第19回:ドミナントの数珠つなぎ(エクステンデッド・ドミナント)

こんにちは。「大倉ギター教室」の大倉です。

ジャズギターと音楽理論の完全読破ロードマップ、今回は第19回です。 今日の**結論(最重要ポイント)**からお伝えします。

💡 今日の結論:コード進行は「熱々のバケツリレー」だ

  1. エクステンデッド・ドミナント: セブンスコードが解決せずに、次のセブンスコードへ解決し続ける状態。
  2. 循環(サークル): E7 → A7 → D7 → G7 → C のように、5度下へ次々とジャンプしていく進行。
  3. 効果: ゴール(トニック)へ向かう推進力が何倍にも膨れ上がる。

「E7 → A7 → D7 → G7」 このアルファベットの羅列を見ただけで、ジャズマンはニヤリとします。 なぜなら、これが**一番気持ちいい「ドミノ倒し」**の形だからです。

1. 解決のエネルギーを「次に回せ!」

前回、ドミナント(V7)はトニック(I)に解決したがる「引力」を持っていると話しました。 「A7」なら、「Dm」に行きたがりますよね。

しかし、エクステンデッド・ドミナント(拡張されたドミナント)は、**解決先がまた「ドミナント(◯7)」**なんです。

これを**「熱々のバケツリレー」**に例えてみましょう。

  1. E7さん: 「熱ッ! このエネルギー(解決感)を早く誰かに渡したい!」→ A7さんへパス!
  2. A7さん: 「うわ熱ッ! 僕も早く渡したい!」→ D7さんへパス!
  3. D7さん: 「アチチッ! まだゴールじゃないのか!」→ G7さんへパス!
  4. G7さん: 「もう限界だ! ゴールへ行けー!」→ **C(トニック)**へ着地!

「ふぅ、助かった…(解決)」

このように、解決した安らぎを得る間もなく、次から次へと緊張のエネルギーを受け渡していく。 これが**「ドミナント・チェーン(ドミナントの連鎖)」**です。

2. 五度圏を逆走する「ドミノ倒し」

この「E → A → D → G → C」という動き。 何か規則性があることに気づきましたか?

そうです。全て**「完全5度下(または完全4度上)」**へのジャンプです。 これは、音楽理論の地図である

「五度圏(サークル・オブ・フィフス)」を逆時計回りに進む動きそのものです。

強烈な解決力を持つ「強進行」を連続で行うため、まるでドミノ倒しのように、一つ倒れれば最後まで止まらない凄まじい推進力が生まれます。

ジャズの定番曲『I Got Rhythm』のBメロ(サビ)は、まさにこの進行です。 「III7 → VI7 → II7 → V7」 (ミ→ラ→レ→ソ→ド!)

この流れに乗っかるだけで、演奏は勝手に盛り上がってくれます。

3. ゴールした時の快感は「4倍」

普通のドミナントモーション(G7→C)が「ジャンプして着地」だとしたら、 この4連結のドミナントチェーンは、**「スカイダイビング」**くらいの滞空時間があります。

「いつ着地できるの? まだ? まだ?」 と焦らされ続けるため、最後にトニック(C)にたどり着いた時の**解放感(解決感)**は、通常の何倍にもなります。

ジャズミュージシャンがこの進行を好むのは、この**「焦らしプレイ」**がたまらなく気持ちいいからなんですね。

今日のレベルアップ完了!

お疲れ様でした! 楽譜にセブンスコードが連続して書いてあったら、それは**「熱々のバケツリレー」**です。 個別にコードを見るのではなく、「ゴール(トニック)へ向かう一つの大きな流れ」として捉えて演奏してみましょう。

次回は、マイナーキーからの不思議な借用和音。 切なくてエモい**「モーダルインターチェンジ(同主短調)」**について解説します。J-POPで「グッとくる」進行の正体はこれです。

「セブンスコードが続くと、指板のどこを押さえればいいか迷子になる…」 そんな方は、大倉ギター教室へ。 指をほとんど動かさずに、魔法のようにコードを繋いでいく「ガイドトーン」のテクニックをお教えします。