ボサノバのシンコペーションを攻略|「食って入る」リズムの練習法 | 大倉ギター教室

ボサノバらしいリズムの「うねり」を生み出しているのがシンコペーション。拍の裏から「食って入る」ことで、イーブンなリズムの中にグルーヴが生まれます。

ただしシンコペーションはパターン1が完全に安定してから取り組むべきステップです。順番を間違えると頭より体が混乱し、基本のリズムまで崩れてしまいます。

この記事では、パターン2・パターン3のシンコペーションを段階的にマスターする方法を解説します。パターン1をまだ練習中の方は、先にこちらを確認してください。
ボサノバの基本リズムパターン3つ|右手の弾き方を譜例付きで解説

執筆:大倉甲(大倉ギター教室代表・ジャズギター講師歴20年)/監修:播磨正明(ボサノバ専任講師・ギター歴40年超)

目次

シンコペーションとは — 拍の裏から「食って入る」リズム

大倉大倉 💬
シンコペーションという言葉は聞いたことがあっても、具体的に何をしているのかわからないという方も多いと思います。
播磨先生播磨先生 🎸
簡単に言うと、本来アクセントが来るはずの拍の「前」で音を出すことです。拍の頭より少し早く「食って入る」。これによってリズムに「引っかかり」や「うねり」が生まれます。
大倉大倉 💬
ジャズやファンクでもシンコペーションはありますが、ボサノバのシンコペーションは何が違いますか?
播磨先生播磨先生 🎸
ボサノバのシンコペーションはイーブンな16分音符の上で起きる点が特徴です。ジャズのスウィングのような「跳ね」はありません。均等な16分音符の刻みの中で、拍の裏から入ることでグルーヴが生まれる。イーブンを保ったままシンコペーションする——これがボサノバ特有の難しさであり、気持ちよさです。
実はパターン1にもシンコペーション要素がある

パターン1の2拍目には付点8分音符のシンコペーションが含まれています。このシンコペーション部分にアクセントが付きがちですが、大事なのは2拍目の4分音符のベース(p)にしっかりアクセントをキープすること。パターン1でこれができていないなら、まだシンコペーションの練習に進む段階ではありません。

基本リズムパターン1

パターン1 — 2拍目のp(親指)のアクセントがキープできているか確認しよう

なぜパターン1が安定してからでないといけないのか

大倉大倉 💬
「早くかっこいいリズムを弾きたい」と思って、パターン1を飛ばしてシンコペーションに進む人もいるのでは?
播磨先生播磨先生 🎸
その気持ちはわかりますが、これが最もやってはいけないことです。パターン1が安定していない状態でシンコペーションに手を出すと、頭より体が混乱する。結果として基本のリズムまで崩れてしまうんです。
シンコペーションに進む前のチェックリスト

1. パターン1を安定して弾けるか — テンポを落としても崩れないか
2. 親指(p)のアクセントがキープできているか — 2拍目のベース音が弱くなっていないか
3. イーブンに弾けているか — 録音して聴き返して、音の間隔が均等か
4. パターン1だけで1曲通して弾けるか — 途中でリズムが崩れないか

播磨先生播磨先生 🎸
4つすべてにYESと言えるなら、シンコペーションに進んで大丈夫です。ちなみにジョアン・ジルベルトもパターン1だけで1曲通すことがあります。パターン1は「初心者用」ではなく「一生使うパターン」なんです。

大倉ギター教室のボサノバコースでは、パターン1の安定度を確認してからシンコペーションに進むカリキュラムを組んでいます。

パターン2 — 小節をまたぐシンコペーション

大倉大倉 💬
パターン2はパターン1とどう違いますか?
播磨先生播磨先生 🎸
パターン1に小節をまたぐシンコペーションを加えたものです。小節の最後の音が次の小節の頭を「食う」形になります。
リズムパターン2(シンコペーション付き)

パターン2 — パターン1に小節をまたぐシンコペーションを加えた発展形

パターン2の練習ステップ

ステップ1:2小節ごとの一定パターンから始める

まずは譜例のとおり、1〜2小節目をシンコペーション→3〜4小節目は通常パターン、という2小節ごとの一定のリズムパターンで練習します。毎回同じ位置でシンコペーションが入るので、体に覚えさせやすい。

ステップ2:シンコペーションの位置を変えてみる

慣れてきたら、シンコペーションの入る位置を変化させます。2〜3小節目にシンコペーションを入れたり、最初からシンコペーションで始めたり。実際の演奏ではシンコペーションの位置は自由に変化するので、この柔軟性が大事です。

ステップ3:数小節ごとに「ときどき」シンコペーション

最終的には、曲の流れに合わせて自然にシンコペーションを入れたり外したりできる状態を目指します。「ここで食って入りたい」と感じたところで入れる——この感覚は演奏経験を積むことで身についていきます。

播磨先生播磨先生 🎸
最も重要なのは、シンコペーションが入っても親指(p)のアクセントが崩れないこと。「食い」に意識を取られて親指のアクセントが弱くなるのが最もよくある問題です。テンポを落として、親指のアクセントをキープしたままシンコペーションを入れる練習をしてください。

パターン3 — 軽快なシンコペーション(万能タイプ)

大倉大倉 💬
パターン3はどんな特徴がありますか?
播磨先生播磨先生 🎸
パターン3は軽快なテンポの曲に効果的な万能タイプです。いろいろな曲に使えます。全体にスタッカート気味に軽快に弾くのがポイントです。
リズムパターン3(万能タイプ)

パターン3 — 軽快なテンポに合う万能タイプ。スタッカート気味に弾く
播磨先生播磨先生 🎸
パターン3で特に注意してほしいポイントが2つあります。
パターン3の2つのポイント

1. 次の小節の1拍目ベースアクセントを保つ
1〜2小節目の小節をまたぐシンコペーションで「食って」も、次の小節の1拍目のベース(p)のアクセントはしっかり保つ。これがリズムの安定の要です。

2. 2小節目の2拍目ウラの8分音符で「ノリを整える」
i・m・aの最後のリズム部分にあたるこの8分音符で、ノリを整える要領で弾く。ここが次の小節への橋渡しになり、リズム全体の流れが滑らかになります。

大倉大倉 💬
パターン2とパターン3、どちらを先に練習すべきですか?
播磨先生播磨先生 🎸
パターン2が先です。パターン1の発展形なので、自然なステップアップになります。パターン2が安定してからパターン3に進む。この順番を守ってください。

シンコペーションの名曲で「本物のノリ」を耳で覚える

大倉大倉 💬
練習だけでなく「聴く」ことも大事ですか?
播磨先生播磨先生 🎸
非常に大事です。シンコペーションの「気持ちいいタイミング」は、理屈よりも耳で覚えた方が早い。本物のボサノバを聴いて、シンコペーションがどこで入っているかを感じ取る。これが最高の練習になります。

おすすめ:エドゥ・ロボ「Casa Forte(カサ・フォルチ)」

播磨先生播磨先生 🎸
シンコペーションの教材として特におすすめなのが、エドゥ・ロボの「Casa Forte」です。エリス・レジーナの歌唱が有名ですね。最初はバラードで始まり、途中からリズムに入ったところがずっとシンコペーションでメロディが乗る構成になっています。シンコペーションのノリを体感するのに最適な1曲です。

ジョアン・ジルベルトの演奏全般

ジョアン・ジルベルトの演奏はシンコペーションの教科書です。パターン1の安定した2拍子の中に、絶妙なタイミングでシンコペーションが入る。特に「Desafinado」や「Samba de Uma Nota So」はシンコペーションが効いたリズムが特徴的です。

2拍子とイーブンの本質についてはこちらで詳しく解説しています。


ボサノバのリズムの本質|「イーブン」と2拍子をバンドでも崩さないために



ボサノバギターのおすすめ練習曲10選|初級〜中級レベル別に紹介

まとめ:パターン1→パターン2→パターン3の順番を守る

この記事のポイント

1. シンコペーション=拍の裏から「食って入る」 — イーブンな16分音符の上で起きるのがボサノバ特有
2. パターン1が安定してから進む — 4つのチェック項目をすべてクリアしてから
3. パターン2 — 小節をまたぐシンコペーション。まず2小節ごとの一定パターンから
4. パターン3 — 軽快な万能タイプ。スタッカート気味に弾く。2拍目ウラでノリを整える
5. 親指のアクセントを絶対に崩さない — シンコペーションで最もよくある失敗
6. 聴いて覚える — Casa Forte、ジョアンの演奏がシンコペーションの教科書

大倉ギター教室のボサノバコースでは、パターン1の安定度を確認してからシンコペーションに段階的に進むレッスンをしています。

「シンコペーションのタイミングが合っているか確認したい」方へ
播磨先生がリズムの正確さを目の前で直接チェックします。

無料体験レッスンはこちら

よくある質問(FAQ)

シンコペーションはいつから練習すべきですか?
パターン1が安定して弾けるようになってからです。パターン1で2拍子のアクセントが崩れずに弾ける状態が前提です。焦って先に進むと基本のリズムまで崩れてしまいます。
パターン2とパターン3、どちらを先に覚えるべきですか?
パターン2(パターン1の発展形)が先です。パターン1のリズムにシンコペーションを加えたものなので、自然なステップアップになります。
シンコペーションの位置は曲によって変わりますか?
変わります。練習では2小節ごとの一定パターンから始めますが、実際の演奏では2〜3小節目にシンコペーションが入ったり、最初からシンコペーションで始まったり、自由に変化します。
シンコペーションで親指(p)のアクセントが崩れてしまいます。どうすればいいですか?
シンコペーションの「食い」に意識を取られて親指のアクセントが弱くなるのは最もよくある問題です。まずテンポを落として、親指のアクセントをキープしたままシンコペーションを入れる練習をしてください。
「カサ・フォルチ」以外にシンコペーションの参考になる曲はありますか?
ジョアン・ジルベルトの演奏全般がシンコペーションの教科書です。特に「Desafinado」や「Samba de Uma Nota So」はシンコペーションが効いたリズムが特徴的です。

播磨正明

監修:播磨正明(はりま まさあき)

大倉ギター教室 ボサノバギター専任講師。ギター歴40年超。高校1年でギターを始め、アントニオ・カルロス・ジョビンの音楽に衝撃を受けブラジル音楽に傾倒。1984年三原淑治氏に師事、1991年NYでJoe Beck氏・Rick Stone氏に師事しセッション参加。1993年LAでセルジオ・メンデス等ボサノバの名手と共演してきたJohn Pisano氏に師事。1994年より日本ボサノバギター第一人者・佐藤正美氏に師事し、大阪ライブで前座・共演を重ねる。2024年YouTubeチャンネル「Bossa Nova Guitar HARIMA」開設。
▶ YouTube:Bossa Nova Guitar HARIMA


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