こんにちは。「大倉ギター教室」の大倉です。
ジャズギターと音楽理論の完全読破ロードマップ、今回は第28回です。 今日の**結論(最重要ポイント)**からお伝えします。
💡 今日の結論:ブルースマンは「解決」を拒否する
- 謎: 通常の理論では「不安定」とされるセブンスコードが、「主役(トニック)」として居座る。
- 正体: ドミナント機能を持たない7th。「解決(帰宅)」を拒否する不良たち。
- 美学: その「濁り(不協和音)」こそが、ブルースの哀愁や、ファンクの**熱狂(グルーヴ)**を生む。
「C7」を弾いたら「F」に行きたくなる。それがこれまでの常識でした。 しかし、ジェームス・ブラウンの曲では、10分間ずっと「E7」を弾き続けます。なぜそれで成立するのか? それは、彼らにとって**「不安定な場所こそが、最も落ち着く居場所」**だからです。
1. 家路を拒む「不良の溜まり場」
これまでの理論(クラシックやスタンダードジャズ)では、ドミナント7th(V7)は**「早く家に帰りたい人(解決したい人)」**でした。 不安定だから、安定した家(トニック)へ進む。これがドミナントモーションでしたね。
しかし、ブルースの世界では、**トニック(家)そのものが「I7」**なんです。 キーがCなら、いきなり「C7」から始まります。
これは例えるなら、**「門限(解決)を守らず、夜の街に溜まり続ける不良たち」**です。 彼らに「早くお家に帰りなさい(解決しなさい)」と言っても無駄です。 彼らは路上(セブンスの状態)にいることこそが「日常(トニック)」であり、そこから動こうとはしません。
これを理論用語で**「ドミナント機能を持たないドミナント7thコード」**と呼びます。
2. 全員が革ジャンを着ている「アウトローな街」
ブルースの基本進行を見てみましょう。 C7 (I7) → F7 (IV7) → G7 (V7)
見てください。**全員セブンス(不良)**です。 普通の街(ダイアトニックの世界)では、セブンスは「G7」ひとりだけの「変わり者」でした。 しかし、ブルースの街では、全員が革ジャン(セブンス)を着ているのが当たり前なんです。
この「アウトローな街」では、セブンス特有のトゲトゲした響き(トライトーン)が、不協和音ではなく**「共通言語」**として機能します。
ここで使うスケールは、前回少し登場した**「ミクソリディアン」です。 さらに、そこに「ブルーノート(b3, b5)」**を混ぜることで、より一層ワイルドで泥臭い、カッコいい響きが生まれます。
3. 終わらない「熱狂のパーティ」
この「解決しない」性質を極限まで利用したのが、**ファンク(Funk)**です。 ジェームス・ブラウン(JB)の音楽を聴いてみてください。
「ゲロッパ!」と叫びながら、ギターは延々と**「E9(E7のテンションコード)」のカッティングを繰り返しています。 コードチェンジすらしません。「ワンコード」**の世界です。
もしここで、E9がAに「解決」してしまったらどうなるでしょう? 「ちゃんちゃん♪(終了)」となって、パーティの熱が冷めてしまいますよね。
- 解決する = 緊張が解けて、お休みモードになる。
- 解決しない = 緊張が持続し、エネルギーが循環し続ける。
ファンクにおいて、セブンスコードの「濁り」は、解決すべき問題ではありません。 身体を揺らし続けるための**「燃料(グルーヴ)」**なのです。 夜が明けても音楽が止まらない、終わりのないパーティ。それがファンクの正体です。
まとめ:今日の持ち帰りメモ
忙しい方のための3行まとめです。
- ブルースやファンクでは、**7thコードがトニック(主役)**になる。
- 彼らは解決(帰宅)を拒否し、その場に居座り続ける。
- その**「解決しない緊張感」**が、終わらないグルーヴを生む。
次回は、コード進行の土台を支える「ベース音」に注目します。 コードが変わっているのに、ベース音だけはずっと動かない? 劇的な演出効果を生む**「ペダルポイント」**について解説します。
「E9のカッティング、キレが出ない…」という方は、大倉ギター教室へ。 左手のミュートだけでグルーヴを作る、ファンクギターの極意を伝授します。