ここ最近のギタリストに焦点をあてて、現代のジャズギターを学ぶうえで欠かせない一人を紹介します。今回は Julian Lage(ジュリアン・レイジ)。「速く弾く」でも「難しいスケールを覚える」でもなく、コードトーンとシンプルなスケールでメロディを“歌い上げる”——独学だとつい逆に行きがちな、その本質を教えてくれるギタリストです。何を聴き、そこから何を練習に持ち帰ればいいのかまで、順番に見ていきます。
ジュリアン・レイジから学べるのは、「難しいことをせずに歌う」こと。複雑なスケールやリックに頼らず、コードトーンとシンプルな音でメロディを歌い上げる演奏です。
持ち帰る練習は3つ。①コードトーンを“自分のメロディ”にできること ②ソロギター(メロディ+ベース→内声)の土台 ③憧れた演奏を自分で耳コピすること。逆に、やらなくていいのは「速弾き」や「難しいスケール暗記」。まずは音数を減らして、歌えているかどうかを耳で確かめるところからです。
ジャズギタリスト「Julian Lage」

今回紹介するのは 「Julian Lage」。日本語では「ジュリアンレイジ」とも「ジュリアンラージ」とも呼ばれていて、どちらも使われています。英語の発音は日本語(カタカナ)にそのまま置き換えられない、と聞いたことがあります。
作風の幅が広く、ジャズ色を抑えたロック寄りの作品も発表しているギタリストです。
▲ Julian Lage「I’ll Be Seeing You」(Live in Los Angeles)
これは少し前の演奏ですが、かっこよすぎます。ジャズでよく演奏される「I’ll Be Seeing You」を弾いている映像なのですが、なんと使用ギターがテレキャスター。この映像が出回ってから、ジャズギターを主に扱う楽器店でテレキャスターの問い合わせが急に増えたそうです。あの演奏を見たら欲しくなるのも納得です。
まずはイントロのソロギターから、かっこよすぎてノックアウトです。このイントロをコピーした楽譜は教室にあるので、興味ある方は申し出てください。ただし激ムズです(笑)。
そしてテーマ、ソロと繋がっていくのですが、ジャズのいわゆる「リック」がほぼ出てきません。本人がどう考えて弾いているのかは分かりませんが、あまり複雑なスケールを使わず、コードトーンとシンプルなスケールでメロディを歌い上げるというスタイルに徹している感じがします。ただ、この音の選び方・インターバルの操り方が常人には思いつきません。そして極めつけはダイナミクスの幅が大きく、感動ものです。録音でこの感動なので、生で見ていたらこの何倍も衝撃だったでしょう。
Julian Lageのレッスン、クリニック動画
動画サイトで探すと、本人のレッスン・クリニック映像がたくさん出てきます。
本人が実際に行っているエクササイズが上がっているのですが、物凄く役に立ちそうな内容で、しかも激ムズです。見ているだけで満足してしまう内容です。
このエチュードはレッスンでも取り入れています。一部だけですが楽譜も見られますので、よかったら参考にどうぞ。
Julian Lage[ジュリアン・ラージ]Guitar Etude #1の記事
クリニック動画での内容なのですが、ジャズのスタンダードを弾くとき、まずはルートとメロディを同時に演奏すると言っていました。そして理解できると内声を足していくそうです。あとは常にオーケストラをイメージして演奏していると話していました。これは本人の演奏を聴くと「なるほど」と納得しました。
レイジがクリニックで語っていた手順は、私が教室で教えているソロギターの基本と、そのまま重なります。
「いちばん上に曲のメロディ、いちばん下にベース(ルート)の音を置いて同時に鳴らす。これだとハーモニーを理解しながらメロディを覚えていける。慣れてきたら、その間に内声(3度などのコードトーン)を足していく——この順番で組み立てます。」
── 大倉(大倉ギター教室・講師歴20年)
ジュリアン・レイジのおすすめアルバム・参加作品
ギタートリオで演奏している 「Arclight」と、その作品のライブ盤 「Live in Los Angeles」。この二枚はテレキャスターで演奏されており、初めてジャズを聴く人にもおすすめの二枚です。
ゲイリー・バートンと共演している 「next generation」。これはスタンダードも演奏しており、原点とも言える演奏です。
Julian Lageの使用機材、使用弦
以下は 2017年の東京公演当時の使用機材です。機材は年々入れ替わっていくものなので、あくまで「この時点の一例」として参考にしてください。
ギター:Fender Telecaster
アンプ:Deluxe Reverb
チューナー:Polytune
エフェクター:strymon Flint(リバーブ)
フルアコ:リンダ・マンザーが制作した16インチ・アーチトップギター。ボディ・トップ/バックは5プライ・メイプル/マホガニー、サイド材はソリッド・カーリー・メイプル材、ネックはメイプル、指板・テールピース・ブリッジはエボニー、ピックアップはオリジナルのPAF(アジャスタブル・ポールピース付き)。使用弦はトーマスティックのラウンド弦の13からのセット。
近年(2020年代)の機材
近年のライブでよく使っているのは、Collings(コリングス)の 470 JL——ジュリアン・レイジ自身のシグネチャーモデル——と、Nacho Guitars の2本が中心です。470 JL のピックアップは Ron Ellis 製の「Ellisonic」。当教室のRon Ellis Pickups 交換レビューで紹介したあのRon Ellisです。オールドのテレキャスターなども所有していますが、盗難などの心配からライブにはあまり持ち出さないようです。ナチョギター(テレキャスタータイプ)には細めのフラットワウンド弦を張っています。
アコースティックは Collings のジュリアン・レイジ・モデルを使うことが多く、レコーディングではMartinのオールドを使っているようです。ちなみに私もナチョギターを弾いていて、コリングスのアコースティックも持っています。
足元は徹底してシンプルで、現在は Strymon Flint(リバーブ用途)・Shin-ei B1G 1(トレブルブースター)・Sonic Research ST-300 Mini(チューナー)の3つほど。少し前は JHS Morning Glory も使っていましたが、現在は使っていません。しかもボードはアンプの横に置いたままで、足元には何も置かない——最初にセッティングしたら、あとはギターの手元で調整するスタイルです。
※機材は年々入れ替わるため上記は2020年代半ば時点の構成です(出典=Premier Guitar機材紹介・Collings公式・2026-07確認)。機材そのものより、「テレキャスターでもフルアコでもレイジの音になる」——つまり音の選び方・歌わせ方が本質だと考えてください。
ジュリアン・レイジから学べること・練習すること
「真似できない天才」で終わらせず、自分の練習に持ち帰れる形に落とすと、次の3つになります。
① コードトーンで「歌う」(スケールに逃げない)
レイジの演奏は、複雑なスケールやリックをほとんど使わず、コードトーン+シンプルなスケールでメロディを歌い上げます。これは教室の考えとまったく同じで、まず優先すべきはスケールよりコードトーン。スケールを弾くときも、最後はコードトーンに着地するように弾くとしっくりきます。練習は、各コードのコードトーン(→ コードトーンのマスター|1357の展開・接続・デジタルパターン)を「ただ並べる」から一歩進めて、リズムをつけて“メロディとして歌えるか”まで。音数が少なくても、歌になっていれば十分ソロです。
② ソロギターの土台(メロディ+ベース → 内声)
クリニックでレイジが語っていた「ルートとメロディを同時に→理解できたら内声を足す」は、そのままソロギターの入り口です(上の断言ボックス)。いきなり難しいコードを積むのではなく、いちばん上にメロディ・いちばん下にルートを置いて同時に鳴らすところから。曲のテーマを弾きながら練習すると、ハーモニーを理解しながらメロディを覚えていけます。慣れてきたら、間に3度などの内声を足していきます。
③ 憧れた演奏を「自分で耳コピ」する
レイジの魅力は、音そのものより インターバルの運び・ダイナミクスの幅 にあります。こうした「楽譜に書きにくい部分」は、譜面を探すより自分で耳コピするのがいちばん身につきます。教室にある「I’ll Be Seeing You」イントロのコピー譜は激ムズですが、まずは Guitar Etude #1 のような短いエチュードから、あるいは耳コピ(トランスクライブ)の要領で1小節をリピートして音を探るところから始めてみてください(やり方=耳コピの運用|何を・どうコピーするか)。
大倉の断言:「コピーせずに上手くなった人は、まずいてない」——これはもう断言できます。憧れた曲の一部分でいい、1小節をひたすらリピートして、音を間違えてもいいから自分で聞き取る。その努力がいちばん大事なんです。── 大倉(講師歴20年)
次に読む・あわせて見る
- 🎯 コードトーンのマスター|1357の展開・接続・デジタルパターン(コードトーンで「歌う」ための土台)
- 👂 耳コピの運用|何を・どうコピーするか(憧れた演奏を自分で耳コピする)
- 🎸 Julian Lage[ジュリアン・ラージ]Guitar Etude #1(本人のエチュードを一部楽譜つきで)
- 🎼 ジャズギタリスト紹介(他のギタリストから学べることの一覧へ)
レイジのように「歌う」ための土台を、一緒に
コードトーンで歌う・ソロギターを組む・憧れの演奏を耳コピする——独学だと「自分の音選びが合っているか」が判断しにくい部分です。実際に弾いてもらいながら、どこを直せばレイジのように歌えるか、一緒に確認します。手ぶらでOK。楽器はこちらで用意します。
体験レッスンを申し込む →大阪市西区南堀江/桜川駅・西大橋駅から徒歩5分(四ツ橋・JR難波も10分圏)・手ぶらOK