仕込める。「小さいボードに乗る分だけ」と数を縛るのがコツ。
  • マルチ/アンプシミュは普通のパワーサプライではほぼ動きません。動かすなら3A出力のWalrus Audio Canvas Power「HP」系(市場価格 約4.2万円〜)か、モバイルバッテリー
  • モバイルバッテリー運用は実測でライブ1回=残量50%消費程度=ライブ1本なら十分実用。
  • 電源ケーブルで音は本当に変わります(付属ケーブル→Free The Toneで激変した実体験あり)。
  • ゴールは「コンセントとイン/アウトを挿したら終わり」の状態で現場に持ち込むこと。
目次

ボードを組む目的は「現場の時短」

エフェクターを現場で1個ずつ出して、パッチケーブルと電源を繋いで……は時間がかかりすぎます。ジャズの共演者は基本アコースティック楽器。電気的な準備をしているのはギタリストひとりなので、長引くほど空気が重くなります(→ “浮かない”エフェクトの使い方)。

だから、配線を完璧にして完全に固定し、「電源コンセント+インプット/アウトプットだけ挿せばOK」の状態で持ち込む。ボードのセッティングはそれで完結し、あとはアンプの調整だけ。これがボードを組む最大の理由です。逆に言えば、リバーブ1個だけならボードは不要。2個以上になったら組む、が目安です。

ボード選び:すのこ型(Pedaltrain)+「乗る分だけ」縛り

ボード自体は何でもいいのですが、おすすめはPedaltrainに代表されるすのこ型。①配線を裏にうまく隠せる ②裏に電源(パワーサプライ)を仕込める――この2点で、見た目も取り回しも段違いにすっきりします。

そしてボードの本当の効用は「サイズで数を縛れる」こと。「このボードに乗る分しか使わない」と決めてエフェクターを選ぶと、機材が増殖せず、セッティングも速く、結果的に音もまとまります。大倉は教室用に Pedaltrain Metro 16、持ち運び用に Pedaltrain Nano(最小サイズ)の2枚体制です。

実例①:教室のメインボード(Pedaltrain Metro 16)

現在の教室ボードの中身を、信号順にそのまま公開します。

  • ギター → Quad Cortex Mini(アンプシミュ/マルチ)に直挿し
  • センドリターンに BOSS OC-5(オクターバー=マルチに無いレンジ機能のため外部接続。→ OC-5レビュー
  • アウトを2つに分岐 → 片方をチューナーアウトとして Polytune 3 Mini
  • PLAYTECH GPA-100(パワーアンプ)→ キャビネット
  • 電源:Strymon Ojai をボード上に設置
  • ボードの外に BOSS RC-10R(ルーパー=レッスン用。→ ルーパーの選び方

実例②:持ち運びボード(Pedaltrain Nano)とミニマムの結論

ライブ持ち出し用の Nano は現在、Quad Cortex Mini → センドリターンに OC-5 → アウトに Lee Custom の真空管バッファー → アンプというシンプル構成。ひとつ前の世代では OC-5+Strymon BigSky(リバーブ)を確定枠にして、アンプシミュ部分だけを入れ替え式(ペダルサイズの真空管プリアンプや UAFX Enigmatic など)にしていました(→ BigSky MX レビュー)。

Pedaltrain Nano に Quad Cortex Mini・BOSS OC-5・真空管バッファーを組んだ持ち運び用エフェクターボード|大倉ギター教室
現在の持ち運び用:Pedaltrain Nano の実機構成

ミニマムの結論=OC-5+BigSky+ParaEQ

「現場にちゃんとしたアンプがある」前提なら、OC-5(オクターバー)+BigSky(リバーブ)だけでほぼ事足りるのが長年の実感です。そこにEmpress ParaEQ(先頭か2番目に接続・基本はローカット)を加えた3つが、現場の微調整まで含めた大倉のミニマム解。会場ごとの「出過ぎ/足りない」はParaEQの引き算で整えます。

ちなみに数年前は、もっと多くのコンパクトを並べていました(下の写真)。機材を入れ替えながら、いまのミニマム構成にたどり着いています。「乗る分だけ」と縛ると、ボードはこうして少しずつ洗練されていきます。

数年前に大倉が使っていたジャズギター用エフェクターボードの構成(コンパクトを多めに並べていた頃)
数年前のボード(コンパクトを並べていた頃)

固定と配線のテクニック(マジックテープ・百均フック)

  • 固定はマジックテープが一番便利。ただし貼りすぎ注意=強力にくっつきすぎてレイアウト変更が大変になるので、少なめに切って貼る。熱で粘着部が溶けて弱ったら貼り直し。
  • パッチケーブル・DCケーブルはすのこの裏へ。タイラップ(結束バンド)に加えて、百均(ダイソー等)の粘着フックを裏面に並べてケーブルを這わせると驚くほど綺麗にまとまります。
  • 綺麗な配線はノイズ対策でもあります。ケーブルが団子になっているとノイズの原因に。見た目の美しさと音は繋がっています。
  • 配線に自信がなければ楽器店の専門スタッフに相談を。ボード製作のプロがいます。

すのこ型の最大の利点が、この裏面。パワーサプライそのものを固定できるので、ボードの上がすっきりします。大倉の Nano は裏に Strymon Zuma を仕込んでいて、コンセントが使える現場はこの裏の電源、取れない現場は後述のモバイルバッテリーに切り替えられる二段構えです。

Pedaltrain Nano の裏に仕込んだ Strymon Zuma パワーサプライ
Pedaltrain Nano の裏に仕込んだ電源(Strymon Zuma)

電源の選び方:マルチは「普通のパワーサプライ」で動きません

ここが現代のボード作り最大の落とし穴です。マルチエフェクターやアンプシミュレーター(Quad Cortex 等)は要求電流が大きく、コンパクト用の一般的なパワーサプライでは、ほぼ動かないと思ってください。コンパクトペダルなら500mAもあれば十分ですが、マルチ系は桁が違います。

  • 3A(3000mA)出力があれば、現行のマルチはまず動きます(3Aを超える機種はほぼ無いはず)。
  • その条件を満たす代表が Walrus Audio Canvas Power の「HP」シリーズ。最小モデルでも3A出力(9V/12V切り替え)+9V 500mA×3口を備え、ミニマムボードならこれで完結します。市場価格 約4.2万円〜と高価ですが、第一候補です。
  • ⚠同シリーズでも「HP」が付かないモデル(Canvas Power 5 等)は12V時375mA程度しか出ず、マルチは動きません。購入時は必ず「HP」表記と出力アンペアを確認してください。
  • コンパクトペダル中心なら、音がクリアな Strymon の電源(Ojai 等)が定番です。
Strymon Ojai パワーサプライ(エフェクターボード用のクリアな電源)
Strymon Ojai(コンパクト用のクリアな電源)

モバイルバッテリー運用(実測:ライブ1回で残量50%消費)

大倉の Nano ボードの電源は、いまモバイルバッテリーが主役です。構成は オヤイデ電気の「USB PDトリガーケーブル」(DC-3398USB・12V仕様)+容量10,000mAhクラスのモバイルバッテリー。USB-Cから機材用の電圧を直接引き出すケーブルで、Quad Cortex Mini を専用アダプターなしで駆動できます。実測ではライブ1本やって残量消費は50%程度=1本なら問題なし。リハーサル込みや長丁場なら、予備バッテリーかコンセント用の高出力USB充電器があると安心です(消費はセッティングでも変わります)。

  • トリガーケーブルは9V/12Vなど電圧別にラインナップが分かれています。機材のボルト数と必ず一致させること。
  • トリガーケーブルを極端に長くするとノイズが乗るという話もあるので(未検証の伝聞ですが)、短めが無難。
  • トリガーケーブルは自作キットも売られており、パーツはかなり安い。自作派には面白い領域です。
  • BOSS等の9Vコンパクトは、いっそ9V電池でも実用十分(ライブ2〜3時間なら問題なし。念のため電源は持参)。
CIOのモバイルバッテリー(USB電源)とオヤイデのUSB PDトリガーケーブルでマルチエフェクターを駆動する電源構成
モバイルバッテリー駆動:CIOのUSB電源+オヤイデのトリガーケーブル

電源ケーブルで音は変わるのか(実験した正直な答え)

「DCケーブルなんてどれも同じでしょ」と思っていた時期が大倉にもありました。実験はシンプルで、Strymon Ojai+付属の安いDCケーブルの構成から、ケーブルだけを Free The Tone のソルダーレス電源ケーブルに全交換。結果は――音を出した瞬間、クリアさと立体感が全くの別物でした。ケーブルでここまで変わるのかという衝撃は今も覚えています。

その後 オヤイデ電気製とも比較しましたが、こちらはほぼ同レベル(オヤイデ=立体感がある反面わずかに雑味、Free The Tone=より高解像度、という微差)。つまり「安物→良いケーブル」の差は巨大、「良いケーブル同士」の差は小さい。効果は、デジタル機材よりもアナログ系、特に歪みペダルで出やすい印象です。

電源まわりの失敗談(全部やりました)

  • コンセントが遠くて届かない:現場あるある筆頭。以来、延長ケーブルはどの現場にも必ず持参しています。
  • 会場のノイズ:ライブハウスによっては電源由来のノイズが酷いことも。原因切り分けのためにも自分の配線は普段から綺麗に。
  • 断線・通電不良:ケーブル類は消耗品。日常的な点検がライブ前の保険になります。
  • アンプやパワーサプライの電源ケーブル(コンセント側)を忘れる:一度忘れて本番前に近所の電気屋へ走りました。これは本当にみんなやらかすので(現場に忘れ物のケーブルが溜まっていくほど)、チェックリスト化をおすすめします。

こんな人におすすめ

  • エフェクターが2個以上になって、毎回のセッティングが面倒になってきた人。
  • マルチ/アンプシミュ導入で電源に悩んでいる人(パワーサプライで動かない!という人)。
  • 電源まわりをモバイルバッテリーで身軽にしたい人。
  • セッションやライブでセッティングを最速で終わらせたい人。

よくある質問(FAQ)

Q. エフェクターは何個からボードに組むべき?

A. 2個以上になったら組む価値があります。リバーブ1個だけならボードは不要です。「小さいボードに乗る分だけ使う」と数を縛ると、機材選びも音もまとまります。

Q. すのこ型とケース一体型、どっちがいい?

A. すのこ型(Pedaltrain等)をすすめます。配線を裏に隠せて、パワーサプライも裏に仕込めるので、見た目も取り回しもすっきりします。綺麗な配線はノイズ対策にもなります。

Q. マルチエフェクターが動くパワーサプライは?

A. 3A(3000mA)出力のあるものを選んでください。代表は Walrus Audio Canvas Power の「HP」シリーズです。一般的なコンパクト用パワーサプライ(500mA程度)ではマルチやアンプシミュはほぼ動きません。同シリーズでもHPの付かないモデルは容量不足なので要注意です。

Q. モバイルバッテリーでエフェクターは動かせる?

A. 動かせます。USB PDトリガーケーブル(USB-Cから9V/12V等を引き出すケーブル。機材のボルト数と一致させること)を使えば、Quad Cortex Mini クラスでも駆動可能。実測ではライブ1本で10,000mAhクラスの残量50%程度の消費でした。コンセントの無いステージでも身軽に演奏できます。

Q. 電源ケーブル(DCケーブル)で音は本当に変わる?

A. 変わります。付属の安いケーブルから Free The Tone のソルダーレスケーブルに全交換したところ、クリアさと立体感が別物になりました。ただし良いケーブル同士(Free The Tone と オヤイデ等)の差はわずか。効果はアナログ系、特に歪みペダルで出やすい印象です。

Q. 現場で素早くセッティングするコツは?

A. 家で配線を完璧にして完全に固定し、「電源コンセントとイン/アウトだけ挿せばOK」の状態で持ち込むことです。あとはアンプの調整だけ。延長ケーブルと、アンプ/サプライの電源ケーブルの忘れ物チェックもお忘れなく。

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