第16回:哀愁の「マイナーキー」完全攻略

こんにちは。「大倉ギター教室」の大倉です。

ジャズギターと音楽理論の完全読破ロードマップ、今回は第16回です。 今日の**結論(最重要ポイント)**からお伝えします。

💡 今日の結論:マイナースケールは「Ver.3.0」まである

  1. Ver.1 (ナチュラル): 自然だけど、「終わり方」が弱い欠陥があった。
  2. Ver.2 (ハーモニック): 無理やり直したが、「メロディが不自然」(アラビアン)になった。
  3. Ver.3 (メロディック): 全てを解決した**「最強の最終形態」**。ジャズではこれが基本。

「3つも覚えられない!」と諦める前に、なぜ3つ必要だったのか、その「開発秘話」を知れば一発で覚えられます。

1. 【Ver.1】自然的短音階(ナチュラルマイナー)

~素朴だけど、締まらない初期型~

最初に生まれたのがこれです。 Cメジャースケール(ドレミファソラシド)を、「ラ」から始めただけ。 (ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ)

  • 特徴: 哀愁があって、自然な響き。
  • 致命的なバグ: 「ドミナント(G7)」が作れない!

前回までに「G7(ドミナント)がないと、曲は終われない」と学びましたよね? G7を作るには「ソ」ではなく「ソ#(シ=導音)」が必要なんです。 でも、このスケールには「ソ」しか入っていません。

そのため、和音(Vm7)の力が弱く、**「なんとなく終わった気がしない…」**という不完全燃焼なスケールだったのです。

2. 【Ver.2】和声的短音階(ハーモニックマイナー)

~無理やり改造したら、変な癖がついた~

「終われないのは困る!」ということで、昔の音楽家は強引なアップデートを行いました。

「7番目の音(ソ)を、無理やり半音上げちゃえ!(ソ#)」

これでめでたく「G7」が作れるようになり、ドラマチックな「解決」が可能になりました。 これが**「和声的(ハーモニー重視の)短音階」**です。

  • 特徴: カッコよく曲が終わる。
  • 新たなバグ: 「アラビア〜ン」な響きになってしまった!

7番目(ソ#)を上げたせいで、6番目(ファ)との距離が**「1.5フレット分(増2度)」**も開いてしまいました。 この広すぎる隙間のせいで、メロディを弾くと「蛇使いの笛」のような、独特のアラビアンな雰囲気が出てしまいます。 「コードは完璧だけど、歌うにはちょっと変だよね」という状態です。

3. 【Ver.3】旋律的短音階(メロディックマイナー)

~全てを解決した完全版~

「アラビアンな隙間をどうにかしよう」 そこで行われた最終アップデートがこれです。

「7番目を上げたなら、ついでに6番目(ファ)も上げちゃえば、隙間が埋まるんじゃね?」

天才的発想です。 6番目(ファ#)と7番目(ソ#)の両方を上げることで、階段は再び滑らかになり、なおかつG7も作れる最強のスケールが完成しました。 これが**「旋律的(メロディ重視の)短音階」**です。

クラシックでは「上りはこれ、下りは戻す」と面倒なことをしますが、ジャズでは**「上りも下りもこれ(Ver.3)一本!」で使います。 これを「ジャズ・マイナー・スケール」**と呼びます。

不自然な音(アボイド)が極端に少なく、自由度が高いため、ジャズミュージシャンはこのVer.3をこよなく愛しています。

いかがでしたか?

「マイナーには3種類ある」と丸暗記するのは大変ですが、**「不具合を直していったら3つになっちゃった」という歴史を知れば納得ですよね。 ジャズを目指す皆さんは、最終形態である「メロディックマイナー(Ver.3)」**を重点的に練習しましょう。

次回は、マイナーキーにおける「ツーファイブ(II-V)」の話。 メジャーキーとは違う、少しダークで複雑なコード進行の秘密に迫ります。

「理論書を読んでも頭に入らない…」という方は、ぜひ大倉ギター教室へ。 こういった「理由」から紐解くレッスンで、あなたのモヤモヤをスッキリ解消します。