第30回:同じ形のコードが平行移動?(コンスタント・ストラクチャー)

こんにちは。「大倉ギター教室」の大倉です。

ジャズギターと音楽理論の完全読破ロードマップ、今回は第30回です。 今日の**結論(最重要ポイント)**からお伝えします。

💡 今日の結論:コードは「物語」から「景色」へ

  1. 手法: 同じ種類のコード(構造)を、形のまま平行移動させていく技法。
  2. 変化: 「解決(ゴール)」を目指すのをやめて、**「響きの色(カラー)」**をスライドさせて楽しむ。
  3. 利点: ギターという楽器の最大の武器。指の形を固定してズラすだけで、現代的なサウンドになる。

「Cmaj7の次は、Fmaj7に行って…」というこれまでのルールを、一旦忘れましょう。 ハービー・ハンコックや、最近流行りのネオソウルなどは、もっと自由にコードを並べています。

1. 金太郎飴をスライドさせる

**コンスタント・ストラクチャー(Constant Structure)とは、直訳すると「一定の構造」です。 これは、「同じ種類のコードを、そのまま平行移動させること」**を指します。

例えば、こんな進行です。 Cmaj7 → Ebmaj7 → Gbmaj7 → Amaj7

全部「メジャーセブンス(maj7)」ですね。 まるで、どこを切っても同じ顔が出てくる**「金太郎飴」**のように、コードの構造(中身のインターバル)を変えずに、ルートだけを動かしていくのです。

これまでの理論では、「キーがCなら、Ebなんて出てくるはずがない!」と怒られそうですが、現代ジャズではこれが「クールでカッコいい」とされます。

2. 「物語」よりも「景色」を楽しむ

なぜ、こんなルール無視の進行が許されるのでしょうか? それは、音楽の楽しみ方が**「物語」から「景色」へ**とシフトしたからです。

  • 機能和声(これまでの理論): 「主人公(トニック)が旅に出て(サブドミナント)、ピンチになり(ドミナント)、家に帰る(解決)」という起承転結のドラマ
  • コンスタント・ストラクチャー(現代の手法): 「綺麗な青色(Cmaj7)がありました。次は綺麗な赤色(Ebmaj7)を並べてみましょう」という色彩のグラデーション

ここに「解決(家に帰る)」という概念はありません。 重心がなく、フワフワと浮遊しているような感覚。 この**「調性(キー)を感じさせない曖昧さ」**こそが、現代ジャズやネオソウル特有の「お洒落で洗練された雰囲気」を作っているのです。

3. ギタリストは「ズル」ができる

実は、この技法はギタリストのためにあると言っても過言ではありません。

ピアノで「Cmaj7 → Ebmaj7」を弾こうとすると、指の形を全く別のものに変えなければならず、大変です。 しかし、ギターならどうでしょう?

「左手の形を固めて、そのまま3フレット横にズラすだけ」

これだけで、複雑な理論を飛び越えて、現代的なサウンドが出せてしまいます。 難しいことを考える必要はありません。 「この押さえ方の響き、好きだな」と思ったら、その形のまま指板上を旅してみてください。 理屈抜きで**「直感的に色を塗る」**ことができるのが、ギターという楽器の最大の特権なのです。

まとめ:今日の持ち帰りメモ

忙しい方のための3行まとめです。

  1. コンスタント・ストラクチャーは、同じコードの形を平行移動させる技。
  2. 機能(解決)を無視して、**「響きの色彩」**の変化を楽しむ現代的な手法。
  3. ギターなら形をズラすだけ。感性で自由にスライドさせよう。

次回は、分数コード(オンコード)のさらに進化した姿。 **「ハイブリッドコード」**について解説します。 「Cのコードの上に、Dのコードが乗っている?」 分数コードを使ったマジックで、透明感のあるサウンドを作ります。

「おしゃれなコードの形(ヴォイシング)をたくさん知りたい!」という方は、大倉ギター教室へ。 ズラすだけで即戦力になる「魔法のフォーム」を厳選してお教えします。