「ギターのメンテナンスって、どこまで自分でやっていいんですか?」――教室でよく受ける質問です。答えはシンプルで、ネジで調整できるところは自分で、木を削る作業はプロへ。この線引きさえ守れば、弦高もトラスロッドも怖くありません。この記事では、私が実際にやっている調整を数値つきで公開します。
30秒の結論
- 自分でやる=弦高・トラスロッド・オクターブ・PU高さ・ネジ増し締め(+慣れればハンダの電装系も)。
- プロに任せる=ナット・フレット・ザグリなど「木を削る」作業すべて。
- 私の弦高の目安=1弦12フレットで約1mm、6弦側で1.2〜1.3mm(弦が太いほど低めに)。
- トラスロッドは一度に15〜45度まで、少しずつ。季節の変わり目(湿度・温度の急変期)が一番動きます。
- 見落としがちな本丸は湿度管理。怖いのは乾燥で、目標は50%前後です。
「自分でできる」の判断基準は3つ
基本的な調整を自分でできるようにしておくと、トラブル時や細かい追い込みをしたいときに本当に役立ちます。自分でやってよい作業の基準は次の3点です。
- ① 特殊な工具を必要としない
- ② 数回教えてもらえば(経験すれば)できる
- ③ 取り返しのつかないことになりにくい
この3つを満たすのが「ネジ系」の調整です。逆にナット・フレット・ザグリといった「木を削る」作業は、やり直しが効かないのですべてプロへ。リペアに出すときは、楽器店経由よりリペアショップでリペアマンと直接話して頼むのがおすすめです(楽器店は外注に回ることが多いです)。ちなみに私はハンダが得意なので電装系(ポット交換・ジャック緩み)も自分でやりますが、これは慣れてからで十分です。
弦高の調整(私の実値を公開)
理想の弦高は人それぞれ――なのですが、基準がないと迷子になるので私の実値を。大体のギターで、1弦の12フレット上で約1mm、6弦側で1.2〜1.3mmに調整しています。そして弦が太くなるほど低めにセットする傾向です(太い弦は振幅が小さいので低くできます。逆に細い弦で低くするとビビります)。
高め=鳴り重視、低め=弾きやすさ重視、というトレードオフなので、ここから好みで上下させてください。エレキのブリッジはほとんどがネジで調整できます。ネジの頭さえ潰さないよう気をつければ取り返しのつかないことにはならないので、積極的に触って大丈夫。不安な人は、調整前の弦高を測ってメモしてから始めましょう(元に戻せる安心感が大事です)。アコギのブリッジ(サドル)は削る作業になるので、基本は触らずプロへ。
トラスロッドの調整(怖がらなくて大丈夫、ただし少しずつ)
トラスロッドを怖がる人は多いのですが、無理な力をかけず、一度に回すのは15〜45度まで・様子を見ながら少しずつを守れば大丈夫です。私はネックの状態をほぼ真っ直ぐ(〜ごくわずかな順反り)に調整しています。「何もしていないのに弦高が変わった」場合、ほとんどはネックが動いていて、トラスロッドで解決します。
一番ネックが動くのは湿度・温度の変化が大きい時期=季節の変わり目。私はシビアなセッティングにしていることもあって、この時期は気になったらすぐ微調整できるようトラスロッドにレンチを挿しっぱなしにしているくらいです。なお、古い楽器にありがちなネックの波打ちは、ある程度まではトラスロッドでなんとかなりますが、ひどい場合は専門家に見てもらいましょう。
オクターブ調整・ピックアップの高さ・増し締め
- オクターブ調整――エレキはブリッジの調整ネジでできるので、コツさえ掴めば簡単です。アコギは調整幅が少なく難易度が高いので、なるべく新しい弦を張ることで対処するのが現実的(弦の交換時期はこちら)。
- ピックアップの高さ――エレキのみ。ドライバー1本でできるので挑戦しましょう。動かす前に、調整前のPUと弦の距離を必ず測っておくこと(元に戻せます)。3弦が巻き弦かプレーン弦かでも最適な高さが変わります。
- 各ネジの増し締め――楽器は常に振動しているので、ネジは緩みます。全ネジをチェック、特にペグのネジ。注意点は締めすぎないこと。「ちょっと物足りないかな?」くらいで十分で、締めすぎると木部がダメになります。
湿度管理――メンテの本丸はここ(特にフルアコ)
調整より大事かもしれないのが湿度管理です。怖いのは乾燥。木が割れます。私の運用はこうです。
- 冬=大型の加湿器を気合で回して、湿度50%前後(49%目標)を維持。加湿器を回しておけば、冬の乾燥はある程度回避できます。
- 夏=エアコンで一気に湿度が下がるので、正直ある程度は割り切っています。使用頻度の低いギター・気になるギターはハードケースに入れ、湿度調整剤(49%タイプ=高ければ下げ、低ければ上げてくれるもの)を入れて保管。
- ただし、シビアになりすぎないこと。湿度計とにらめっこで疲れてしまっては本末転倒です。「冬は加湿・夏はケース」くらいの運用で十分守れます。
ライブ前のチェックは「普段から弾くこと」
「ライブ前のチェック項目は?」とも聞かれますが、普段からメンテしていれば特別なことはありません。あえて挙げるなら――弦の状態(古すぎないか・切れそうにないか)/弦高/ジャックの緩み/ボリュームのガリ。結局のところ、普段から弾いていれば異変は弾いた瞬間に分かります。「弾くのがチェック」です。むしろ当日トラブルが多いのはエフェクターボード側(配線・電源)なので、足元のチェックを忘れずに。
よくある質問(FAQ)
Q. ギターのメンテナンスはどこまで自分でできる?
A. ネジで調整できる範囲=弦高・トラスロッド・オクターブ・PU高さ・増し締めは自分でできます(慣れればハンダの電装系も)。ナット・フレット・ザグリなど木を削る作業はすべてプロへ。この線引きが基準です。
Q. 弦高はどれくらいに調整すればいい?
A. 筆者の実値は1弦12フレットで約1mm・6弦側1.2〜1.3mmです。高め=鳴り重視、低め=弾きやすさ重視。弦が太いほど低めにできます。まず測って記録してから、少しずつ好みに寄せてください。
Q. トラスロッドを自分で回しても大丈夫?
A. 大丈夫です。無理な力をかけず、一度に15〜45度まで・様子を見ながら少しずつが鉄則。ネックが一番動くのは湿度・温度が急変する季節の変わり目です。波打ちなど重症は専門家へ。
Q. ギターの保管に最適な湿度は?
A. 50%前後が目標です。一番怖いのは乾燥(木が割れる)なので、冬は加湿器で50%を維持、夏は使わないギターをハードケース+湿度調整剤(49%タイプ)で保管するのが現実的な運用です。
関連記事
セッティングの追い込み、レッスンでやります
「弦高これで合ってる?」「トラスロッド、実物で教えてほしい」――大阪・西区(南堀江・桜川)の教室では、あなたのギターを持ち込んでの調整レッスンもできます。数回見れば自分でできるようになりますよ。