コードフォームは全部を網羅しません。最初に覚えるのは「6個だけ」です。maj7・m7・7 の3種類を、5弦ルートと6弦ルートの2ヶ所で押さえる——3種 × 2ヶ所 = 6個。これだけで「もうほとんどの曲がいける」。やることはこの順番で。
- 基本6フォーム(maj7・m7・7 × 5弦ルート・6弦ルート)を反射的に押さえられるようにする
- 次に m7♭5 と dim7 を、6のフォームからの「ひと動き」で足す
- root37(ルート+3度+7度のシェル)に削る——3度と7度がコードのカラーを決める
- root37を土台に、アプローチノート/コンピングへつなぐ
やらないこと(引き算):
✕ 全コードフォームを網羅しない——6個+2個で足ります。
✕ テンション(9・11・13)はまだやらない——「あってもなくてもいい」。まず四和音の基本形。
✕ 5度は省略していい——低音で団子になるので、5度を抜いた形がむしろメインです。
✕ フォークやロックでよく使う一般的なコードフォームは、ジャズではあまり使いません。
当面の目標は「5弦・6弦ルートのフォームを反射的に弾ける」こと。C6のような6thコードが出てきたら、最初のうちはCmaj7で代用してしまって大丈夫です。
2回目からは「🎸 今日の練習」へ直行でOK。
なぜ「全フォーム網羅」より先に「6個」なのか(30秒だけ理屈)
ジャズのコードフォームには、Drop2・Drop3・トライアド・テンション入り……と膨大な種類があります。でも全部を最初に覚えるのは無理ですし、必要でもありません。曲を弾くうえで幹になるのはたった4種類の四和音——maj7・m7・7・m7♭5、これに dim7 を足した5種類です。まずこの幹を、押さえやすい2ヶ所(5弦ルート・6弦ルート)で反射的に出せるようにする。それが「弾ける曲が増える」までの最短ルートです。
もう一つ、大事な決めごとがあります。それが「ドロップボイシング」です(ジャズに限らず使われる考え方です)。ギターは指の構造上、1オクターブに音を詰めた形(クローズドボイシング)が押さえにくく、音を1つ下のオクターブに落としたドロップ系の形と相性がいい。だからジャズのコードはこの形で統一します。6弦ルート=Drop3、5弦ルート=Drop2——名前は今は覚えなくてOK。形が共通していることだけ、頭の隅に置いてください。
手順:この順番で覚える
【1】基本6フォーム — maj7・m7・7 を「2ヶ所」で
まずmaj7・m7・7の3種類を、5弦ルートと6弦ルートの2ヶ所で押さえます。合計6個。ここでは全部Cで示します(Cだけはドレミで覚えるのがおすすめ・他のキーは同じ形を平行移動)。度数の変化は連鎖で見ると覚えやすい——maj7の7度に♭を付けると7、その3度に♭を付けるとm7、です。
▼ 5弦ルート(Drop2)3つ——2弦に3度が来る
① Cmaj7 / 5弦ルート(Drop2)
構成音:C(R・5弦3fr)/G(5度・4弦5fr)/B(7度・3弦4fr)/E(3度・2弦5fr)。5弦ルート(Drop2)は2弦に3度が来るのが目印。次の②③と見比べてください——同じ形の中で7度・3度が半音ずつ下がるだけです。
② C7 / 5弦ルート(Drop2)
構成音:C(R・5弦3fr)/G(5度・4弦5fr)/B♭(♭7・3弦3fr)/E(3度・2弦5fr)。①のCmaj7から7度を半音下げただけ(3弦4fr→3fr)。
③ Cm7 / 5弦ルート(Drop2)
構成音:C(R・5弦3fr)/G(5度・4弦5fr)/B♭(♭7・3弦3fr)/E♭(♭3・2弦4fr)。②のC7からさらに3度を半音下げただけ(2弦5fr→4fr)。maj7→7→m7が同じ形の中の指1〜2本の違いだと分かります。
▼ 6弦ルート(Drop3)3つ——3弦に3度・5弦は弾かない
④ Cmaj7 / 6弦ルート(Drop3)※5弦は弾かない
構成音:C(R・6弦8fr)/B(7度・4弦9fr)/E(3度・3弦9fr)/G(5度・2弦8fr)。6弦ルート(Drop3)は3度が3弦に来るのが目印で、5弦は飛ばして弾きません。
⑤ C7 / 6弦ルート(Drop3)※5弦は弾かない
構成音:C(R・6弦8fr)/B♭(♭7・4弦8fr)/E(3度・3弦9fr)/G(5度・2弦8fr)。④のCmaj7から7度を半音下げただけ(4弦9fr→8fr)。さらに3度を半音下げれば(3弦9fr→8fr)次の⑥Cm7です。
⑥ Cm7 / 6弦ルート(Drop3)※5弦は弾かない
構成音:C(R・6弦8fr)/B♭(♭7・4弦8fr)/E♭(♭3・3弦8fr)/G(5度・2弦8fr)。6弦ルート(Drop3)は3度(ここでは♭3)が3弦に来るのが目印で、5弦は飛ばして弾きません。大倉のおすすめは「6弦を中指、残り3本は人差し指でセーハ」。薬指と小指が自由になるので、ここから薬指1本足すだけでC7に、テンションも足しやすくなります。
大倉の断言:6弦ルートは「中指ルート」がベスト
「6弦を中指で押さえて、残りの3つは全部人差し指。これのメリットは、小指と薬指が自由になること。ここから薬指を1本使うだけでm7がそのままセブンスになるし、テンションを足すのもこっちが圧倒的に有利。自由度が高いんです。人差し指を6弦に持ってくる押さえ方だと、ウォーキングベースを混ぜるときにレガートができなくなる」。ただし、もう長年ちがう押さえ方が癖になっていて直すのが大変なら、無理に直さなくてOK——時間がかかりすぎるなら、他のことをやった方がいい、というのが大倉の判断基準です。なおmaj7だけは例外で、「人差し指が6弦に来るパターンと中指が6弦のパターン、両方できた方が便利」とも述べています。
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
6枚を並べて見えてくる軸は2つ——5弦ルートは「2弦に3度」、6弦ルートは「3弦に3度」。この位置さえ体に入れば、maj7↔7↔m7 は同じ形の中で指1〜2本を動かすだけで行き来できます。まずはこの6個を、キーを変えても反射的に出せるところまで。
【2】m7♭5 と dim7 を「ひと動き」で足す
6個が入ったら、m7♭5とdim7を足します。ゼロから覚えるのではなく、すでに知っているフォームからの「ひと動き」で導くのがコツ。度数の連鎖でいうと——m7の5度を♭に下げればm7♭5、そのm7♭5の7度をもう半音下げれば(♭♭7)dim7です。
⑦ Cm7♭5 / 6弦ルート(m7から5度を♭に)※5弦は弾かない
構成音:C(R・6弦8fr)/B♭(♭7・4弦8fr)/E♭(♭3・3弦8fr)/G♭(♭5・2弦7fr)。⑥のCm7の5度G(2弦8fr)を1フレット下げてG♭にするだけ。「6弦ルートのm7♭5はこの押さえ方一択。自然に中指が6弦に来るし、それしか押さえられない」。
⑧ Cdim7 / 6弦ルート(♭♭7 = 6度の音)※5弦は弾かない
構成音:C(R・6弦8fr)/A(♭♭7・4弦7fr)/E♭(♭3・3弦8fr)/G♭(♭5・2弦7fr)。⑦のm7♭5から♭7(B♭)をもう半音下げて♭♭7(=A、6度と同じ音)にした形です。もう1つの覚え方:7thコードのルートだけ半音上げるとdim7になる(例:G7の6弦ルートを1フレット上げる→G♯dim7)。この動きで練習するのもありです。
これでmaj7・m7・7・m7♭5・dim7の5種類が揃いました。「ここにあるコードだけで、もうほとんどの曲いける。プラス、ディミニッシュ」。この5種類を5弦ルート・6弦ルートの両方で弾けるようにするのが、伴奏の土台です。
【3】root37(ルート+3度+7度)に削る — カラーは3度と7度が決める
四和音が押さえられるようになったら、次は音を削る方向へ。というのも、フォームのいちばん下に「1・5・7」と並ぶ形(5度が低音側に来る形)は、実は基本的に使いません。低音で音が濁って団子になるからです。「1個抜くだけで全然ちがう」。5度を抜いた形が、むしろメインなのです。
こうして残るのがroot37=ルート+3度+7度の3音シェル。なぜ3度と7度を残すのか——3度はコードのカラー(明るい/暗い)を決める音、7度は次のコードへ向かう音だからです。1度と5度はパワーコードで馴染みがあって耳も慣れていますが、コードの性格を決めているのは3度と7度。ここがギタリストにとってコードの一番根底にあるもので、コンピングでもこの2音を軸に使います。そしてこのroot37こそ、次に学ぶアプローチノートの「土台」になります。
⑨ C7 のroot37シェル / 5弦ルート(1・3・7の3音・2弦が空く)
構成音:C(R・5弦3fr)/E(3度・4弦2fr)/B♭(♭7・3弦3fr)。5度を省き、ルート+3度+7度の3音だけ。5弦ルートのシェルは3度が4弦に来て、2弦がぽっかり空く(○)ので、そこに9thなどのテンションを足せます。maj7なら7度を1フレット上げて3弦4fr(B)にするだけ。
【4】アプローチノート/コンピングへつなぐ
root37まで来たら、コードフォームは「弾く」ものから「使う」ものに変わります。3度と7度という2つの軸が指板のどこにあるか分かっていれば——
- アプローチノート:3度・7度という「ターゲット音」の半音上下から狙って入れる。root37はそのターゲットの地図そのものです。
- コンピング:シェルなら低音が濁らず、ベースラインやテンションを重ねる余地が生まれます。中指ルートのフォームは、その自由度がいちばん高い。
つまりこの記事のゴール(6個+2個+root37)は、それ自体が終点ではなく、次の「アプローチノート」への発射台です。フォームを丸暗記して終わりにせず、「このコードの3度と7度はここ」と即答できる状態を作っておいてください。
🗂 基本6フォーム 一覧(Cで・①〜⑥のまとめ)
この図の使い方:まず上段(5弦ルート)を左から右へ——maj7→7→m7と7度・3度が半音ずつ下がるだけ。同じことを下段(6弦ルート)で。m7♭5・dim7・root37は本文の⑦〜⑨へ。
🎸 今日の練習(これ1つだけ)
Cで maj7 → 7 → m7 を、5弦ルートで行き来する。①の図の形から、7を♭7へ、3を♭3へと指を動かすだけ。「どの指が1フレット動いたか」を口に出しながら、3つを止まらずに循環させます。
できたら明日は同じことを6弦ルート(④〜⑥の形)で。慣れたらキーをF・B♭…と動かして、同じ形を平行移動します。このページをブックマークして、明日もここから始めましょう。
✅ 到達チェック——次(アプローチノート)へは並行で進んでOK
合格は2段階——①形を覚える → ②テンポ通りに押さえられる(テンポの速さは自由)。※ここは「どれか一つできればOK」ではありません——伴奏の土台なので、上から順に積み上がっている必要があります。ただし全キーを完璧に、は求めません。まずCで反射的に、が合格ラインです。なお全部そろえてから次へ、でなくてOK——コードの形と3度の場所が見えてきたら、アプローチノートへ並行して進めます。
☐ 基本6フォーム(maj7・m7・7 × 5弦・6弦ルート)を、Cで反射的に押さえられる
☐ m7♭5・dim7を、6フォームからの「ひと動き」で導ける
☐ 各コードの3度と7度が、見ずにどの弦・どのフレットか即答できる(=root37が分かっている)
☐ root37の3音が、余計な弦を鳴らさずクリアに鳴っている
5弦ルートのmaj7→7→m7を覚えたら、実際のレッスンでは次は6弦ルートへ進みます。鳴りが多少きれいでなくても、先に進んでフォームを覚えるのが最優先——濁りは覚えたあとで一緒に直せます。進めた分はレッスンカルテに残し、家でも同じ順をたどれるようにしています。
よくある質問(FAQ)
Q. コードフォームは全部でいくつ覚えればいいですか?
A. まずは6個です。maj7・m7・7 を5弦ルートと6弦ルートの2ヶ所で、で6個。そこにm7♭5とdim7を足せば、ほとんどの曲がいけます。全フォームの網羅は必要ありません。ただし「覚えた形がクリアに鳴っているか」は自分では気づきにくく、そこは一度聴かせてもらうのが確実です。
Q. 5度は省略していいって本当ですか?
A. 本当です。むしろ、いちばん下に1・5・7と並ぶ形は低音で音が濁って団子になるので、基本的に使いません。5度を抜いてルート+3度+7度(root37)にした形がメインです。1個抜くだけで、音が全然ちがいます。ただし何を残し何を抜くかは、鳴りを聴いて判断する部分もあります。
Q. フォークやロックで覚えたコードフォームは使えませんか?
A. C7などでよく使う一般的なフォームは、ジャズではあまり使いません。ジャズでは、まずはDrop2(5弦ルート)/Drop3(6弦ルート)の共通フォームから入ります。覚える形が少なく、キーが変わっても平行移動できるのが利点です。ただし長年の癖で直すのが大変なら、無理に直さず他のことに時間を使う判断もありです。
Q. テンションコードはいつ覚えますか?
A. まだ先で大丈夫です。9・11・13といったテンションは「あってもなくてもいい」もので、まずは四和音の基本形を優先します。root37(ルート+3度+7度)のシェルは2弦などが空くのでテンションを足す余地があり、そこから自然に発展できます。順番としては基本形→root37→テンション、です。
Q. 6弦ルートの指使いは、どれが正解ですか?
A. 大倉のおすすめは「6弦を中指、残り3本は人差し指でセーハ」。小指と薬指が自由になり、そこからセブンス化・テンション追加・ウォーキングベースの混入がしやすくなります。人差し指を6弦に持ってくる押さえ方だとレガートが効かなくなります。ただし今の押さえ方が癖になっていて直すのが大変なら、無理に直さなくてもかまいません。どちらが自分に合うかは、実際の運指を見てもらうと早いです。
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