「ボサノバのセッションに誘われたけど、何を準備すればいいかわからない」——そんな不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
実はセッションに必要な準備は意外とシンプルです。定番曲を数曲・基本リズムパターンを1つ・キーの知識があれば十分参加できます。
今回は数多くのセッション経験を持つ播磨先生に、初めてのボサノバセッションで必要な準備と、譜面には書いていない「現場のお約束」について教えていただきました。
執筆:大倉甲(大倉ギター教室代表・ジャズギター講師歴20年)/監修:播磨正明(ボサノバ専任講師・ギター歴40年超)
目次
ボサノバセッションとは?ジャズセッションとの違い
大倉 💬
僕はジャズのセッションにはよくホストミュージシャンとして参加しているんですが、ボサノバのセッションとはどう違うんですか?
播磨先生 🎸
一番の違いは、何に重きを置くかです。ジャズセッションはソロ——つまり各プレイヤーのアドリブに重きを置きますよね。ボサノバセッションは打楽器とのアンサンブルに重きを置くんです。
大倉 💬
なるほど。ジャズだとソロ回しがセッションのメインイベントですけど、ボサノバはそうじゃないんですね。
播磨先生 🎸
もちろんソロを回すこともありますが、ボサノバの醍醐味はパーカッションやベースとのグルーヴを全員で共有すること。リズムの中にどれだけ心地よく溶け込めるかが大事なんです。
播磨先生 🎸
もう一つ大きな違いがリズムの感じ方です。ボサノバは2拍子でイーブン。ジャズの4拍子・スウィング感覚をそのまま持ち込むと、リズムが崩壊します。これは僕自身、何度も現場で経験しました。
大倉 💬
ジャズ出身のドラマーやベーシストと一緒にやると、リズムがずれてしまうことがあると。
播磨先生 🎸
特にドラマーが2拍子を理解していないと完全に崩壊します。ジャズのアフタービート(2・4拍アクセント)を持ち込まれると、もう別の音楽になってしまう。ギタリストとしては、自分だけでもしっかり2拍子を保つ意識が必要です。
ジャズセッションとボサノバセッションの違い
ジャズ:ソロ(アドリブ)回しが主役。4拍子・スウィングのリズム
ボサノバ:打楽器とのアンサンブルが主役。2拍子・イーブンのリズム
ギタリストの心構え:華やかなソロよりも、安定したリズムキープが求められる
ボサノバの2拍子・イーブンの本質について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
▶ボサノバのリズムの本質|「イーブン」と2拍子をバンドでも崩さないために
セッション定番曲とキーを覚えよう
大倉 💬
ボサノバセッションで「これは知っておくべき」という定番曲はありますか?
播磨先生 🎸
まず押さえておきたいのはジョビンの曲ですね。セッションで演奏される頻度が圧倒的に高い。それぞれインスト演奏の標準キーがありますので、覚えておくと便利です。
| 曲名 |
標準キー(インスト) |
ひとこと |
| イパネマの娘 |
Key = F |
知名度No.1の定番中の定番 |
| Wave |
Key = D |
美しいメロディで人気が高い |
| コルコバード |
Key = Am |
シンプルで入門にも向く |
| 黒いオルフェ(Manhã de Carnaval) |
Key = Am |
マイナーキーの名曲 |
| Fly Me to the Moon |
Key = C |
ジャズ系セッションでも定番 |
大倉 💬
Fly Me to the Moonはジャズのスタンダードですが、ボサノバセッションでも演奏されるんですか?
播磨先生 🎸
ジャズの人がボサノバセッションに来ると、こういう曲をやりたがることがあります。僕自身はやりませんが(笑)、セッションでは出てくる可能性があるので知っておいて損はないですね。
注意:歌ものはキーが変わる
上の表はインスト(歌なし)で演奏するときの標準キーです。ボーカリストが入る場合は、歌い手の声域に合わせてキーが変わります。当日「今日はKey=Gで」と言われることもあるので、コードフォームを移調できるようにしておくと安心です。
セッション前に弾いておきたい練習曲はこちらで紹介しています。
▶ボサノバギターのおすすめ練習曲10選|初級〜中級レベル別に紹介
最低限身につけておきたいリズムパターンとコード
大倉 💬
セッションに参加するために、最低限どのくらいの技術が必要ですか?
播磨先生 🎸
リズムパターンに関しては、基本パターン1が弾ければセッションに参加できます。ジョアン・ジルベルトもこのパターンだけで1曲通すことがあるくらいですから、これ1つで十分「ボサノバを弾いている」と言えます。
基本リズムパターン1 — これ1つでセッションに参加できる
大倉 💬
コードはどのくらい覚えておけばいいですか?
播磨先生 🎸
基本の6コード(M7・m7・7の5弦ルートと6弦ルート)を覚えていれば大丈夫です。この6つのフォームはルートの位置をずらすだけで全てのキーに対応できるので、先ほどの定番曲は全部弾けます。
播磨先生 🎸
それと、セッションではベーシストがいることがほとんどなので、ギターはベースラインを入れなくていい。コードのリズムキープに集中するのがギタリストの役割です。
セッション参加に必要な最低限のスキル
リズム:基本パターン1が安定して弾ける
コード:M7・m7・7の6フォーム(5弦ルート+6弦ルート)
移調:フォームをずらして別のキーで弾ける
ベース:セッションではベーシストに任せてOK
リズムパターンの詳しい弾き方はこちらで解説しています。
▶ボサノバの基本リズムパターン3つ|右手の弾き方を譜例付きで解説
基本コード6つの押さえ方はこちらで確認できます。
▶ボサノバで使う基本コード6選|初心者でも押さえやすいフォームを解説
イントロとエンディング|譜面に書いていない「お約束」
大倉 💬
セッションのイントロやエンディングは、どうやって合わせるんですか?
播磨先生 🎸
ジャズセッションでもイントロをつけて始まることが多いですよね。カウントしてすぐテーマに入る方がむしろ稀じゃないですか?
大倉 💬
確かに、ジャズでもイントロから入るのが普通ですね。決めずに誰かが弾き始めて、それに合わせる感じです。
播磨先生 🎸
ボサノバも同じです。決めずに始まることが多い。ただ、ボサノバのイントロやエンディングは譜面に書いていないことが多いのが問題なんです。しかもジャズセッションでボサノバをやるときも、このイントロが使われることが多いので覚えておいて損はありません。パターンは決まっています。Key=Cの場合で説明しますね。
イントロ定番パターン(Key=Cの場合)
パターンA:CM7 → B♭M7 の繰り返し
パターンB:CM7 → D♭7 の繰り返し
※他のキーの場合はこの関係をそのまま移調する
播磨先生 🎸
この2パターンが圧倒的に多いです。事前に決めなくても、誰かがどちらかのパターンで弾き始めるので、聴いたらどちらのパターンかわかるようにしておくのが実践的な準備です。
大倉 💬
2つだけなら覚えやすいですね。パターンAとBの聴き分けのコツはありますか?
播磨先生 🎸
パターンAのCM7→B♭M7は、2つのメジャーセブンスが全音で下がる動きなので、明るく開放的な響きがします。パターンBのCM7→D♭7は、半音上のドミナントセブンスに行く動きなので、少しテンション感のある響きになります。
播磨先生 🎸
エンディングも同様に、譜面に書いていないことが多い。周りの音をよく聴いて合わせる——これがセッションで最も大切なスキルです。テクニックよりも「耳」を使うことですね。
イントロ・エンディングのポイント
譜面に書いていないことが多く、決めずに始まるのが普通
定番は2パターンだけ。聴いたら判別できるよう事前に耳を慣らしておく
エンディングも同様。周りの音をよく聴いて合わせる力が重要
完璧でなくてもOK。わからなければ一瞬待って、聴いてから入ればいい
大倉ギター教室のボサノバコースでは、こうした譜面に書いていない現場の知識もレッスンで直接お伝えしています。
まとめ — セッションは「完璧」でなくても参加できる
播磨先生 🎸
セッションは「完璧に弾けるようになってから参加するもの」じゃないんです。まず勇気を持って飛び込んでみること。これが一番大事です。
大倉 💬
でも、上手く弾けなかったらどうしよう……と思ってしまう方も多いと思います。
播磨先生 🎸
いい演奏はしなくても大丈夫です。見学だけでもOK。セッションに行けば同じ音楽が好きな仲間も見つかりますし、今の時代、できなくても怒られることはないので安心してください(笑)。
播磨先生 🎸
「上手くなったら行こう」と考えずに、行ってみたいと思ったら行ってみてください。現場で得られる経験は、家で何時間練習するよりもはるかに大きいですから。
この記事のポイント
① まず飛び込んでみる — 見学だけでもOK。上手くなってからではなく、思い立ったら参加する
② ボサノバセッションの主役はアンサンブル — ソロよりも打楽器とのグルーヴを大切に
③ 定番曲は覚えていなくても参加可能 — まずは1曲でも十分。キーは標準キーを参考に
④ 基本パターン1+コード6フォームで参加可能 — これだけあれば十分セッションに出られる
⑤ イントロは2パターンを聴き分ける — CM7-B♭M7 / CM7-D♭7(Key=Cの場合)が定番
大倉ギター教室のボサノバコースでは、セッション参加を目標にしたレッスンプランもご用意しています。定番曲のコード進行からイントロ・エンディングの実践的な対応まで、播磨先生が丁寧に指導します。
播磨先生のセッション演奏はYouTubeでも視聴できます。
▶ YouTube:Bossa Nova Guitar HARIMA
「セッションに参加してみたいけど、一人で準備するのは不安」という方へ
播磨先生が、セッションで必要な実践スキルを基礎から指導します。
無料体験レッスンはこちら
よくある質問(FAQ)
ボサノバセッションに参加するのに最低限必要なレベルは?
基本リズムパターン1つと定番曲2〜3曲のコードが弾ければ参加できます。完璧である必要はなく、リズムを安定して刻めることが一番大切です。
セッションで弾く曲のキーはどうやって知るの?
インスト演奏には標準キーがあります(イパネマ=F、Wave=D、コルコバード=Am等)。歌ものの場合はボーカリストに合わせてキーが変わるので、当日その場で確認します。
セッションに持っていくべきものは?
ギター本体、チューナー、楽譜があれば十分です。譜面台はセッション会場に用意されていることがほとんど。楽譜は紙の譜面でもいいですし、iReal Proなどの譜面アプリをスマホやタブレットに入れておくのも便利です。
セッションでソロを弾かないといけませんか?
いいえ。コードバッキングだけの参加でも全く問題ありません。見学だけでもOKです。ボサノバはアンサンブルが主役なので、むしろリズムを安定して刻めるギタリストは重宝されます。
イントロやエンディングはどうすればいい?
譜面に書いていないことが多く、決めずに始まるケースが大半です。Key=Cなら「CM7→B♭M7」か「CM7→D♭7」の繰り返しが定番。この2パターンを聴き分けられるようにしておきましょう。わからなければ一瞬待って、聴いてから入れば大丈夫です。
監修:播磨正明(はりま まさあき)
大倉ギター教室 ボサノバギター専任講師。ギター歴40年超。高校1年でギターを始め、アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽に衝撃を受けブラジル音楽に傾倒。1984年三原淑治氏に師事、1991年NYでJoe Beck氏・Rick Stone氏に師事しセッション参加。1993年LAでセルジオ・メンデス等ボサノバの名手と共演してきたJohn Pisano氏に師事。1994年より日本ボサノバギター第一人者・佐藤正美氏に師事し、大阪ライブで前座・共演を重ねる。2024年YouTubeチャンネル「Bossa Nova Guitar HARIMA」開設。
▶ YouTube:Bossa Nova Guitar HARIMA