スケールのゴールは「12キー分の表を暗記する」ことではありません。キーが分かった瞬間に、手を置く場所(ポジション)が見えることです。やることはこの5つ、順番どおりに。
- まずメジャースケールだけに絞る(中に7つのモードが全部入っている)
- 覚え方は3つ:CAGED(5つの形——中心になる形はキーで変わる)/3ノートパーストリング(まず6弦・5弦ルート)/1ルート3パターンの指使い
- 3つのうちまずどれか1つをマスターする(レッスンでは人に合わせて組み合わせ・最終的には全てマスター)
- セゴビアスケール=ポジション移動の練習(横移動でシフトを体に入れる)
- キーはF・C・B♭・E♭・(できればA♭)・Gのよく使う順で広げる
やらないこと(引き算):
✕ 最初から全キーを音名で暗記しない——いきなり12キーはおそらく無理。プロでも分かりやすいキーのほうを多く弾いています。
✕ ポジションを全部覚えようとしない——ポジションだけなら「アホほど」出てくる。どれを捨てるかが設計です。
✕ 音階を順番に上下するだけで満足しない——スケールは「使い方」が本体。それは次のページでやります。
✕ オルタードなど珍しいスケールに手を出さない——多くはメジャー/メロディックマイナーの派生。別物として覚える必要はありません。
このページの位置づけ:スケールはフィジカル(運指・技術)の練習に最適。ただし優先度はコードトーンが上です。まだなら先にコードトーンのマスターへ。
2回目からは「🎸 今日の練習」へ直行でOK。
なぜコードトーンのあとにスケールか(30秒だけ理屈)
そもそもスケール練習は何のためにするのか。基本的にはギターの技術を上げるため——つまりフィジカル(運指・技術)のトレーニングです。だから「音を選ぶ基準」であるコードトーンが先。スケールだけを練習しても指板全体が見えるようになるのは難しく、コードトーンの知識があるとポジションが格段に見えやすくなります。
ただし誤解しないでください。スケールは「最後に回すもの」ではありません。指板の可視化には相当時間がかかるので、最初の一歩として避けて通れない練習でもあります。教室のレッスンでも、コードトーンとほぼ並行して進めています。そしてもう1つ——ポジションの覚え方(CAGED・3ノートパーストリング・3パターンの指使い)にも、決まった順番はありません。まずどれか1つをマスターすれば大丈夫です(手順【2】〜【4】)。
手順:6ステップ(【2】〜【4】はどれから入ってもいい)
【1】メジャースケールだけに絞る(7つのモードが中に入っている)
「ジャズで最初に覚えるスケールは?」——答えはメジャースケールの徹底が最優先です。理由はシンプルで、メジャースケールの中に7つのスケール(ドリアン・ミクソリディアンなどのチャーチモード)が全部含まれているから。もう1つ——メジャースケールは基準のスケールでもあります。他のスケールに移行するときも「メジャースケールからどこが変化するのか」で覚えていくので、ここが固まっているほど後がラクになります。徹底的にやれば、後で困りません。
逆に、やらなくていいものも先に言っておきます。ナチュラルマイナーは練習不要(メジャースケールの6番目から始めただけで中身が同じ)。オルタードその他のスケールも今は不要(多くはメロディックマイナーの派生で、開始音が違うだけ)。スケールは種類が多くて難しそうに見えますが、根本のスケールをやっておけば全部応用が効きます。
ジャズをそこそこやっていくなら、最終的な必須ラインは「メジャースケール全キー全ポジション+メロディックマイナー全キー全ポジション」。ここまでやるだけでものすごく大変で、それ以上はやらなくていい——このページではまず前半のメジャースケールを形にします(メロディックマイナーは上級ページで)。
【2】覚え方1:CAGED——5つの形を、キーに合わせて(Cならまず G と E)
CAGED(ケージド)システムの手順は2つだけです。
- 弾きたいキーのルート音を5弦・6弦の上で見つける(例:A♭なら「Aの半音下=4フレット」、5弦なら11フレット。+12フレットしても同じ音があるので高いポジションも見つかります。5弦・6弦の音名図は【6】に載せています)
- そのRの位置に、覚えたポジションの形を当てはめる
CAGEDは名前のとおり5つの形があります。どの形が中心になるかはキーによって変わります——たとえばCの場合は、まずGポジションとEポジションからがおすすめ。最終的には5つ全てのポジションを練習するのがよく、進め方はまず1つずつ単独で覚える→そのあと隣り合うポジションを合体させてみる、の順です。合体させると2つが統合されて1つの大きな形に見えてきます。なおルート探しは今のところ5弦と6弦にほとんど絞ってしまって大丈夫です(12フレット以上の高音域では5・6弦はあまり使いません)。
下の図はAポジションを例に「ポジション練習のやり方」を示したものです——やり方はどのポジションでも同じなので、Cで進める人は同じ要領をGポジションやEポジションに当てはめてください。
この図の使い方:CメジャーのAポジションの例(金のR=5弦3フレットのC)。練習法は下のRから上がってポジション内のいちばん上(1弦5フレット)まで→折り返していちばん下(6弦3フレット)まで下がって→最初のRに戻る。テンポなしでいいので音を切らさず。1弦1フレットのF(4度)まで含めて覚えます——同じFは2弦6フレット(点線の丸)にもあり、大倉はそちらを優先することもあります。この形ごとRの位置をずらせば、そのまま全キーで使えます。
※図をよく見ると、3音ある弦(5・4・3・1弦)と2音の弦(6・2弦)が混ざっています。この「不揃い」がCAGEDの弱点で、ステップ【3】で補います。
覚え方は基本、丸暗記です。ただしこれだけ練習すれば完全にできるわけではなく、色んなことをやって完全になっていくもの。それでも最初の1歩としてここは避けて通れません。
【3】覚え方2:3ノートパーストリング——「間を縫う」実践派の形
CAGEDを進めると「CAGEDにはまらないやつ」が結構出てきます。間を縫うポジションが実は必要で、しかもCAGEDより重要なのに抜けているポジション取りが1つある——それが3ノートパーストリング(3 Notes Per String)、1本の弦につき3音ずつ取る方法です。
CAGEDの弱点は、上の図で見たとおり2音の弦と3音の弦が混ざること。これが弾きにくさの正体です。全弦3音に統一すると運指が単純化できて、ギターですごく有利。早弾き系のパターンは大体この取り方で、実践的なのはむしろこちら。CAGEDと3ノートパーストリング、両方が重要なポジションです。
運指で多いのは人差し指・中指・小指のセット。最後だけ人差し指・薬指・小指になります(ポジションが少しずれるため)。形は、まず6弦ルートと5弦ルートの2つをしっかり覚えるところから——下の図は6弦ルート(C=6弦8フレット)の例です。
この図の使い方:Cメジャーの3ノートパーストリング(金のR=6弦8フレットのC)。全弦3音ずつだから運指が揃う。基本は人・中・小、最後だけ人・薬・小で、音を切らさず上行下行。
※スケールのポジション自体は「アホほど」あります。全部は覚えない——このページの3つの覚え方(CAGED/3ノートパーストリング/3パターンの指使い)に絞るのが、「捨てる」設計です。3ノートパーストリングは、まず6弦ルート・5弦ルートの2つをしっかり。
【4】覚え方3:1ルート3パターンの指使い——右・真ん中・左
同じルートでも、どの指でルートを押さえるかで手の置き方が3通りあります。1つのルートにつきこの3パターンで弾き始められるようにする——教室で推奨している練習です。図は12キー優先順位の筆頭・F(ルート=5弦8フレット)の例。
右パターン ルートを人差し指で——手はルートの右(高フレット側)に広がる
使い方:金のR(5弦8フレット)を人差し指で押さえてスタート。1オクターブ上のRまで、音を切らさず上行下行。
真ん中 ルートを中指で——ほとんどの場合がこの中指スタート
使い方:金のRを中指で。手がルートの左右に均等に広がる、いちばん使う置き方です(【2】のAポジションと同じ景色)。
左パターン ルートを小指で——手はルートの左(低フレット側)に広がる
使い方:金のRを小指で。同じFなのに、見える景色が右・真ん中とまったく違うことを確かめてください。
同じルートでも指が変われば見える景色が変わる——「ドから順番」の一本道から抜け出す、最初の解毒がこれです。
【5】セゴビアスケール——横移動で指板を縦断する
CAGED・3ノートパーストリング・3パターンは、基本「その場所(ポジション内)」で完結する縦の見方です。これに対してセゴビアスケール=横移動のスケール練習。低いポジションから高いポジションへ、指板を縦断しながら駆け上がります。目的はポジションを覚えることというより、ポジション移動=シフトの動きそのものを練習する意味合いが強い練習です。
この図の使い方:Gメジャーの例。6弦3フレットのRから1弦15フレットのRまで一気に駆け上がる。丸の金=R、◆の金=人差し指——ここでポジションを上へシフトします。
ポイントはシフトは人差し指で行うこと(図の◆の3箇所)。ポジション別に覚えたあとは連結していく練習が必要です。連結の基本はCAGEDの隣り合うポジションのミックスで、残りを3ノートパーストリングと3パターンの指使いで補うことが多い——セゴビアは連結の代用ではなく、ポジション移動の練習として別枠でやります。移動の練習を始めると指板を瞬間的に見ざるを得なくなるので、可視化が一気に進む——この連結練習は教室でも特に力を入れている領域です。下降時の運指などの細部は、レッスンで手元を見ながら調整します。
【6】色んなキーで——F・C・B♭・E♭・(A♭)・G の順で広げる
最終的には12キー弾けたほうがいい。ただしいきなり12キーはおそらく無理です。最初は優しいキー・よく使うキーを中心に:F・C・B♭・E♭・(できればA♭まで)・G。ジャズの現場で頻出する順です。
キーの見分け方は譜面の頭の調号(フラットやシャープの記号)。たとえばフラット4つならA♭(=Fマイナー。同じもの)。これは理屈より完全暗記モノで、「この曲はフラット4つでA♭なんや」と出てくるたびに覚えていけば十分です。
キーが分かったら、ルートを5弦・6弦の音名で探します(【2】の手順1)。当面はこの2本の音名だけ覚えれば大丈夫です。
この図の使い方:5弦・6弦の音名(開放弦=6弦E・5弦A。♯・♭はその間)。例:A♭=「Aの半音下」=6弦4フレット・5弦11フレット(金)。+12フレットしても同じ音です。
キーが分かると何がいいのか。フレーズはおおよそそのキーのメジャースケールの中で弾かれているので、ミスが減り、覚えやすくなり、「スケールの中で弾けば大体合う」ので事故が起きにくい。耳コピでも音の選択肢の予想がつきます。もう1つ実用的な効用:TAB譜の間違いに気づけます。市販のTAB譜は8割くらいの信頼度で見るのがよく、載っているポジションがベストとも限らない——スケールを知っていれば「これ難しいわ」というときに自分で別の運指を探せます。
大倉の断言:指板は「ポジション移動」を始めた人から見えてくる
「指板がいつ見えるようになるのか、はみんなに聞かれる質問です。多くの人に教えてきた経験で言うと、1つのポジションは完璧に弾ける、でも咄嗟に出てこない人が多い。2つ以上のポジションをバラバラに・合体させて弾き始めると、瞬間的に指板を見ざるを得なくなって、比較的身についてきます。自分も含めて完全に見えているのかと言えば、見えない。プロミュージシャンがよく『スケール100万回練習します』と言いますが、それくらい弾き込んでいくものだと思ってください」。
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
レッスンで渡している「スケール練習メモ」(初級→上級)
ここからは、教室でスケール練習を始めるときに実際に渡しているメモと同じ内容です。初級はポジションの把握、中級は実際に使う練習です。基本的にはどのスケールもこの練習方法が適応できます。まずはメジャースケールから取り組みましょう。コードトーンと同時に練習を進めると効果的です。
初級 =ポジションの把握
- ルートからのポジションを覚える
- コードトーン(主にトライアド)の練習
- ルート以外から始める上昇・下降(主にコードトーン)
- 練習するキーはよく使用するC・F・B♭・E♭・Gから(4度進行で練習)
- 5弦・6弦ルートそれぞれの得意なポジションを1つ以上作る
中級 =実際に使う
- シークエンスパターン(規則的なパターン)——実際の演奏でもよく使います。モチーフを作るもととなり、シークエンスをメロディの一番小さな単位として捉える。インターバル(3度)/ダイアトニックシークエンス(下の譜例①②③)
- ポジションの連結
- ランダムに自由に、8分音符中心でノンストップで弾けるようにする
- ポジションを移動しながらランダム
- 12keyで練習(サークル・オブ・4th)
- レガート
上級
- インターバル(5度・6度)
- トライアドの連結
- インターバルを使用したパターンの構築
- ポリリズムを使用したパターン(3・5・7)
- 2-1-2パターン
- その他の運指法
ハンマリングはオプションです。特に3ノートパーストリングはハンマリング・プリングとの相性が良い形。下りは「ピック・ピック・プリング」がおすすめ、上りは音量が揃うピッキングのパターンで弾いてください。
初級の土台=ポジションの把握:土台にするポジションはCAGED・3ノートパーストリング・3パターン(右・真ん中・左)のどれでもOK。図はCメジャーの5弦ルート形(3〜8フレット・R=赤)の例です。まずどれか1つを、つまらず弾けるまで。下の譜例①〜③は6弦ルート形(8フレットのC)で書いています。
シークエンス①=4音ずつ上がって、4音ずつ降りる
C D E F → D E F G → E F G A…と1音ずつ始点をずらしながら4音ずつ上がり、最高音のCから同じ形で降りて、最後は全音符のC。8分音符で、まずはつまらず通す。
シークエンス②=インターバル(3度)
C E → D F → E G…と3度ずつで上がり、最高音のDから3度で降りる。上級では同じ形を5度・6度に広げます。
シークエンス③=ダイアトニックシークエンス
1小節に1コード。各コードの1・3・5・7を上がって、6・5・4・3と降りる——Cmaj7・Dm7・Em7・Fmaj7・G7・Am7・Bm7♭5・Cmaj7…と、ダイアトニックコードを順に。コードトーンとスケールが同時に身につく、このメモの核です。
※譜例はCメジャーの6弦ルート形(7〜12フレット)で、メモの譜例と同じ規則で書き起こしています。他のキー・他のポジションでも同じ規則で作れます。
🎸 今日の練習(これ1つだけ)
上の指板図(Aポジションの例)で、①R(5弦3フレット)から上行→ポジション内の最高音で折り返して最低音→Rに戻る。②次に3度(4弦2フレットのE)から同じことを。やり方はどのポジションでも同じです(Cで進める人はG・Eポジションにも同じ要領で)。コードトーンの音から始めるスケール練習が、指板可視化への近道です。
基礎練なので、コツコツ続けることが大事です。できたら明日は同じ形を中指スタート・小指スタートで。その次はG・Eポジション(Cのおすすめ)へ——1つずつ単独で覚えたら、隣り合うポジションを合体させてみます。このページをブックマークして、明日もここから始めましょう。
✅ これができたら次(スケールの使い方)へ
最初の3つは、どれか一つできればOKです(最終的には全てマスターします)。
☐ 1つのルートから3パターン(人差し指・中指・小指スタート)どれでも弾き始められる
☐ 3ノートパーストリングの形で6弦から1弦まで通せる
☐ 最後まで音が切れず・力まずに鳴らせている
テンポの合格基準は特にありません。基礎練なので、コツコツ続けることが大事です。
GとEをいつ合体させるか、3ノートパーストリングへいつ移るか——ポジションはあくまで整理の方法なので、この順番は手の癖と好みで変わり、記事側では決め打ちできません。ポジションを1つ聴かせてもらえば、次にやる形は一緒に決められます。
よくある質問(FAQ)
Q. スケールとコードトーン、どちらを先にやるべき?
A. コードトーンが先です。スケールはフィジカル(運指・技術)の練習には最適ですが、優先度はコードトーンのほうが上。ただし「最後に回す」ものでもなく、レッスンではほぼ並行して進めます。自分の段階でスケールにどれだけ時間を割くべきかはレベルによって変わるので、配分の判断は独学では難しいところです。
Q. CAGEDと3ノートパーストリング、どちらを覚えるべき?
A. 両方すごく重要なポジション取りで、どちらが正解ということはありません。CAGED・3ノートパーストリング・3パターンの指使いのうち、まずどれか1つをマスターすれば大丈夫です。CAGEDの弱点(弦によって2音と3音が混在して弾きにくい)を3ノートパーストリングが補う関係で、実際のレッスンでは人に合わせて組み合わせ、最終的には全てマスターします。どれから入るのが合っているかは人によるので、そこは相談しながらが確実です。
Q. ポジションは全部でいくつ覚えればいいですか?
A. ポジションだけで言えば数え切れないほど出てくるので、全部は覚えません。どれを捨てるかが大事です。当面はルート探しを5弦・6弦に絞り、覚え方はCAGED・3ノートパーストリング・3パターンの指使いのどれか1つから始めれば大丈夫。12フレット以上の高音域では5・6弦はあまり使いません。「捨てる」判断そのものが独学では難しい部分です。
Q. 最初から12キーで練習すべきですか?
A. いきなり12キーはおそらく無理です。最終的には12キー弾けたほうがいいですが、最初はよく使うキー=F・C・B♭・E♭・(できればA♭)・Gを中心に。C・F・Gなどの優しいキーから入るのが効率的です。実際にどのキーを深くやるかは弾きたい曲の調号で変わるので、曲に出てくるたびに1つずつ覚えていくのが現実的です。
Q. スケールを覚えれば指板は見えるようになりますか?
A. 指板の可視化は相当時間がかかります。1つのポジションを完璧に弾けても咄嗟には出てこない人が多く、2つ以上のポジションをバラバラに・合体させて弾く「ポジション移動」の練習を始めると身についてきます。スケールだけでは難しく、コードトーンの知識もあると見えやすくなります。どこまで見えていれば十分かは、自分では判定しにくいところです。
NEXT LESSON
スケールのマスター:使い方編|3度・6度のインターバル・ランダム →
◀ コードトーンのマスター|1357の展開・接続 | ◀ ロードマップ(学習順序の地図) | ▶ メロディックマイナー・スケール | 🗺 全体地図
独学で進めるのが不安になったら、教室の料金と仕組みだけでも見ておいてください。
大倉ギター教室|大阪市西区南堀江(桜川駅・西大橋駅 徒歩5分/四ツ橋・JR難波も10分圏)