ジャズの醍醐味は即興で誰かと音を合わせることで、セッションに参加して色々なプレイヤーと音を合わせるのが上達の近道だと考えています。
ジャズギターを教えていて、生徒さんがある程度アドリブを弾けるようになってくるとジャズセッション参加を勧めていますが、「怖くて参加できない」という方が多いです。
理由を聴くと、「レッスンで取り組んでいる曲以外の、ジャズスタンダード集に載っている曲が多すぎて対応できる気がしない」との声がありました。
そこで、私が音大を卒業後、約15年で1000回以上、関西の様々なお店でジャズセッションのホストをしていた経験から、
(筆者の独断と偏見で)よく演奏される曲を30曲ピックアップしました。
また、当教室サイト「ジャズスタンダードを学ぼう!」でも、私がジャズスタンダードを演奏した動画と簡単な解説を掲載しているので、
ぜひ、こちらも併せてご覧ください。
留意点等
- ジャズスタンダードバイブル1(通称「黒本」)掲載の227曲から約30曲をピックアップしました。
- 頻度ごとにA〜Cの3段階(Aが最頻)に分類しています。
- 難易度も(参考程度ですが)1〜3の3段階で分けています。
- 今回ピックアップした30曲や頻度の分類は、あくまで私の独断と偏見です。
- 実際のところ、お店・地域・集まるミュージシャンにより変わりますが、まずはこの30曲を押さえておけば、どこのセッションに行っても困ることはないと考えています。
ジャズセッションでよく演奏される曲(頻度:A)
枯れ葉
この中の曲はセッションに行くと特に初心者が多く集まるお店で、ほぼ毎回演奏されている曲です。
定番中の定番、ジャズを初めて最初に練習する人も多いと思います。
有名なアルバム「キャノンボール・アダレイ」の「Somethin’ Else」のバージョンが最もわかりやすく必聴です。
このアルバムの枯れ葉で使われいるイントロを使用する時もあります。
よく演奏されるKey | Gm |
女性ボーカルに多いKey | Am |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 1 |
All of me
演奏でとゆうよりボーカリストに人気の曲です。
ジャズボーカルを始めて最初の方に覚える方が多いようです。
コード進行には注意が必要で最後の4小節がII-7からの時とII-7b5の2パターンがあります。
コードが変わるとメロディラインも変わるので、注意して聴きましょう。
よく演奏されるKey | C |
女性ボーカルに多いKey | F |
リズム | ミディアムスウィング |
曲難易度 | 2 |
Billie’s Bounce
チャーリーパーカーのFブルースの曲。
テーマにはビバップのフレーズが沢山使われているので、ギターで演奏すのは少し大変ですが、頑張って挑戦しましょう。
テーマ部分の難易度は高めですがアドリブはFブルースなので初心者にもおすすめです。
よく演奏されるKey | F |
女性ボーカルに多いKey | ー |
リズム | ミディアムスウィング |
曲難易度 | 3 |
Days Of Wine and Roses
よく「酒バラ」と略して呼びます。
2小節目のEb7のコードの意味がよく分からないとアドバイスを求められる事があります。
これはサブドミナントマイナー(SDM)と解釈しましょう。
上級者の集まるセッションですと前半F、後半AbとKeyチェンジをする場合があります。
元々のネタはピアニストの「ビルエバンス」最近ではSaxの「マークターナー」がこのアレンジで演奏しています。
よく演奏されるKey | F |
女性ボーカルに多いKey | Ab |
リズム | ミディアムスウィング |
曲難易度 | 2 |
Fly Me To The Moon
ボサノバでもスウィングでもよく演奏される曲です。
ほぼダイアトニックコードだけでできている曲で、ジャズ初心者の最初の一曲にもおすすめの曲です。
ボーカリストのも人気の曲で演奏だけでなく歌でも演奏します。
よく演奏されるKey | C |
女性ボーカルに多いKey | F |
リズム | スウィング、ボサノバ |
曲難易度 | 1 |
I’ll Close My Eyes
トランペッターの「ブルー・ミッチェル」の演奏は必聴です。
ピアノのウイントン・ケリーのイントロはあまりにも有名なのでこの曲を練習する時は参考にしてみましょう。
歌物で演奏されることはあまりないです。
よく演奏されるKey | F |
女性ボーカルに多いKey | – |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 2 |
Softly As In A Morning Sunrise
数少ないマイナーKeyの曲になります。
最初の16小節のコードはC-7|D-7-5/G7となっていますが良くここはC-だけと捉えてCドリアンスケールのみで演奏することもよくあります。
オーソドックスなスタイルで演奏する場合の、イントロはピアニスト『ウイントン・ケリー』のトリオでのベーシスト『ポール・チェンバース』が演奏したイントロをよく使用します。
ベーシストはもちろん、ギタリストも必須のイントロです。
よく演奏されるKey | Cm |
女性ボーカルに多いKey | Fm |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 2 |
There Will Never Be Another You
2-5のコードの連続で2-5フレーズの練習曲にピッタリです。
I’ll Close My Eyesのコード進行とKeyは違いますが、前半はほぼ同じです。
エンディングはThere Will Never Be Another You[ジャズスタンダードを学ぼう]でも紹介している通り、最後が半音上がるのがお約束になっているので、覚えておきましょう。
よく演奏されるKey | Eb |
女性ボーカルに多いKey | Ab |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 2 |
ジャズセッションでよく演奏される曲(頻度:B)
Beautifull Love
セッションで人気のマイナー曲です。
よく演奏されるKey | Dm |
女性ボーカルに多いKey | Gm |
リズム | ミディアム ファーストスウィング |
曲難易度 | 3 |
Blue Bossa
ケニードーハムの名曲。
ギタリストでは「パット・マルティーノ」の演奏が必聴です。
かっこいいフレーズの宝庫なのでぜひチャレンジしてみてください。
コードがシンプルなので教室でもよく練習素材として使用しています。
よく演奏されるKey | Cm |
女性ボーカルに多いKey | ー |
リズム | ボサノバ、ラテン |
曲難易度 | 2 |
Bye Bye BlackBird
明るいハッピーな曲です。
早めのテンポで演奏することもあります。
最初同じコードが続く所をどう演奏していいか悩む人も多い曲です。
コードを細分化してしまうのもよくやる手法です。
トランペッター「マイルス・デイビス」の名演を聞いておきましょう。
ここでのピアニストの「レッド・ガーランド」のイントロは有名でよくセッションでも演奏されます。
よく演奏されるKey | F |
女性ボーカルに多いKey | C.Bb |
リズム | ミディアムスウィング |
曲難易度 | 2 |
Confirmation
チャーリー・パーカーの名曲です。
この曲の中にはビバップの基礎となるフレーズ、リズムパターンが沢山入っています。
ギターでこのテーマを演奏するのは至難の技でもしかしたら、黒本の中では一番苦労するかもしれません。
アドリブ部分はコード進行は2ー5の連続になっているので、簡単ではないですがテーマほどではないです。
よく演奏されるKey | F |
女性ボーカルに多いKey | ー |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 3 |
If I Were A Bell
トランペッター「マイルス・デイビス」の演奏を聞いておきましょう。
この演奏でのイントロでピアノがチャイムのフレーズを弾いています。
これはこの曲と言ったらこのイントロを必ず使用する位、よく使用されています。
ギタリストも必ずマスターしておきましょう。
このイントロではベースはドミナントペダルを使用しています。
よく演奏されるKey | F |
女性ボーカルに多いKey | Bb |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 2 |
Just Friends
この曲はKey Fに対してⅣ度のBbM7から始まる曲です。
勘違いしてKeyをBbと言わないようにしましょう。
サックス奏者の「チャーリー・パーカー」のCharlie Parker with Stringsでの演奏は名演です。
よく演奏されるKey | F |
女性ボーカルに多いKey | Bb |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 2 |
Love Is Here To Stay
特に歌物でよく演奏される曲です。
個人的にはよくギターが合う曲だと思います。
ギタリストにイントロが振られるので何か仕込んでおくといいでしょう。
よく演奏されるKey | F |
女性ボーカルに多いKey | Bb |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 2 |
Lullaby Of Birdland
この曲もインストより歌物での演奏機会が多いです。
ボーカリストの「サラ・ボーン」がトランペッターの「クリフォード・ブラウン」と共作のアルバムのテイクは必聴です。
イントロは楽譜に書いてなくてもこのアレンジのバージョンを使用する事がほとんどです。
コードが目まぐるしく変わる為、なれるまではロストする場合があります。
よく演奏されるKey | Fm |
女性ボーカルに多いKey | Cm |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 3 |
On Green Dolphin Street
ラテンのリズムとスウィングのリズムチェンジがある曲です。
コード進行も少し難しく、ビパップスタイルからコンテンポラリーなスタイルまで幅広く対応できる曲です。
イントロではよくベースのEbペダルのラインから始まります。
Eb一発のイントロを長めに演奏する事もコンテンポラリーなスタイルではよくあります。
このEbペダルの元ネタはやはり「マイルス・デイビス」の演奏からです。
よく演奏されるKey | |
女性ボーカルに多いKey | |
リズム | |
曲難易度 |
ST.Thomas
テナーサックスの巨匠「ソニー・ロリンズ」作曲の名曲です。
カリプソとゆうリズムで演奏します。
あまり馴染みがないリズム鴨居しれませんが、原曲をよく聞いて覚えましょう。
よくセッションではボサノバを崩したようなリズムでも演奏されます。
よく演奏されるKey | C |
女性ボーカルに多いKey | – |
リズム | カリプソ |
曲難易度 | 1 |
Stella By Starlight
元々はホラー映画の曲とゆうだけあって怪しい雰囲気の曲です。
コード進行も一筋縄では行かずこの曲がしっかりできれば初心者卒業だと思います。
最初のE-7b5は原曲ではBdim7のコードです。
原曲のコードで好んで演奏する人もいてるので覚えておきましょう。
よく演奏されるKey | Bb |
女性ボーカルに多いKey | F |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 3 |
Summertime
ファンクセッションでもよく演奏される曲です。
スウィング以外にもファンク系のリズムもよく合う曲です。
ペンタトニックスケールだけでほとんど演奏できるので、ジャズギター入門者にはピッタリの曲です。
この曲は必ずこのKeyで演奏するとゆうのがなく、かなりまちまちです。
最近ではあまり使用されていないですが「スタンダードジャズハンドブック」(通称青本)にはBbmのKeyで載っていました。
よく演奏されるKey | Am,Gm,Cm |
女性ボーカルに多いKey | Am.Cm |
リズム | スウィング、ファンク バラード |
曲難易度 | 1 |
Take the A Train
通称「Aトレイン」と呼ばれています。
デュークエリントン楽団の演奏は必ず聴きましょう。
ちなみに大阪音大ジャズコースの入学試験の課題曲はこの曲でした。
なので思い出深い曲です。当時は必死に練習していました。
3小節目のD7コードがこの曲のポイントで「リディアン7thスケール」「ホールトーンスケール」からの選択になります。
特にこの部分は「ホールトーンスケール」がベストマッチだと個人的には感じます。
よく演奏されるKey | C |
女性ボーカルに多いKey | F |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 1 |
ジャズセッションでよく演奏される曲(頻度:C)
Body And Soul
美しいバラード曲。
プロのライブでも好んで演奏するミュージシャンが多い。
なんと言ってもこの曲はDbのKeyが曲者。Cに直すとそこまで難しくないがDbになると途端に難易度が上昇。
普段やらないKeyになれる為にも練習しましょう。
よく演奏されるKey | Db |
女性ボーカルに多いKey | F |
リズム | バラード |
曲難易度 | 3 |
Candy
BbであるⅣメジャーのEbM7から始まる曲なのでKeyをEbと間違えないように注意。
トランペッター「リー・モーガン」の演奏は必聴。
「リー・モーガン」の演奏ではドラムイントロでドラムをフューチャーした内容になってますが、セッションではあまりこのようなアレンジで演奏される事はないです。
よく演奏されるKey | Bb |
女性ボーカルに多いKey | ー |
リズム | ボサノバ、 ミディアムスウィング |
曲難易度 | 2 |
Girl From Ipanema[イパネマの娘]
「アントニオ・カルロス・ジョビン」のボサノバの名曲
Garota de Ipanema(ポルトガル語)とも表記される。
ボサノバ等、ブラリジアンの曲はポルトガル語でも表記されています。
歌詞もポルトガル語、英語、両方でよく歌われています。
また女性が歌う時には「Boy From Ipanema」にタイトル変更される場合もあります。
この曲のBメロの部分は正直かなり手強く、初心者には難しいです。
Bメロのコード進行をどう解釈するのかは議論が分かれる所です。
Bメロの進行をどう考えるか
Bメロの解釈はよく質問される箇所なので冒頭のみ解説します。
ここを理解するにはモーダルインターチェンジを理解している必要があります。
冒頭の
|GbM7|GbM7|B7| B7|の箇所は
- GbM7はDbのⅣメジャー(Gbリディアン)
- B7はDbのⅦb7(Bリディアン7th)
と解釈しています。
この次の
|F#-7|F#-7|D7|D7|は
- KeyEに転調
- F#-7はEのⅡマイナー(F#ドリアン)
- D7はEのⅦb7(Dリディアン7th)
となります。この次はKeyFに転調していると考えています。
よく演奏されるKey | F |
女性ボーカルに多いKey | Eb |
リズム | ボサノバ |
曲難易度 | 3 |
Moanin(モーニン)
「アート・ブレイキー」の名曲
もしかしたら日本で最も有名なジャズの曲かもしれません。
印象的なピアノのフレーズで始まります。
この曲のリズムはシャッフルです。
この曲の注意点はエンディングです。
最後はBメロ部分を繰り返す事が多いのですが、しっかり確認しておかないと事故率が高いです。
この曲を演奏する時は「エンディングどうしますか」としっかり確認しておきましょう。
よく演奏されるKey | Fm |
女性ボーカルに多いKey | Cm |
リズム | シャッフル |
曲難易度 | 2 |
My One And Only Love
非常に美しい曲でインストでも歌物でもよく演奏されます。
通常はKey=Ebで演奏する事が多いですがテナーサックスの「ジョン・コルトレーン」がKey=Cで名演を残しているので管楽器の人はCで演奏する事も多々あります。
よく演奏されるKey | Eb |
女性ボーカルに多いKey | G |
リズム | バラード |
曲難易度 | 2 |
Night And Day
この曲は、どちらかとゆうと歌物で演奏する事が多いです。
リズムは
- Aメロ「ボサノバ」
- Bメロ「スウィング」
で演奏する事が多いです。
少しコード進行が難解なので簡単に解説します。
- まずは冒頭の部分
|BM7|Bb7|EbM7|
最初のBM7はEbマイナーへのモーダルインターチェンジです。
なのでBリディアンスケールになります。
- Bメロ部分
|GbM7|GbM7|EbM7|EbM7|
この時のGbM7もEbマイナーへのモーダルインターチェンジです。
なのでGbリディアンスケールになります。
よく演奏されるKey | Eb |
女性ボーカルに多いKey | Ab |
リズム | ボサノバ |
曲難易度 | 3 |
Satin Doll
「ディークエリントン」作曲の名曲です。
ギタリストにもよく演奏されている曲で、特に「ジョー・パス」「バーニー・ケッセル」の演奏は名演です。
二人共、前半はメロディックなソロで段々とギアを上げていく感じで、お手本の演奏です。
ソロ時とテーマ時で少しコード進行が変わる場合があります。
冒頭の4小節
- テーマ時
|Dm7/G7|Dm7/G7|Em7/A7|Em7/A7|
の進行を大きく捉えて - アドリブ時
|Dm7|G7|Em7|A7|
このように簡略化する事がよくあります。
こうする事によってソロを演奏しやすくしています。
よく演奏されるKey | C |
女性ボーカルに多いKey | Eb |
リズム | スウィング |
曲難易度 | 2 |
Someday My PrinceWill Come
3拍子と言ったらこの曲が一番人気です。
コード進行も美しく演奏していて気持ちいいです。
3拍子のリズムは慣れるまで中々大変ですが練習すると必ずできるようになるので、繰り返し演奏、練習しましょう。
イントロではFペダル(ドミナントペダル)が使われます。
よく演奏されるKey | Bb |
女性ボーカルに多いKey | F |
リズム | ジャズワルツ |
曲難易度 | 3 |
Wave
インストでも歌物でも人気のある曲です。
アドリブを行うのは少しやり難いコード進行ですが、まずはテーマを弾き込んでからソロに挑戦してみましょう。
Bメロのコード進行
よく流通している楽譜のコード付けとジョビンが使用しているコード進行は違います。
ジャズセッション、特にアドリブ演奏時は楽譜通りで問題ないですが、テーマの時は忠実に演奏した方がかっこいいです。
Bメロのコード(Key=D)
|G-7|C7|FM7|FM7|
|Fm7|Bb7|EbM7|A7|
ここの進行を
- |GmonBb|ConBb|FonA|FonA|
- |FmonAb|BbonAb|EbonG|
で原曲では演奏されています。
よく演奏されるKey | C,D |
女性ボーカルに多いKey | D |
リズム | ボサノバ |
曲難易度 | 3 |
大倉ギター教室のジャズギターレッスンについて
大倉ギター教室では、当記事で紹介しているスタンダードのうち、生徒さんが気に入ったものを中心に、コード分析やアドリブのアプローチなどを教えています。
オンラインレッスンも受け付けていますので、ご興味のある方はお問い合わせフォームからご連絡ください。