第17回:マイナーの「ツーファイブ」は別物と思え

こんにちは。「大倉ギター教室」の大倉です。

ジャズギターと音楽理論の完全読破ロードマップ、今回は第17回です。 今日の**結論(最重要ポイント)**からお伝えします。

💡 今日の結論:マイナーのII-Vは「夜の峠道」だ

  1. IIの変化: Dm7 ではなく Dm7(b5) になる。霧がかかったような不安な響き。
  2. Vの激化: G7 が G7(alt) 等に進化する。ドロドロとした暗く重い緊張感。
  3. 解決先: ゴールは「ハッピーエンド」ではなく、「哀愁漂う静かな港」

「Dm7-G7-C」をそのままマイナーキーに移調して弾いても、なんだかジャズっぽくなりません。 なぜなら、マイナーキーには**「マイナー専用のパーツ」**が必要だからです。

1. 視界良好な「昼」と、霧の立ち込める「夜」

メジャーキーのツーファイブ(Dm7 → G7 → C)は、**「晴れた日のドライブ」**です。 視界は良好、ウキウキした気分でゴールへ向かいます。

しかし、マイナーキーのツーファイブ(Dm7(b5) → G7 → Cm)は、**「霧の立ち込める夜の峠道」**です。

最初のコードを見てください。 「Dm7(b5)」 (ディー・マイナーセブン・フラットファイブ)。

普通のDm7の「5度の音」を、半音下げた(フラットさせた)コードです。 ギターで押さえると、ズブズブ…と地面に沈み込んでいくような、独特の**「不安感」**がありますよね?

これは、意地悪で下げているわけではありません。 マイナーキー(Cmキー)のスケールの中に「ラ♭」という音が入っているため、2番目のコードを作ると**自動的に5度がフラットしてしまう(ラ→ラ♭)**のです。

この「b5」の響きこそが、夜のドライブの始まりを告げる合図です。

2. ドミナントはもっと「ドロドロ」になる

峠道を抜けた先の「G7(ドミナント)」も、ただのG7ではありません。 マイナーキーの世界では、G7はもっと凶悪でドロドロした緊張感を纏います。

前回学んだ「ハーモニックマイナー(Ver.2)」を思い出してください。不自然な動きをしていましたよね? あのスケールの影響で、G7の上に**「b9(フラットナインス)」「b13(フラットサーティーンス)」**といった、不気味なテンションが勝手にくっついてくるのです。

これを**「オルタード・テンション」**と呼びます。

  • メジャーのG7: 「早く家に帰りたいな〜(ワクワク)」
  • マイナーのG7: 「このままだと崖から落ちる…!(切迫)」

これくらい、緊張の度合い(深刻さ)が違います。

3. たどり着いた先は「哀愁の港」

そして最後の解決。 激しい緊張(G7alt)の後にたどり着くのは、**「Cm(マイナートニック)」**です。

これは「あー楽しかった!」というハッピーエンドではありません。 長い夜道を走り抜けて、ようやくたどり着いた**「人気のない、静かな夜の港」**です。

「終わった…」という安堵感はありますが、そこには常に**「哀愁」「切なさ」**が漂っています。 この「複雑なスパイスが効いた大人の解決」こそが、マイナーキーの美学なのです。

ギターを手に取って確かめよう

理屈よりも、まずはその「空気感」を指で感じてみてください。

  1. Dm7(b5) を押さえて、その「不安定な沈み込み」を味わう。
  2. G7(できればb9などを足して)の「ドロドロした緊張」を感じる。
  3. Cm7 に解決した時の「静かな哀愁」に浸る。

これができれば、あなたはもう「マイナーキーの住人」です。

次回は、既存の曲をオシャレに改造するための魔法、**「リハーモナイズ」**の章に入ります。 まずは、突然現れる「謎のセブンスコード(A7など)」の正体、セカンダリードミナントについて解説します。

「Dm7(b5)の押さえ方がわからない」「G7のテンションがわからない」という方は、大倉ギター教室へ。 ジャズ特有の「指を省略するエコな押さえ方」を伝授します。