禁断のギター、Nacho Guitars(ナチョギター)のレビューです。状態のいい中古を見つけて購入してから約5年。手を加えながら使い続けての結論は変わりません――最高のギターです。この記事では特徴・個体差・値段・Julian Lageの使用状況に加えて、5年使ったからこそ言える本音(ノイズの話・値上がりの現実)まで正直に書きます。
30秒の結論
- 一言でいうと「オールドのテレキャスター以上に、オールドのテレ」。図太く芯のある50年代ブラックガードの鳴りがします。
- 弱い音は弱く、強い音は強く――演奏者の技量がそのまま出る、圧倒的な表現力が最大の魅力。
- 個体差は大きいがハズレは無い印象(10本近く弾いた経験から)。
- 価格は新品 約148.5万円(高騰中・私の購入時の定価は約93万円でした)。本物のブラックガード(500万円超)を考えれば高すぎはしません。
- 正直な弱点=素直すぎてノイズまで拾う。これは後述します。
購入後に行った改造点
- ピックアップを Ron Ellis に交換――詳しくは交換レビュー記事へ。やはりロン・エリスは最強でした(テレなのにセミアコみたいな鳴りになります)。
- ネックプレートを Glendale製 The “Raw-Deal” Fat Neck Plate に変更――倍音感が増して、よりFATな印象になりました。
今後の構想としては、ブリッジ周りのパーツをいろいろ試すこと。そして最近真剣に考えているのがフロントのP-90化です。Julian Lage も自身のテレにP-90フロントを載せていて、P-90の音がこのギターに乗ったら……と妄想しています。実行したら追記します。
ナチョギターの特徴(5年弾いての印象)
- 音が太い
- レリック具合が絶妙
- 演奏性も良い
- 軽め
- ニュアンスの表現力
- 購入したギターの写真集付き
極太のトーン
一般的なテレキャスターの印象は「クリーンで単音を弾くと、か細くチャキチャキ」だと思います。しかし本当に状態のいいオールドのテレキャスターは、図太く芯のはっきりした音がします。ナチョギターはまさにこの「オールドのいいテレ」の鳴り方。クリーンで太い音が出るので、ジャズを弾いてもいい感じです。
絶妙のレリック具合
ナチョ氏が所有する多数の実物ブラックガードをモチーフに、レリック加工が施されています。不自然さは一切なく、質感や触り心地まで再現されています。
演奏性(レプリカであることの強み)
本物のオールドは多かれ少なかれ傷んだ部品の交換が必要になりますが、部品をひとつ替えるだけで市場価値がガクッと落ちるため、簡単には手を入れられません。ナチョギターはあくまで「新品のレプリカ」なので信頼性が高く、パーツ交換も気軽。フレットの仕上げも丁寧で、オリジナルの細く低いフレットではなく、プレイアビリティを考慮したミディアム・ジャンボが採用されています。
重量=3kg前後
現代のテレキャスターに比べて軽めの個体が多く、ほとんどが3kg前後に仕上がっています。ナチョ氏いわく「よく鳴るオールド楽器は軽いものが多い」とのこと。長時間弾いても疲れにくいのは実用上も大きなメリットです。
圧倒的な表現力(購入の決め手)
これがナチョギター一番の特徴で、購入の決め手でした。弱い音は弱く、強い音は強く、しっかり反応してくれる。ごまかしが効かない、演奏者の技量がそのまま出るギターです。
購入したギターの「写真集」付き
個人的にすごくポイントが高いのがこれ。購入すると謎のUSBメモリが付いてきて、中には自分のギターのクオリティの高い写真データが入っています(この記事の写真もそのデータです)。こんなものを同梱するメーカーを他に知りません。ナチョさんのギター愛が溢れています。
個体差について――同じ鳴りの個体は無い、でもハズレも無い
意図したものかは不明ですが、本物のオールドに個体差が大きいのと同じように、ナチョギターにもかなりの個体差があります。私はこれまで10本近く弾いてきましたが、同じ鳴り方をする個体はありませんでした。そして、どれも素晴らしい鳴り方で、ハズレは存在しない印象です。
「個性が違う楽器」と表現するのが正しいと思います。ちょっと図太い声の子だったり、少しかすれた声だったり――人の声の違いに似ています。だからこそ、可能なら弾き比べて「自分の好きな声」の個体を選ぶのが理想です。
ブラックガード期と、生みの親 Nacho Banos
ナチョギターは、テレキャスターの「ブラックガード期」と呼ばれる1950〜52年のフェンダーを忠実に再現した楽器です。この時期のテレは特に人気が高く、高値で取引されることで有名です。
作っているのはスペインの Nacho Banos(ナチョ・バニョス)氏。現在は3〜4人ほどの職人とともに製作しているようです。本人はもともとブラックガードのコレクターで、ブラックガードの写真集・データブックを出版しているほどの人物。「オールドと全く同じレプリカを作れば同じ音が出る」という信念のもと、徹底的に忠実な再現を続けています。
使用ピックアップ:初期はRon Ellis、現在はオリジナル
現在の個体にはオリジナルのピックアップが使われていますが、初期の個体には Ron Ellis が標準搭載されていました。Ron Ellis はピックアップだけで軽く10万円以上するので、初期物を見つけたら即買いレベルだと思います。とはいえ現行オリジナルPUもすごいクオリティなので、実際に音を聴いて判断すれば十分です(私は結局Ron Ellisに交換しましたが)。
シリアルナンバーの考察
私の個体はブリッジ部分に「#0128」と刻まれています。何本かで検証した結果、これはシリアルではなくナチョギターの商品番号のようなもの、もしくは元になったブラックガードのシリアルではないかと予想しています。最近日本に入ってくる個体でも100番以下が多く、製造順のシリアルと捉えるのは無理があります。公式サイトに記述はありませんが、ほぼ正解だと確信しています。
ナチョギターの値段(高騰しています)
新品の国内販売価格:約148.5万円(1,485,000円)
びっくりする価格設定ですが、クオリティを考えれば決して高すぎではありません。本物のブラックガードは状態が良ければ500万円超で取引されています。ちなみに私が購入した頃の定価は約93万円でした。この5年で50万円以上の値上がりです(為替と人気を考えると、下がる材料が見当たらないのが正直なところ)。
中古:約100万円前後(私も中古で買いました)
中古はあまり見かけませんが、たまに出ます。相場はおよそ100万円程度。新品が150万円近くなった今は相対的なお得感も増していますが、ここまで来たら値段にとらわれず、弾き比べて好みの個体を選ぶのが正解です。実は私の個体も、状態のいい中古を見つけて購入したもの。高価格帯の中古はしっかりした店で買えば怖くありません(→中古ギターの選び方)。
使用アーティスト:Julian Lage
ジャズギタリストの Julian Lage(ジュリアン・ラージ)が使用しています。本人はオリジナルのブラックガードも所有していますが、本物は盗難リスクがあるため、安全な大きいステージではオリジナル、日々のライブではナチョギターと使い分けているようです。ロゴさえ見なければ、どちらを弾いているか全く見分けがつきません。
5年使った正直な現在地(2026年追記)
最後に、5年弾いてきた本音を。「今でも最高のギター」という評価は1ミリも揺らいでいません。そのうえで、正直に2つ。
ひとつは、ナチョは「一番素直な音」がするギター、ゆえに素直すぎてノイズまで拾うこと。他のギターに比べるとノイズが出やすく、環境によっては気になります。これは欠陥ではなく「何も足さず何も引かない」性格の裏返しなのですが、知らずに買うと戸惑うはずなので書いておきます。
もうひとつは私自身の変化で、最近はソリッドギター自体を弾く頻度が減っています(箱物やヘッドレスの出番が増えました)。値上がりした今、「そろそろ売り時かな」と頭をよぎる日もある――それでも手放していないのは、弾くたびに「やっぱり最高やな」と思わされるからです。いいソリッドギターを探している人には、一度でいいから弾いてみてほしい1本です。
よくある質問(FAQ)
Q. Nacho Guitars とは?
A. スペインの Nacho Banos 氏が中心となって製作する、1950〜52年「ブラックガード期」のフェンダー・テレキャスターを忠実に再現したレプリカです。本人はブラックガードのコレクターで、写真集・データブックも出版している研究家でもあります。
Q. 値段はいくら?
A. 新品の国内価格は約148.5万円(1,485,000円)(高騰中。筆者購入時の定価は約93万円でした)。中古は約100万円前後でたまに出ます。本物のブラックガード(500万円超)と比べれば、クオリティに対して高すぎる価格ではありません。
Q. 個体差はある?ハズレを引かない?
A. オールド同様、個体差はかなりあります。ただし10本近く弾いた経験ではハズレは存在しない印象で、「個性の違い」と呼ぶべきものでした。可能なら弾き比べて、好みの声の個体を選ぶのが理想です。
Q. ジャズに使える?
A. 使えます。オールドのいいテレ特有の図太く芯のあるクリーンなので、ジャズでも全く問題ありません。Julian Lage が日々のライブで使用していることでも有名です(大事な現場ではオリジナルのブラックガードと使い分け)。
Q. 弱点はない?
A. 素直すぎてノイズまで拾うことです。音を一切脚色しない性格の裏返しで、他のギターよりノイズが出やすい環境があります。これを理解した上でなら、表現力は本当に唯一無二です。
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このナチョギター、教室で実際に弾けます
記事の個体(Ron Ellis搭載)は大阪・西区(南堀江・桜川)の教室にあります。「100万超のテレって何が違うの?」が気になる方は、レッスンで実際に音を確かめてください。ギター選び・購入相談(楽器店への同行も)歓迎です。