今回は、播磨先生が「自分はボサノバが好きなんじゃなくて、ジョビンが好きだった」と語るほどの愛情を注ぐ名曲と、大倉自身が「ボサノバアルバムとしてはナンバーワン」と断言するアルバムを、2人のギタリストの視点でご紹介します。
執筆:大倉甲(大倉ギター教室代表・ジャズギター講師歴20年)/監修:播磨正明(ボサノバ専任講師・ギター歴40年超)
トム・ジョビンとは|ボサノバを世界に広げた作曲家
美しいメロディ — 一度聴いたら忘れられない旋律の数々
独特なコード進行 — ジョビンの曲はコード進行自体が特殊で、他の作曲家とは一線を画す
半音の動き — 内声をクロマチックに動かすボイシングがジョビンのハーモニーの核心
ボサノバギターを本格的に学びたい方には、ジョビンの曲を中心としたレッスンがおすすめです。
ギタリストが聴くべきジョビンの名曲5選+α
① イパネマの娘(Garota de Ipanema)
ボサノバで最も有名な曲。1625(3625)進行やA列車で行こう的な進行も含まれ、コード進行の勉強にも最適です。サビのセクションはやや複雑ですが、まず全体を聴いて雰囲気をつかむところから始めましょう。セッションでは必ずと言っていいほど演奏される、ボサノバの代名詞です。
② Wave(ウェーブ)
ジョビンの美しいメロディが際立つ名曲。実は同じコード進行で「Tide(タイド)」という別の曲があり、全く同じコード進行なのにメロディが全然違うという、ジョビンの作曲力を象徴するエピソードがあります。セッションでもイパネマに次いで人気の高い定番曲です。
③ コルコバード(Corcovado / Quiet Nights of Quiet Stars)
穏やかなテンポとシンプルな構成で、初心者が最初に取り組みやすい曲のひとつ。静かな夜を思わせるメロディが美しく、ボサノバの「空気感」を体感できます。コード数も比較的少ないので、練習曲としてもおすすめです。
④ ジンジ(Dindi)
コード進行が非常に美しい曲です。特徴は全音下がるメジャーコードの動き。この独特の響きがジョビンらしい浮遊感と切なさを生み出しています。メロディも歌心にあふれていて、ボサノバの美しさを堪能できる1曲です。
⑤ トリステ / 悲しみ(Triste)
こちらもコード進行が非常に美しい名曲です。リディアン系のサウンドが生み出す独特の輝きが魅力で、明るさと切なさが同居する不思議な響きがあります。ジョビンのハーモニーセンスが凝縮された曲として、ぜひ聴き込んでほしい1曲です。
その他の人気名曲
| 曲名 | 聴きどころ |
|---|---|
| ワンノートサンバ(One Note Samba) | シンプルに見えて実は深い曲。ディミニッシュの隠れた使い方がある |
| 想いあふれて(Chega de Saudade / No More Blues) | ボサノバ最初期の名曲。ジョアンが歌った記念碑的作品 |
| ディサフィナード(Desafinado) | 「音痴」という意味のユーモラスなタイトル。洒落たコード進行が魅力 |
| イヌチル(Inútil Paisagem) | メロディが半音でずっと上がっていく、ジョビンの半音の魔法を体感できるマニア向けの名曲 |
ボサノバの定番コード進行について詳しくはこちらで解説しています。
▶ボサノバの定番コード進行パターン5選|曲作り・アレンジにも使える
ジョビンを堪能するおすすめアルバム5選
① Elis & Tom(エリス&トム)— 大倉の「ナンバーワン」
② Getz/Gilberto(ゲッツ/ジルベルト)— 歴史的名盤
奇跡のセッション(1963年) — アメリカのトップジャズ奏者と、ブラジルの天才クリエイターたちがNYのスタジオに集結
アストラッドの偶然の参加 — 通訳として同行していたジョアンの妻が急遽英語パートを歌唱。プロ歌手ではなかったが、その素朴でアンニュイな歌声がゲッツのサックスと奇跡的な化学反応を起こした
グラミー最優秀アルバム賞(1965年) — ビートルズを抑えて受賞。ジャズ系アルバムとして史上初の快挙
ボサノバの世界化 — この1枚がボサノバをブラジルのいちジャンルから世界のスタンダード音楽へと押し上げた
③ Wave(ウェーブ)1967年 — オガーマンとの至高のコラボ
④ Tide(タイド)— Waveと対になるもうひとつの名盤
⑤ ジョビン本人の歌唱アルバム
| No. | アルバム | 推薦者 | 聴きどころ |
|---|---|---|---|
| ① | Elis & Tom | 大倉 | ボサノバアルバムNo.1。エリスの歌唱力×ジョビンのピアノ・歌 |
| ② | Getz/Gilberto | 大倉 | グラミー最優秀アルバム賞。ボサノバを世界に広めた金字塔 |
| ③ | Wave(1967) | 播磨先生 | オガーマン編曲のオーケストラとジョビンの美しい融合 |
| ④ | Tide | 播磨先生 | Waveと対になる姉妹盤。聴き比べで作曲の凄さを実感 |
| ⑤ | ジョビン本人歌唱盤 | 播磨先生 | 上手くはないが、作曲者だからこそのニュアンスが最高 |
ジョビン以外のアーティスト・名盤についてはこちらで紹介しています。
▶ボサノバのおすすめアーティスト・名盤ガイド|ジョアンからナラ・レオンまで
ジョビンの半音の魔法|聴くときに注目すべきポイント
コードのルート(低音) — 半音ずつ下がっていく動きに注目
内声(コードの中間音) — クロマチックに動く声部を耳で追ってみる
メロディ — 半音で上がる・下がるメロディラインの美しさ
同じ曲のジョビン版とジョアン版を聴き比べる — 同じ曲でも2人のコード進行は異なることがある。ジョビンの方が半音の動きが多い
ジョビンの半音の動きについて、より詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
播磨先生のYouTubeチャンネルでも、ジョビンの楽曲を使ったレッスン動画を公開しています。
▶YouTube「Bossa Nova Guitar HARIMA」
まとめ|ジョビンを聴けばボサノバの本質が見える
Step 1:まずは『Elis & Tom』か『Getz/Gilberto』を1枚通して聴いてみる
Step 2:名曲5選の中から1曲選んで、繰り返し聴き込む
Step 3:聴くときに「半音の動き」を意識して、耳を育てる
大倉ギター教室では、播磨先生と一緒にジョビンの名曲を使ったボサノバギターレッスンを行っています。
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よくある質問(FAQ)
大倉ギター教室 ボサノバギター専任講師。ギター歴40年超。高校1年でギターを始め、アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽に衝撃を受けブラジル音楽に傾倒。1984年に三原淑治氏に師事、1991年NYでJoe Beck氏・Rick Stone氏に師事しセッション参加、1993年LAでJohn Pisano氏に師事し「ブラジル音楽のハーモニーエッセンス」を習得。1994年に日本ボサノバギター第一人者・佐藤正美氏に師事し、大阪ライブで前座・共演を重ねる。2024年よりYouTubeチャンネルを開設。
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