SNSを開くと、誰かのセッションやライブの動画・写真・投稿が流れてくる。仲間と笑いながら演奏して、演奏活動も充実していそう——それを見て、少し沈む。よく見ると、羨ましいのは演奏の上手さではありません。「あの人の方が、楽しそう」。20年レッスンをしてきて、比較で疲れている人の正体は、たいていこちらです。そしてもう一つ、SNSには別の落とし穴があります。「見ながら練習」です。この2つを分けて片づければ、比較疲れはずいぶん軽くなります。
比較疲れの正体は、たいてい「上手さ」ではなく「楽しそうさ」。だから解決は、もっと上手くなることではなく、自分も「楽しむ側」に一歩出ることです。
人のテクニックに嫉妬して悩む人は、実は少ないです。多いのは「あの人の方がセッションで楽しそう」「仲間と楽しそうにしている」という羨ましさです。ジャズは人と合わせて演奏するのが一番楽しい音楽なので、これは自然な感情——羨ましさは、あなたが本当は何をしたいかを教えてくれる矢印です。あわせて、SNSや動画を「見ながら」の練習は今日でやめてください。時間の一番の浪費になりかねず、情報過多になって正しい練習ができなくなります。
「SNSで疲れる」あるあるは、だいたいこの3つ
最初の「楽しそう」への羨ましさがいちばん多く、これは直すものではなく、行き先を教えてくれるもの——ここがこの記事の結論です。
あるある1|「あの人の方がセッションで楽しそう」で沈む
こんな状態:タイムラインに流れてくるのは、誰かのセッションやライブの動画・写真・投稿。仲間と顔を見合わせて笑いながら演奏し、演奏活動も充実していそう。演奏のレベルはむしろ気にならない。刺さるのは「自分は一人で練習しているのに、あの人は仲間と楽しそうにしている」という部分です。
なぜ起きる:ジャズは本来、人と合わせて演奏するのが一番楽しい音楽だからです。だから「楽しそうにしている姿」がいちばん羨ましく見える。私の実感でも、生徒さんで人のテクニックに嫉妬して悩む人は少ないです。比較で疲れている人の中身は、うまさの勝ち負けではなく「楽しそうさ」への羨ましさ——これが一番多いのです。
回避策
この羨ましさは、消すものではありません。「自分も人と楽しく演奏したい」という行き先を教えてくれる矢印です。だから答えはシンプルで、自分も「楽しむ側」に一歩出ること。仲間を見つける・小さくでいいのでセッションの場に出てみる。ジャズはセッション音楽なので、バンドを組まなくても、初めて会った人とその場で一緒に演奏できます。画面の中の楽しそうな誰かを眺め続けるより、隣で一緒に音を出す一人の方が、比較の霧を一気に晴らしてくれます。
「人のテクニックに嫉妬して悩む人は、実は少ないです。多いのは『あの人の方がセッションで楽しそう』——うまさの比較ではなく、楽しそうさへの羨ましさです。」
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
あるある2|SNSや動画を「見ながら」練習してしまう
こんな状態:譜面台の横にスマホ。練習の合間にSNSをチラチラ、参考のつもりで開いた動画をだらだら。気づけば練習時間の半分近く、スマホを見ていた——そんな日が続いている。
なぜ良くない:「ながら練習」は、時間の一番の浪費になる可能性があるからです。手が止まるだけではありません。次々に流れてくる奏法や理論で情報過多になり、「あれもやった方がいいのか」と迷いが増えて、正しい練習ができなくなる。SNSで落ち込む時間と、練習が進まない焦り——二重に削られます。
回避策
「見る時間」と「弾く時間」を分けること。練習中はSNSも動画も閉じる。参考動画を見たいなら、練習とは別の時間に「見るだけの時間」を取ってください。1日15分でも30分でも「毎日ちょっとでも触る」枠を作っているなら(習慣化のページ)、その貴重な枠を”ながら”で薄めないことが、いちばん簡単な上達の守り方です。
「SNSを見ながら、動画を見ながらの練習はよくない。時間の一番の浪費になる可能性があるし、情報過多になって、正しい練習ができなくなります。」
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
あるある3|分かっていても、比べて落ち込む日がある
こんな状態:「比べても仕方ない」と頭では分かっている。それでも、ふとした投稿で沈む日がある。落ち込んでいる自分にまた落ち込む、という二重ループに入ってしまう。
なぜ起きる:比較は、人がどうしてもしてしまうものだからです。特にSNS時代は、いろんなものが勝手に目に入ってきます。ゼロにはできません。だからこそ、比較そのものと戦うより、軸を自分の側に置き直す方が現実的です。
回避策
自分をしっかり持って、人と比べない。好きな音楽にまっすぐ向き合う——挫折を避けるために、私がいちばん大事にしている構えです。プロを目指さなくても、ジャズをやる意味は十分にあります。楽しんでやるのが一番。上手くならない時期は誰にでもあるので、そういう日は期待しすぎず、好きな曲を気持ちよく弾く日にしてしまって大丈夫です。
SNS比較疲れ——自分で片づく部分と、そうでない部分
比較疲れは、全部が独学で解決できるわけでも、全部が対面でないと無理なわけでもありません。正直に線を引きます。SNSとの付き合い方は自分で立て直せます。「楽しむ側に回る」ための場だけは、一人では作れません。
○ 自分で立て直せること
- 練習中はSNS・動画を閉じる(「見る時間」と「弾く時間」を分ける)
- 羨ましさを「自分も人と演奏したい」という矢印として読み替える
- 自分をしっかり持ち、人と比べない。好きな音楽にまっすぐ向き合う
- 上手くならない時期は誰にでもある、と知っておく
● 一人では手に入らないこと
- 一緒に演奏する場と仲間(羨ましさの正体はここ)
- 人と合わせるアンサンブルの感覚
- 情報過多の中での「いる・いらない」の切り分け
- いま何を練習すべきか=「まっすぐ向き合う」の向き先
「一人では手に入らないこと」に挙げたのは、頑張りが足りないからではなく、構造的に、誰かと関わらないと埋まらない項目です。羨ましさの正体が「楽しそうさ」である以上、答えは画面の中ではなく、一緒に音を出す場にあります。
一人では手に入らない側に挙げた4つのうち、私がレッスンでまず埋めにいくのは人と合わせるアンサンブルの感覚です。その日に一緒にやったことはレッスンカルテにまとめておくので、家で一人に戻ってからも、そこを確かめ直しながら練習できます。
よくある質問
Q. SNSで楽しそうなセッションの投稿を見ると落ち込みます。おかしいですか?
A. おかしくありません。むしろ一番多いパターンです。羨ましさの正体は演奏の上手さではなく「楽しそうさ」で、ジャズは人と合わせて演奏するのが一番楽しい音楽だから自然な感情です。その羨ましさは「自分も人と演奏したい」という行き先を教えてくれる矢印なので、消そうとするより、楽しむ側に一歩出る方向に使ってください。
Q. 上手い人の動画を見て焦ることもあります。テクニックの差は気にしなくていい?
A. 気にしなくて大丈夫です。ジャズは競技ではありません。難しいオルタード・テンションを使わなくても、ペンタトニックだけでかっこいいソロを弾く人はいくらでもいます。実際、テクニックへの嫉妬で悩む人は少ないです。焦りが出たら、それは「楽しそうさ」への羨ましさが形を変えたものでないか、一度見直してみてください。
Q. SNSや動画を見ながら練習するのは、そんなにダメですか?
A. よくないです。時間の一番の浪費になる可能性があります。手が止まるだけでなく、情報過多になって「あれもこれも」と迷い、正しい練習ができなくなります。「見る時間」と「弾く時間」を分けて、練習中はSNSも動画も閉じてください。参考動画は練習とは別の時間に。
Q. 「楽しむ側」に出たいですが、セッションはこわいです。
A. 多くの人がそこで止まります。ジャズはセッション音楽なので、バンドを組まなくても初めて会った人と一緒に演奏できますし、仲間ができると練習にも張りが出ます。いきなりが不安なら、教室のレッスンを入口にするのもありです。一緒に演奏する時間の中で、セッションに出る準備を進められます。
Q. それでも比べて落ち込む日は、どうすればいいですか?
A. 比較は人がどうしてもしてしまうものなので、ゼロは目指さなくて大丈夫です。軸は「自分をしっかり持って、人と比べない。好きな音楽にまっすぐ向き合う」。プロを目指さなくてもジャズをやる意味は十分にあり、楽しんでやるのが一番です。上手くならない時期は誰にでもあるので、そういう日は好きな曲を気持ちよく弾く日にしてしまいましょう。
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