基本コード(M7・m7・7)を覚えた方が次にステップアップするのが「テンションコード」です。テンションを加えるだけで、一気にボサノバらしい洗練された響きになります。
中でも最も重要なのが6(9)(シックスナインス)。ボサノバで最も頻出するテンションコードです。この記事では6(9)を出発点に、ドミナント系テンション(♭9・♯9・13・♭13)まで、5弦ルート・6弦ルートのダイアグラム付きで解説します。
基本コードをまだ覚えていない方は、先にこちらを確認してください。
ボサノバの基本コード6選|初心者でも押さえやすいフォームを解説
執筆:大倉甲(大倉ギター教室代表・ジャズギター講師歴20年)/監修:播磨正明(ボサノバ専任講師・ギター歴40年超)
目次
テンションコードとは — 基本コードに「色」を加える
大倉 💬
テンションコードという言葉に身構えてしまう方もいると思いますが、簡単に言うとどういうものですか?
播磨先生 🎸
基本コードに「色」を加える音です。M7やm7、7thといった基本コードの上に、9th・11th・13thなどの音を足すことで、響きに深みやニュアンスが生まれます。絵で言えば、基本コードがデッサン、テンションが色付けのようなものです。
大倉 💬
基本コードだけでも曲は弾けますが、テンションを入れるとどう変わりますか?
播磨先生 🎸
一言で言うと「おしゃれになる」。ボサノバの持つ洗練された都会的な雰囲気の正体は、テンションコードの響きです。ジョビンの曲を聴いて「何でこんなに美しいんだろう」と思ったとき、その美しさの多くはテンションコードのハーモニーから来ています。
テンションコードを学ぶ前提条件
基本コード4種(M7・m7・7・dim7)のフォームが体に入っていることが前提です。基本コードを覚えた後のステップとして取り組んでください。フォームが不安定な状態でテンションに進むと、どちらも中途半端になります。
大倉ギター教室のボサノバコースでは、基本コードの定着を確認してからテンションコードに進むカリキュラムを組んでいます。
最重要テンション — 6(9) を覚えよう
大倉 💬
テンションコードの中で、最初に覚えるべきものはどれですか?
播磨先生 🎸
迷わず6(9)(シックスナインス)です。ボサノバで最も頻出するテンションコードで、M7の代わりに使ったり、曲のエンディングで使ったり、出番がとにかく多い。これだけで響きが一気に「ボサノバらしく」なります。
大倉 💬
6(9)とは何の音が入っているコードですか?
播磨先生 🎸
ルート・3rd・5th・6th・9thの5音で構成されています。M7コードの7th(長7度)を6th(長6度)に変えて、さらに9th(長9度)を加えたコード。M7より柔らかく開放的な響きになります。
5弦ルート — C6(9)
C6(9)(5弦ルート)
ルートをずらせばD6(9)、E6(9)など全キーに対応
6弦ルート — G6(9)
G6(9)(6弦ルート)
ルートをずらせばA6(9)、B6(9)など全キーに対応
播磨先生 🎸
基本コードと同じで、5弦ルートと6弦ルートの2つを覚えればルートをずらすだけで全キーに対応できます。まずはこの2つのフォームを完全に体に入れてください。
6(9)の使いどころ
M7の代わりに — 曲中のM7コードを6(9)に置き換えるだけで、ボサノバ感が格段に増す
エンディングで — 曲の最後のコードを6(9)にすると、柔らかく美しい余韻が残る
イントロで — 曲の冒頭を6(9)で始めると洗練された印象になる
ドミナント7thに付けるテンション — ♭9・♯9・13・♭13
大倉 💬
6(9)の次は何を覚えればいいですか?
播磨先生 🎸
ドミナント7thコードに付加するテンションです。7thコード(C7、G7など)はコード進行の中で「次のコードに解決する」役割を持っていますが、そこにテンションを加えることで解決感にさまざまな色彩が加わります。
5弦ルートのドミナントテンション
C7(♯9)
ブルージーで個性的な響き
C7(♭9)
ダークで緊張感のある響き
Cm7(9)
マイナーに9thを加えた柔らかく広がりのある響き
6弦ルートのドミナントテンション
G7(13)
明るく華やかな響き
G7(♭13)
哀愁を帯びた響き
播磨先生 🎸
最初から全部覚える必要はありません。曲の中で出てきたときに「これは7(♭9)だな」とわかるようになれば十分。使っているうちに体が覚えていきます。
各テンションの響きの印象
| テンション |
響きの印象 |
使用場面 |
| ♭9 |
ダーク・緊張感 |
マイナーキーへの解決 |
| ♯9 |
ブルージー・個性的 |
ジャズボサ的なアプローチ |
| 13 |
明るい・華やか |
メジャーキーへの解決 |
| ♭13 |
哀愁・切ない |
マイナー感を匂わせたい場面 |
テンションコードの使いどころ — 半音でつなげるボサノバハーモニー
大倉 💬
テンションコードを覚えたとして、実際の曲の中ではどう使うんですか?
播磨先生 🎸
ボサノバ、特にジョビンの曲に顕著なのが、テンション同士を半音でつなげる動きです。あるコードのテンションノートが、次のコードのテンションノートに半音で進行する。この「半音の連なり」がボサノバハーモニーの最大の特徴であり、ジョビンの魔法とも言われる部分です。
大倉 💬
ジャズとの違いもそこにあるんですか?
播磨先生 🎸
はい。テンションコードのボイシング自体はジャズと同じです。違うのは使い方。ジャズでもテンションは使いますが、ボサノバではコード進行の中でテンションが半音ずつ滑らかに動いていくことが非常に多い。この感覚を理解すると、「なぜこのコードの次にこのテンションが来るのか」が見えてきます。
開放弦を活用した半音のぶつかり
ボサノバのコードボイシングでは、開放弦を活かして押弦音と半音でぶつかるテンションを作ることもあります。
D/F♯
開放弦と押弦音が半音でぶつかるボイシングの例
播磨先生 🎸
この「半音のぶつかり」は理論的に説明しようとすると複雑ですが、弾いてみると「あ、この響きだ」とわかるはずです。ボサノバを聴いて「美しい」と感じるハーモニーの多くは、こうした半音の関係から生まれています。
ジョビンの半音の動きについて、さらに詳しくはこちらで解説予定です。
▶ボサノバの定番コード進行パターン5選|曲作り・アレンジにも使える
テンションコードを美しく弾くためのコツ
大倉 💬
テンションコードを押さえるのが難しいという声も聞きますが、コツはありますか?
播磨先生 🎸
テンションコードは押さえる指が多くなるため、力みやすいんです。ポイントは2つ。左手の脱力と右手の粒揃えです。
左手 — 最小限の力で押さえる
播磨先生 🎸
テンションコードは「力を入れて押さえる」のではなく、「最小限の力でちょうど音が鳴るポイント」を見つける意識が大事です。指をフレットのすぐ際(ブリッジ側)に置くと、少ない力できれいに鳴ります。
右手 — アルペジオで音の粒を揃える
播磨先生 🎸
テンションコードを弾くとき、各弦の音量がバラバラだと響きが濁ります。アルペジオ練習で4本の指(p・i・m・a)の音量バランスを揃えておくことが、テンションコードを美しく弾く土台になります。
アルペジオ練習パターン — テンションコードの粒を揃えるためにも効果的
右手の指弾きの基礎はこちらで詳しく解説しています。
▶ボサノバの指弾き基礎講座|親指と指の役割分担を覚えよう
まとめ:まず6(9)を覚えれば世界が変わる
この記事のポイント
1. テンション=基本コードに「色」を加える音 — 基本コードが完成してから取り組む
2. 6(9)が最重要 — ボサノバで最も頻出。M7の代わりやエンディングに使える
3. ドミナント系テンション — ♭9・♯9・13・♭13はそれぞれ響きの印象が異なる
4. ボサノバの特徴は半音のつながり — テンション同士が半音で進行する美しさがジョビンの魔法
5. 美しく弾くコツ — 左手の脱力+右手のアルペジオで音の粒を揃える
大倉ギター教室のボサノバコースでは、基本コードからテンションコードへの移行を、生徒さんのペースに合わせて段階的にレッスンしています。
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よくある質問(FAQ)
テンションコードは基本コードを覚えてからでないと学べませんか?
はい。基本コード(M7・m7・7)のフォームが体に入っていることが前提です。基本コードを覚えた後のステップとして取り組んでください。
6(9)はどんな場面で使いますか?
ボサノバでは曲の最後(エンディング)や、M7の代わりに使うことが非常に多いです。ボサノバで最も頻出するテンションコードで、これだけで響きが一気に洗練されます。
テンションコードが押さえにくいのですが、コツはありますか?
脱力が重要です。テンションコードは押さえる指が多いため力みやすいですが、フレットの際(ブリッジ側)に指を置くと最小限の力できれいに鳴ります。アルペジオ練習で各指の独立を鍛えることも有効です。
♭9と♯9はどう使い分けますか?
♭9はダークで緊張感のある響き、♯9はブルージーで個性的な響きです。曲の雰囲気やメロディとの関係で使い分けます。最初は曲の中で出てきたときに覚えていく形で大丈夫です。
テンションコードはジャズと同じですか?
ボイシング自体はジャズと同じです。ボサノバの特徴はテンション同士を半音でつなげる動きにあります。コード進行の中でテンションが半音ずつ滑らかに進行していく——これがジョビンに代表されるボサノバハーモニーの醍醐味です。
監修:播磨正明(はりま まさあき)
大倉ギター教室 ボサノバギター専任講師。ギター歴40年超。高校1年でギターを始め、アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽に衝撃を受けブラジル音楽に傾倒。1984年三原淑治氏に師事、1991年NYでJoe Beck氏・Rick Stone氏に師事しセッション参加。1993年LAでセルジオ・メンデス等ボサノバの名手と共演してきたJohn Pisano氏に師事。1994年より日本ボサノバギター第一人者・佐藤正美氏に師事し、大阪ライブで前座・共演を重ねる。2024年YouTubeチャンネル「Bossa Nova Guitar HARIMA」開設。
▶ YouTube:Bossa Nova Guitar HARIMA