ボサノバギターはピックではなく指で弾きます。親指(p)がベース音=リズムの要、人差し指(i)・中指(m)・薬指(a)がコードのハーモニーを担当。この「役割分担」を理解することが、ボサノバらしい演奏への第一歩です。
大倉ギター教室のボサノバ専任講師・播磨先生に、指弾きの基礎と効果的なアルペジオ練習法を教えてもらいました。大倉ギター教室のボサノバコースでも最初に取り組む内容です。
練習全体の流れを先に確認したい方は「ボサノバギターの練習は何から始める?効率的な上達ロードマップ」もあわせてどうぞ。
執筆:大倉甲(大倉ギター教室代表・ジャズギター講師歴20年)/監修:播磨正明(ボサノバ専任講師・ギター歴40年超)
目次
ボサノバの右手は「4本の指」を使う — p・i・m・aの役割
大倉 💬
ボサノバの指弾きでは右手の4本の指を使いますよね。まず名前と役割を整理してもらえますか?
播磨先生 🎸
ボサノバでは右手の指をアルファベットで呼びます。スペイン語由来の名前で、クラシックギターと同じ呼び方です。
| 記号 |
指 |
スペイン語 |
ボサノバでの役割 |
| p |
親指 |
pulgar |
ベース音(低音弦)=リズムの要 |
| i |
人差し指 |
indice |
コードのハーモニー(リズムパート) |
| m |
中指 |
medio |
コードのハーモニー(リズムパート) |
| a |
薬指 |
anular |
コードのハーモニー(メロディパートも担う) |
播磨先生 🎸
最も重要なのはp(親指)です。ボサノバはバッキングでもソロでも、親指が2拍子のリズムを刻み続けます。親指=ベース音=リズムの土台。これがボサノバの指弾きの大前提です。
大倉 💬
a(薬指)は「メロディパートも担う」とありますが?
播磨先生 🎸
a(薬指)は1弦を弾くことが多く、メロディラインを担当する場面があります。i・m(人差し指・中指)がリズムパート、a(薬指)がメロディパートという弾き分けができると、ボサノバの表現力がぐっと上がります。
大倉ギター教室のボサノバコースでは、最初のレッスンでこの4本の指の役割分担を確認するところから始めます。
右手の基本フォーム — 指の間隔と弾弦の方向
大倉 💬
右手のフォームで気をつけるべきポイントはありますか?
播磨先生 🎸
大事なポイントが2つあります。まずm(中指)とa(薬指)は指の間隔を開けず、脇を閉めること。指を開いたままだと音がバラバラになります。次に、各指を同一方向に弾弦すること。方向が揃うと粒の揃ったシャープな音色になります。
右手フォームのチェックポイント
① m・aの間隔を閉める — 指の脇をくっつけるイメージ
② 各指を同一方向に弾弦 — 方向が揃うと音の粒が揃う
③ 第3関節から動かす — 指先だけで弾くと力みやすい
④ 親指は手首付近のCM関節から動かす — ここが親指の付け根
大倉 💬
「第3関節から動かす」と「親指はCM関節から」——これ、僕も生徒さんに言うんですが、特に親指は意識するだけでミスが減りますよね。
播磨先生 🎸
そうですね。親指の付け根は実は手首のすぐ近く(CM関節)にあります。多くの人が指の途中を付け根だと思って動かしているんですが、手首付近から大きく動かす意識を持つと、無駄な力が抜けて安定します。
脱力とフォームについてさらに詳しく知りたい方はこちらもあわせてどうぞ。
▶脱力して弾く!ボサノバギターの左手・右手のフォーム改善術
親指(p)のアルアイレ — ボサノバのリズムの核
大倉 💬
親指の弾き方には「アポヤンド」と「アルアイレ」がありますよね。ボサノバではどちらがメインですか?
播磨先生 🎸
まず2つを整理しましょう。アポヤンドは弦を弾いた後にそのまま隣の弦に指を触れさせて止める奏法。太くしっかりとした音が出ます。一方、アルアイレは弾いた後に指を空中に逃がす奏法で、軽く柔らかい音色になります。
大倉 💬
ボサノバは繊細な音楽ですから、軽やかな方が合いそうですね。
播磨先生 🎸
そのとおりです。ボサノバでは親指はアルアイレがメイン。親指でベース音をアルアイレで弾くことで、ボサノバ特有の軽やかで自然なグルーヴが生まれます。アポヤンドは強調したい箇所で使い分ける程度です。
アポヤンドとアルアイレの違い
|
アルアイレ |
アポヤンド |
| 弾いた後 |
空中に逃がす |
隣の弦に触れて止まる |
| 音色 |
軽い・柔らかい |
太い・しっかり |
| ボサノバでの用途 |
親指のベース音(メイン)・i・m・aのコード弾き |
ベース音を強調したいときなど |
注意:弦を引っ張らない
親指で弦を弾くとき、弦を上に引っ張り上げるように弾く人がいますが、これはNGです。弦を引っ張ると音がバチンと汚くなり、リズムも不安定になります。
イメージは「グーをする動き」。手を握り込むように弦を押し込んで、そのまま弦を通過する。引っ張るのではなく、握り込む方向に動かすのがポイントです。
基本リズムパターン1 — p(親指)のアルアイレでベース音を軽やかに弾く
このリズムパターンの詳しい弾き方はこちらで解説しています。
▶ボサノバの基本リズムパターン3つ|右手の弾き方を譜例付きで解説
【動画】i・m・aの動かし方 — 初心者が勘違いしやすいポイント
i(人差し指)・m(中指)・a(薬指)の正しい動かし方を、大倉が実演で解説します。初心者の方が最も勘違いしやすいポイントを30秒にまとめました。
🎬 動画埋め込みエリア
YouTubeにアップ後、以下の形式で差し替えてください:
<iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/動画ID" frameborder="0" allowfullscreen></iframe>
i・m・aの動かし方|初心者が勘違いしやすいポイント(大倉)
アルペジオ練習で指を独立させる
大倉 💬
指の役割とフォームがわかったところで、具体的な練習方法を教えてもらえますか?
播磨先生 🎸
アルペジオ練習が最も効果的です。目的はp、i、m、aの4本をバランス良く独立させること。特にa(薬指)は最も動きにくい指なので、アルペジオで重点的に鍛えます。
大倉 💬
アルペジオ練習はボサノバ以外にも効果がありそうですね。
播磨先生 🎸
もちろんです。ただボサノバ特有の効果もあって、テンションコードを粒の揃った音で弾くためにもアルペジオは非常に有効です。ボサノバのコードは4〜5弦を同時に鳴らすことが多いですが、それぞれの弦の音量が揃っていないと美しく聴こえません。
アルペジオ練習パターン — p・i・m・aをバランス良く独立させる
アルペジオ練習のポイント
① p(親指)はアルアイレで — 弦を通過させて空中に逃がす。グーのイメージで握り込む方向に
② 4本の音量を揃える — 特にa(薬指)が弱くなりがちなので意識
③ ゆっくりのテンポから — 速く弾く必要はない。正確さが優先
④ 体全体で弾く意識 — 腕は鎖骨からスタート。指先だけで弾かない
爪はあり?なし? — 指弾きの音色を決める要素
大倉 💬
指弾きの話になると必ず出てくるのが「爪」の問題ですが、ボサノバでは爪を伸ばすべきですか?
播磨先生 🎸
結論から言うと、好みによります。正解はありません。爪ありならシャープで明瞭な音色、爪なしなら丸く柔らかくノイズの少ない音色になります。
大倉 💬
有名なボサノバギタリストはどうしていますか?
播磨先生 🎸
人によってバラバラです。ジョアン・ジルベルトはおそらく爪あり、ジョビンやトニーニョ・オルタはおそらく爪なし。ただ、親指は爪不要というのは私の恩師・佐藤正美先生も同意見で、クラシックの世界でも「少なくとも親指は爪いらない」という方がいます。
大倉 💬
仕事で爪を伸ばせない人もいますよね。
播磨先生 🎸
「爪を伸ばさなければボサノバは弾けない」というのは先入観です。爪なしでも十分弾けます。まずは爪の有無を気にせず、指の動かし方を身につけることを優先してください。
爪のケア方法や長さの目安について詳しくはこちらで解説しています。
▶ボサノバギターと爪の関係|右手の爪のケア方法と長さの目安
まとめ:指の役割分担を覚えることがボサノバの第一歩
この記事のポイント
① 4本の指の役割 — p=ベース音(リズムの要)、i・m=リズムパート、a=メロディも担当
② 右手フォーム — m・aの脇を閉め、同一方向に弾弦。第3関節から動かす
③ 親指のアルアイレ — 弦を通過させて空中に逃がす。「グー」のイメージで握り込む方向に。引っ張らない
④ 親指のCM関節 — 付け根は手首付近。ここから動かす意識でミスが減る
⑤ アルペジオ練習 — 4本の指を独立させ、音の粒を揃える最も効果的な練習
⑥ 爪は好み — あり・なしどちらでもOK。「伸ばさなければ弾けない」は先入観
指弾きの基礎が身についたら、次はリズムパターンの練習に進みましょう。大倉ギター教室のボサノバコースでは、生徒さんのレベルに合わせて指弾きの基礎からリズムパターンまで段階的にレッスンしています。
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よくある質問(FAQ)
ボサノバの指弾きはピックでは代用できませんか?
ボサノバは親指と3本の指を同時・独立に使うため、ピックでは再現が難しいです。指弾きが基本と考えてください。
薬指(a)が動かしにくいのですが、どうすれば良いですか?
薬指は最も独立しにくい指です。アルペジオ練習で少しずつ独立させていきましょう。無理に力を入れず、第3関節から動かすイメージが効果的です。
親指のアポヤンドとアルアイレ、どちらで弾くべきですか?
ボサノバではアルアイレ(弾いた後に指を空中に逃がす)がメインです。ボサノバ特有の軽やかなグルーヴが生まれます。アポヤンドはベース音を強調したい箇所で使い分けましょう。
クラシックギターの指弾きとボサノバの指弾きは同じですか?
基本的な指の使い方は共通していますが、ボサノバでは親指のリズムアクセントが最も重要で、クラシックとは役割の比重が異なります。
爪を伸ばせない仕事をしていますが、ボサノバの指弾きはできますか?
できます。爪なしでも柔らかく丸い音色で弾けます。ジョビンやトニーニョ・オルタも爪なしで演奏していたとされています。「爪を伸ばさなければならない」は先入観です。
監修:播磨正明(はりま まさあき)
大倉ギター教室 ボサノバギター専任講師。ギター歴40年超。高校1年でギターを始め、アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽に衝撃を受けブラジル音楽に傾倒。1984年三原淑治氏に師事、1991年NYでJoe Beck氏・Rick Stone氏に師事しセッション参加、1993年LAでJohn Pisano氏に師事。1994年より日本ボサノバギター第一人者・佐藤正美氏に師事し、大阪ライブで前座・共演を重ねる。2024年YouTubeチャンネル「Bossa Nova Guitar HARIMA」開設。
▶ YouTube:Bossa Nova Guitar HARIMA