ジャズギターの先生というと、生まれつき耳がよくて、なんでもパッと弾けてしまう人——そんなイメージがあるかもしれません。大倉は、その逆でした。最初はジャズの良さがまったく分からず、初めての仕事も散々。パッとできる人間ではなかったからこそ、遠回りしながら覚えました。このページは、なぜその大倉がいまジャズギターを教えているのか、という話です。
大倉がジャズギターを教えているのは、自分が「才能で弾けた人間」ではないからです。
最初はジョー・パスの良さすら分からず、初仕事も失敗続き。パッと弾ける天才肌ではなく、つまづきながら遠回りして身につけた——だから、生徒さんがどこで詰まるかが自分ごととして分かります。「パッと弾けた人にしか分からない教え方」は、ここにはありません。凡人が凡人の言葉で、乗り越えた過程ごとお伝えします。
1|「どこがええねんこれ」——ジャズの良さが分からなかった
大倉のスタートは、ジャズではありません。最初は普通にロック、それからメタルなど色々やって、その後はR&Bやファンク系。ジャズは、ずっと後です。
きっかけは、トモ藤田さんがジョー・パス(Joe Pass)のことをよく話していたこと。「ジョー・パスとは何なのか」というところから入っていきました。そこで名盤とされる『ヴァーチュオーゾ(Virtuoso)』を聴いてみた——のですが、正直な感想は「どこがええねんこれ」。まったく訳が分かりませんでした。
転機は、その後に聴いたチック・コリア(Chick Corea)の『スペイン(Spain)』。これで一気に目が覚めて、そこからハマって、どんどん深掘りしてのめり込んでいきました。ジャズは、良さが後から分かる音楽です。最初にピンと来なくても、それはごく普通のこと。今まさに「ジャズってよく分からない」と感じている人ほど、大倉の入り口に近いところにいます。
2|初仕事は結婚式。散々だった
大倉は、大阪音大のジャズ科に進むことを決めてジャズを本格的に始めました。始めたのは音大に行く直前くらい。そして、運よく先輩の紹介で、いきなり初めての仕事をやることになります。それが、結婚式の演奏でした。
はっきり言って、上手くいきませんでした。今思えば選曲からしてあかんことをいっぱいやっていて、結婚式で『テネシー・ワルツ(Tennessee Waltz)』や『ユーヴ・チェンジド(You’ve Changed)』をやったりしていた。「ギターの音が大きい」と言われても、その時は何が問題なのか全然分かっていなかった。
それでも、落ち込んだというよりは「もっと上手くなりたい」——初心者の頃は、ただそれだけでした。いきなり現場に出たことが、逆にすごく上達につながった。失敗は、遠回りに見えて近道でもある。この感覚が、いまの教え方のベースになっています。
大倉の断言
自分は、他のミュージシャンがパッとできたことができなかった、いわゆる凡人に近い人間です。だから、生徒さんがつまづくポイントが自分と近い。それをなんとか乗り越えてきた過程ごと、教えられます。
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
3|「凡人」だから、教えられる
大倉は、著名なミュージシャンや大先輩に「これどうやっているんですか」「どうやったらそんなことできるんですか」と、よく質問をぶつけてきました。返ってくる答えは、だいたい「わからん」。あるいは「いや聞いたらわかるやん」と、すごく抽象的な話をされる。
一流のプレイヤーは、どちらかというと天才肌が多い。努力はもちろんしていますが、つまづくポイントが普通の人と違います。だから、なぜできないのかが本人にも分かりにくい。大倉は逆で、他のミュージシャンがパッとできたことができず、すごく苦労してきた。たとえばリズム感が悪く、クリックを2・4拍に合わせて演奏できるようになるまで1年以上かかった——いまのレッスンでクリック2・4の練習を重視しているのは、この経験があるからです。できなかったポイントが、一般の生徒さんとすごく近いのです。
それをなんとかできるようにしようと試行錯誤してきた結果、教えることができるようになった。プレイヤーとしてもちゃんと弾けるので、「どう乗り越えたか」の過程まで言葉にできる——これが、教えることを中心にやっている講師の強みです。どちらに習うのがいいかは、段階によります。
● 教えるのが専門の講師に習うと
- できなかったポイントが生徒さんと近い
- 「どう伝えたら分かるか」を日々メソッドとして研究している
- 乗り越えた過程ごと言葉で説明できる
- つまづいている今を抜けるのに向いている
○ 天才肌のプレイヤーに習うと
- 一緒に演奏してもらえること自体が最大の財産になる
- 「聞いたら分かる」タイプが多く、つまづく所が普通と違う
- 手取り足取りではなく、見て覚える系の昔気質の職人イメージ——これがいい時もある
- ある程度弾けるようになってからが向いている
どちらが上、という話ではありません。段階が違うだけです。ちなみに大倉自身も完全な独学ではなく、要所要所で必ず誰かに習ってきました。独学の限界については 「独学でどこまでいけるか」 にまとめています。
4|いま、演奏より教室を選んでいる理由
大倉は若い頃、演奏の仕事を中心にやっていました。ライブ、結婚式やホテルの営業、豪華客船やスキー場での泊まり込みの仕事——お金の面では相当苦労しましたが、普段は絶対に経験できないことをたくさんさせてもらいました。ジャズを通じて得たものは、「何にも代えがたい」。人脈も友達もでき、「ジャズがなかったらそんなこともないし、人生豊かになった」と大倉は言います。
いまは、ギター教室の運営が8〜9割。演奏の仕事はほとんどしていません。理由はシンプルで、教えているときが楽しいからです。とくに嬉しいのは明確で、ひと言のアドバイスで、生徒さんが急に化ける瞬間。「このアドリブこうやって弾いたらすごい上手いこと行くよ」と伝えたら、その場でハマって、次に来たときには別人のように変わっている——そういう時が、たまらなく嬉しい。
自分がジャズから受け取ったものを、今度は渡す側にまわりたい。だから大倉は、演奏よりも教えることに時間を使っています。人と一緒に音を出す楽しさは、レッスンでも同じで、大倉が伴奏(コントラバスも弾けます)に回って生徒さんにギターを弾いてもらうと、雰囲気がまるで変わります。一緒に演奏する楽しさ(インタープレイ) は、一人の練習では味わえないものです。
もう一つ、大倉にはギター講師と並ぶ顔があります——コントラバス(ウッドベース)奏者としての現場です。ジャズベースを木村知之・井上陽介・北川潔の各氏に師事し、関西を中心に年間300本以上のライブをこなしてきました。小さなバーからビルボード大阪のような大型ライブスペースまで、国内外のさまざまなミュージシャンとステージを重ねてきました。リズム隊としてバンドを支えてきた経験が、いまのレッスン——ギターと生のベースで組むデュオ——につながっています。
「一番楽しいのはやっぱり人と合わせて、一緒に演奏することが一番楽しい。」
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
大倉がたまらなく嬉しいのは、ひと言で生徒さんが急に化ける、あの瞬間です。ただ、そのひと言は、その人の音を目の前で聴くまで出てきません。だからレッスンではまず弾いてもらうところから。その日にやったことは学習ページに書いて、自宅でなぞれるようにしています。
よくある質問
Q. 大倉先生はどうやってジャズギターを身につけたのですか?
A. 最初はロックやメタル、R&Bを弾いていて、徐々にジャズにのめり込み、大阪音大のジャズ科で本格的に始めました。完全な独学ではなく、音大入学前の個人レッスンや現場の先輩など、要所要所で必ず誰かに習ってきています。
Q. ジャズが最初から分からなくても大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。大倉自身、ジョー・パスの名盤『ヴァーチュオーゾ』を初めて聴いたときは「どこがええねんこれ」と全く分かりませんでした。良さが後から分かる音楽なので、最初にピンと来ないのはごく普通のことです。
Q. なぜ演奏活動より教室を中心にしているのですか?
A. 現在はギター教室の運営が8〜9割です。演奏の仕事も楽しいものでしたが、ひと言のアドバイスで生徒さんが急に化ける瞬間が何より嬉しく、いまはそこに時間を使いたいと考えているからです。
Q. 上手いプレイヤーに習うのと、教えるのが専門の講師に習うのは何が違いますか?
A. 天才肌のプレイヤーは「聞いたら分かる」タイプが多く、つまづくポイントが一般の人と違います。大倉は自分が凡人に近く苦労してきたぶん、生徒さんの詰まる場所が近く、乗り越え方を過程ごと説明できます。あとは、教える経験値が違います。ある程度弾けるようになってから一流プレイヤーに習うのは、また別の良さがあります。
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大倉ギター教室|大阪市西区南堀江(桜川駅・西大橋駅 徒歩5分/四ツ橋・JR難波も10分圏)