ジャズギターの音作り・アンプEQ完全ガイド|「抜けない・モコモコ」を直す

「自宅やヘッドホンではあんなに甘くていい音だったのに、スタジオでバンドに合わせた瞬間、ベースやドラムにかき消されて自分の音が聞こえない」――ジャズギターを始めた人が、ほぼ全員ぶつかる壁です。焦ってアンプのボリュームを上げると、今度は低音が回って「ブーミーでうるさい」とメンバーに苦い顔をされる。これは誰もが一度は通る“音作りの罠”です。

「いいアンプを買ったのに、バンドで音が埋もれる」「なんだかモコモコする」――教室でもいちばん多い悩みです。結論から書きます。基本は「トレブルを上げて、ベースを下げる」。多くの人が逆にやっているので、まずここを直すだけで激変します。

この記事は、ジャズに合うアンプのEQ・音作りを悩み別にまとめたものです。ライブで何度も失敗しながらたどり着いた、現場で実際に使っているセッティングを公開します。アンプ選びそのものは ジャズギターアンプおすすめ(選び方ハブ) をどうぞ。

30秒の結論

  • 基本は「トレブル上げ・ベース下げ」。皆さんがやりがちな「トレブル絞り・ベース上げ」はブーミーになる逆効果
  • 音が埋もれる・抜けない→トレブルを5前後まで上げる。「出しすぎ」ぐらいでちょうど抜ける。
  • モコモコ・ブーミー→ベースをほぼ0に。アンプで足りなければパライコ(パラメトリックEQ)で100Hz以下をカット
  • 音が細い・カリカリになったら、アンプではなくギター本体のトーンやブースターで整える。
症状 まずやるEQ操作 補足
音が埋もれる・抜けてこない トレブルを上げる(5前後) 出しすぎ気味でちょうどいい
モコモコ・ブーミーになる ベースを下げる/100Hz以下カット 低音が回るのが原因
細い・カリカリして硬い ギター本体トーンを絞る アンプは絞らない
現場が JC-120 だけ T0/B0/M10 起点+ブースター アンシミュをリターン挿しでも
目次

大原則=「トレブル上げ・ベース下げ」(多くの人が逆)

ジャズの音作りでいちばん大事な原則です。ブーミー(低音が膨らんでモコモコ)を避けたいのでベースは下げる。音の抜けを考えるとトレブルは上げる。これだけで実用的な音になります。

なぜ私たちは「逆」をやってしまうのか

原因は自宅の練習環境「ジャズ=丸い音」という固定観念です。一人で弾いていると高域が耳に痛く感じ、低音が出ている方がリッチで心地よく聞こえるので、ついベースを上げ、トレブルを絞りたくなります。自宅で完成した「甘い音」を、そのままバンドに持ち込んでしまうわけです。

バンドの中では話が逆になる

バンドには、すでにウッドベースやエレキベースという「低音のプロ」がいます。ギターが良かれと思って出した低音(おおむね100Hz付近)は、ベースの帯域と完全にバッティングして、お互いの音を濁らせる「モコモコの原因」になります。一方、ギターの輪郭をバンドの中で立たせる高域を絞ってしまうと、ドラムのシンバルやスネアに簡単に埋もれてしまう。だからジャズでも、ベースは控えめ・トレブルは高めが正解なのです。

大倉が「トレブルを上げる」本当の理由

大倉がアンプのトレブルを上げるのには、はっきりした理由があります。「ギター本体のトーンを少し絞って弾く」ことが前提だから。本体で高域を落とす前提なので、アンプ側は高域を残して、絞っても音が抜けるセッティングを目指しているのです。逆にアンプでトレブルを絞ってベースを上げると、すごくブーミーな音になってしまう。つまり「丸さ」はアンプのトレブルを絞って作るものではなく、ギター本体側で作るもの(次で詳しく解説します)。

「音が埋もれる・抜けてこない」を直す

原因で多いのがギターのトーンを絞りすぎ、そしてベースを上げてトレブルを絞りすぎのパターンです。大倉はトレブルをそんなに絞りません。Deluxe Reverb など普通のFender真空管アンプならトレブルは半分・5ぐらいまで上げます

ポイントは、「出しすぎ」ぐらいの方が音がちゃんと抜けるということ。バンドの中では、自分が思うより高域を出しておく方が、ちょうどよく抜けてくれます。まずはトレブルを今より一段上げて、抜け具合を確かめてください。

「モコモコ・ブーミー」を直す(パライコで100Hzカット)

これは単純な話で、ロー(低音)が出すぎです。埋もれる問題と裏表で、低音が膨らむとモコモコ・ブーミーに聞こえます。大倉はライブではベースのEQをほぼ0まで持っていくことが多い。低音が回るといい音に聞こえず、うるさいからです。

プロの現場ワザ:パライコで100Hz以下をカット

アンプのEQだけでは対応しきれないことが多いので、大倉はパライコ(パラメトリックEQ)を持っていくことが多いです。具体的には Empress Effects ParaEQ MKII Deluxe100Hz以下を完全にカットしてしまうことがすごく多く、これだけで低音の膨らみがすっきりします。ベースをいくら下げてもモコモコが取れない人は、アンプのEQの効きが足りていないだけなので、外部のEQで削るのが確実です(→ 使用機材の詳細はこちら)。

なお、フルアコでハウリングに悩む場合も「ハウる周波数をEQで削る」のが有効です。詳しくは フルアコのハウリング対策 を参照してください。

アンプ別の実例セッティング(Fender真空管)

「で、結局つまみ何時?」という人のために、大倉が実際に使っている数値を載せます。アンプごとに違うので「必ずこの数字」ではありませんが、出発点になります。

  • Deluxe Reverb:トレブル 3〜5(例:5ぐらい)、ベース 2。教室で使うときはトレブル3・ベース2が多い。
  • Princeton Reverb:このアンプはベースがブーミーになりやすいのでベース0、トレブルは7〜8まで上げる。さらにパライコで100Hz以下を全部カット

同じFenderでも機種でこれだけ違います。共通しているのは「ベースは低め、トレブルは高め」という方向性。お使いのアンプでも、この方向に振ってから微調整してください。

音が細い・硬いときは「ギター本体」と「音量」で整える

トレブルを上げると、人によってはペラペラ・カリカリと細く感じることがあります。ここでアンプのトレブルを絞り返すのはNG。抜けが悪くなって元の木阿弥です。細さ・硬さはギター本体側で整えます。アンプのトレブルを5前後に上げたら、あとは手元の2つのノブで仕上げます。

  • フロントピックアップを使う:ジャズの基本。リアより太く甘い音になります。
  • 本体のトーンは「5前後」:全開(10)から少しずつ絞り、カリカリした高域成分が消えて、芯のある太さが残るポイントを探します。0まで絞り切ると今度は抜けなくなるので、下げすぎないのがコツ。大倉も大体5あたりに置きます。
  • ボリュームは「80%」ぐらいに:マックスから少し絞るとハイ落ち(高域が自然に丸くなる現象)が起き、ピッキングのニュアンスも出やすくなります。大倉が高域を微調整するときに使っているノブです。

大事なのは順番です。アンプで高域をしっかり出す→本体トーンとボリュームで丸く整える。この順でやると、抜けと甘さが両立します。アンプで丸くしてしまうと、抜けない上にコントロールの幅も失います。

隠れたコツ:ラウドアンプ+ソフトタッチ

アンプの音量は大きめに設定し、ギター側を少し絞って柔らかいタッチで弾く。これでいい音が出て、ダイナミクスの幅も作れます。そのぶん右手のタッチがすごく重要になります。音作りは「EQ」だけでなく「音量と右手」まで含めて1セットです。

じつはピックやタッチも音作りの一部です。厚めのピックや当て方ひとつで、アンプのEQに頼らず太く甘いトーンを作れます。→ 詳しくは ジャズギターのピック完全ガイド をどうぞ。もうひとつ、ブースターを1個足して整える手もあります(次のJC-120の項で触れます)。

現場のアンプ(JC-120・Marshall)で作る

ジャズの現場でいちばん遭遇するのが JC-120(ジャズコーラス)。クリーンはきれいですが少し音が冷たく、セッティングが難しいアンプです。アンプシミュがあればリターンに挿すのが手早いですが、アンプ単体で作るなら次の2つ。

  • トレブル0・ベース0・ミドル10がフラットの音、という説があります。大倉も基本はここから始め、実際はそこからだいぶ動かします。
  • ギターとアンプの間にブースターを1個挟むと、JCがぐっといい音になります。大倉は真空管系の Lee Custom Amplifier 12AU7 Buffer/BoosterEP Booster を使用。ケンタウルス(Klon系)や TS系の歪みペダルをゲインを下げてブースター代わりに使うのもよくある手です。アンプ直より、何か1個挟むのがおすすめ。

Marshall しかない現場は経験上ほぼありませんが(そういう箱ではジャズをしない)、仮にあってもクリーンはきれいなので、トレブルを絞り・ベースも絞り・ミドルを出す方向で作れば大丈夫です。

→ JC-120 のチャンネルリンクなど具体的な使い方は JC-120のセッティングとチャンネルリンクの使い方 に詳しくまとめています。

ジャズの音作りに使う機材(EQ・ブースター)

アンプのつまみだけで足りないとき、大倉が実際に持ち込んでいる機材です。「いい音を作る」というより「現場で素早く整える」ための道具立てです。

パラメトリックEQ:Empress Effects ParaEQ MKII Deluxe

メインで使っているパライコがこれ。ローカット・ハイカットが効くのが重要で、そこを使っています。前述のとおり100Hz以下をカットしてモコモコを抑えるのに最適。後述しますが、現場は時間が限られるので“割り切り”が必要で、その点でこの ParaEQ はかなり優秀です。

グラフィックEQ/ハウリング対策の考え方

以前は定番の MXR のグライコを使っていました。ただハウリング対策なら、今はパライコの方が適切だと考えています(狙った周波数をピンポイントで削れるため)。どうしてもグライコで対応するなら、バンド数の多いラックタイプの32バンドがベストです。

ブースター

JCなどクリーンアンプを“化けさせる”のに使います。大倉の常用は真空管系の Lee Custom Amplifier 12AU7 Buffer/Booster。加えて、ケンタウルス(Klon系)や TS系(Tube Screamer 系)の歪みペダルを、ゲインを下げてブースターとして使うのもよくある手です。歪ませるのではなく、音に芯と押し出しを足す目的です。

現場では「割り切り」が必要(大倉の失敗から)

正直に書きます。大倉も現場でセッティングに悩んで時間をかけすぎ、怒られたことがあります。音作りはやればやるほど、何がいいか分からなくなることもよくある。経験上、現場は時間が限られるので、ある程度の割り切りが大事です。だからこそ、素早くローカット・ハイカットで整えられる Empress の ParaEQ のような“決め打ちで効く道具”が現場では効いてきます。完璧を狙うより、いつもの一手を持っておく方が結果的にいい音で演奏できます。

よくある質問(FAQ)

Q. ジャズのアンプEQ、基本のセッティングは?

A. トレブルを上げて、ベースを下げるのが基本です。多くの人がやりがちな「トレブル絞り・ベース上げ」はブーミーになり音も抜けません。丸さはアンプではなくギター本体のトーンで作ります。

Q. バンドで音が埋もれます。どうすれば?

A. トレブルを5前後まで上げてください。「出しすぎ」ぐらいの方がちょうど抜けます。細く感じたらアンプではなく、ギター本体のトーンやブースターで整えます。

Q. ベースを下げてもモコモコが取れません。

A. アンプのEQの効きが足りていない可能性が高いです。パライコ(パラメトリックEQ)で100Hz以下をカットすると確実にすっきりします。大倉も現場ではこれを多用します。

Q. モコモコ取り・ハウリング対策におすすめのEQ(パライコ)は?

A. 大倉は Empress Effects ParaEQ MKII Deluxe を使っています。ローカット・ハイカットが効くのが重要で、100Hz以下のカットに最適。ハウリング対策も、今はグライコよりパライコの方が適切です(どうしてもグライコならラックの32バンド)。現場で素早く整えられるのも利点です。

Q. Fenderアンプの具体的なつまみの位置は?

A. 一例として、Deluxe Reverb=トレブル3〜5・ベース2(教室はトレブル3・ベース2)、Princeton Reverb=ベース0・トレブル7〜8+パライコで100Hz以下カット。機種で変わるので出発点として使ってください。

Q. 現場が JC-120 だけのとき、ジャズの音は作れますか?

A. 作れます。トレブル0・ベース0・ミドル10を起点に調整し、EP Booster などを1個挟むといい音になります。アンプシミュがあればリターンに挿すのが手早いです。

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