アンプシミュレーターやIRをライブで使うとき、現場のアンプの「リターン(RETURN)」に挿す方法があります。「リターン挿し」と呼ばれるこのやり方、結論から言うと――アンプのプリアンプ部分をパスして、パワーアンプとスピーカーだけを使う繋ぎ方です。これにより、現場のアンプに音を左右されず、アンプシミュの音をそのまま出せます。
この記事では、リターン挿しのメリット・正しい手順・キャビシミュ/IRの切り方・相性・現場での注意点(マナー)までまとめます。Iridium・Quad Cortex・TONEX などを現場で使う人に共通する内容です。
30秒の結論
- リターン挿し=アンプのキャラをパスして、パワーアンプ+スピーカーだけ使う。アンプシミュの音を100%伝えられる。
- 手順は①ボリュームを全部落とす → ②リターンに確実に繋ぐ → ③少しずつ上げる。シミュ側のボリュームを最大にしない(爆音事故の防止)。
- ギターアンプのスピーカーから出すので、キャビシミュ/IRは原則オフ(音が二重になりぼやけるため)。ただしKemperなどフルレンジ系はオンが良い場合も。
- 現場では必ず店の人・PA(機材責任者)に一声かけてから挿す。アンプを倒す・音量事故などのトラブルに注意。
| 項目 | リターン挿し(基本) | インプット挿し |
|---|---|---|
| 通る回路 | パワーアンプ+スピーカーのみ(プリをパス) | アンプのプリアンプを通る |
| 音への影響 | アンプに左右されにくい(シミュの音そのまま) | アンプのキャラが乗る |
| キャビシミュ/IR | 原則オフ(フルレンジ系はオンも) | 原則オフ |
| 使いどころ | アンプシミュをそのまま鳴らす“基本形” | リターンが無い時/キャラを足したい時(応急・邪道) |
リターン挿しとは? なぜ現場で使うのか
ギターアンプは大きく「プリアンプ(音を作る部分)」と「パワーアンプ+スピーカー(音を増幅して出す部分)」に分かれます。アンプのセンド/リターン端子のうちリターンに挿すと、プリアンプをパスして、パワーアンプとスピーカーだけを使うことになります。
メリットは明確で、そのアンプのキャラクターをリセットできること。アンプシミュ(=プリアンプの役割)の音色を100%そのまま伝えられます。だから、現場のアンプが Marshall でも JC でも、アンプに大きく影響されずに自分の音が出る。良いアンプシミュさえ持っていけば、どの会場でも音色が大きく変わらない――これがリターン挿しの最大の価値です。
インプット挿しとの違い(と“足し技”)
普通にアンプのインプット(INPUT)に挿すと、アンプ本来のプリアンプを通るので、そのアンプのキャラクターが乗ります。アンプシミュを使うときは、基本的にはリターンで動かすのがセオリーです。
ただし現場では、あえてインプットに挿すこともあります(一応ご法度とはされますが)。アンプ本来のキャラに、シミュのキャラを“足す”使い方です。たとえば「このアンプ+デラリバのシミュ」を重ねていい感じになるなら、それでOK。また、そもそもリターン端子が無いアンプも多いので、その場合の応急処置としてインプットで試し、結果が良ければ使う、という割り切りもあります。
手順(JC-120・Marshall など共通)
やり方はアンプが変わっても基本は同じ。安全第一で進めます。
- まずボリュームを全部落とす(アンプ側もシミュ側も)。これが何より安全です。
- リターン端子に確実に繋ぐ。
- 電源を入れ、ボリュームを少しずつ上げる。このときシミュ側のボリュームを最大にしておかないことが大事。いきなり爆音が出ると、自分も周りもびっくりします。
アンプ別のひとこと
- JC-120:リターンがあるので相性良好。Iridium や Quad Cortex を挿す定番パターン。→ JC-120のセッティング記事。
- Fender系:そもそもリターン端子が無いモデルが多いので、Fenderがある現場ではリターン挿しはあまり考えません(その場合はインプット、または別の出し方)。
キャビシミュ/IRは切る?(原則オフ)
リターン挿しのとき、キャビシミュ/IRは原則オフにします。理由はシンプルです。IR・キャビシミュは「ギターのスピーカー+それをマイクで録った音」を再現するもの。一方リターン挿しは、実際にギターアンプのキャビ/スピーカーを鳴らしています。
つまり、スピーカー(とマイク)が二重にかかった状態になり、音がぼやけます。あえてその質感を狙うのはアリですが(分かってやるなら)、特別な狙いが無ければオフが基本。ギターのスピーカーで鳴らすなら、オフの方が相性の良いことが多いです。
ただし例外として、Kemper などフルレンジ系のアンプ/システムに送るときは、IRをオンにした方が良い場合もあります。両方試して良い方を選んでください。
リターン挿しと相性のいいアンプ・良くないアンプ
- 相性が良い=フルレンジ系:たとえば Kemper はリターン挿しと好相性。ツイーター付きで、PAスピーカーに近いフルレンジなスピーカーシステム(パワーアンプもそういう設計)なので、シミュの音を素直に出してくれます。
- 相性が良くない=パワーアンプにクセがあるもの:パワーアンプ部でトレブルが強く出る、結構歪む、といったアンプは要注意。ギターアンプはパワーアンプで歪ませることもあるので、思っていた音と違う結果になる場合があります。
なお、コンパクトな組み合わせなら Henriksen+Strymon Iridium のリターン挿しが好相性で、長く使ってきました。→ Strymon Iridium 詳細レビュー。
現場でのトラブルとマナー
リターン挿しは便利ですが、現場では気をつけたい点があります。
- 端子の場所が分からない:店のアンプは知らない機種・初めて触ることが多く、リターン端子が裏側や奥に付いていることも。無理やりアンプを動かして上の物を落とす・最悪アンプを倒して壊す事故に注意。
- 時間が無いときは無理しない:セッションなどでリターンを探して音量を合わせて…はスマートではありません。状況次第で潔くインプットや他の方法に。
- 店によっては良く思われない:「リターンに挿したら壊れるのでは」と考えるオーナーもいます(昔はこういう機材が無く、リターン挿しをしなかった世代も)。実際には壊れませんが、配慮は必要です。
大事なマナー:リターン挿しの前に「一声」
私はリターン挿しをするとき、必ず店の人かPA(機材の責任者)に「リターンに挿していいですか?」と一声かけます。トラブルを避けるためにも、ここは省略しないのがおすすめです。
よくある質問(FAQ)
Q. そもそもリターン挿しのメリットは?
A. アンプのプリアンプをパスし、パワーアンプ+スピーカーだけを使うので、現場のアンプに左右されずアンプシミュの音をそのまま出せます。会場が変わっても音が安定します。
Q. キャビシミュ/IRは切るの?
A. 原則オフです。ギターアンプのスピーカーで鳴らすため、IR(スピーカー+マイクの再現)を重ねると音が二重になりぼやけます。ただしKemperなどフルレンジ系はオンが良い場合も。両方試してください。
Q. JC-120でのやり方は?
A. JCはリターンがあるので、Iridium や Quad Cortex をリターンに挿すのが定番。ボリュームを落としてから繋ぎ、少しずつ上げます。詳細は JC-120のセッティング記事 へ。
Q. 音が大きすぎる/小さすぎるときは?
A. まずシミュ側のボリュームを最大にしないこと。アンプ側・シミュ側ともボリュームを落としてから、少しずつ上げてちょうど良い位置を探します。いきなり上げると爆音事故になります。
Q. リターンに挿すとアンプは壊れる?
A. 正しく繋げば壊れません。ただし店によっては良く思わない方もいるので、必ず店の人やPAに一声かけてから挿しましょう。
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